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魔王少女  作者: mizuyuri
第七部
226/252

第十話 ポンコツ&ポンコツ

 季節は春。

 一日の日が伸びてきて、夕方でもまだ若干は明るかったりはするものの、時間帯的にまだちょっと肌寒かったりする。


 日中の格好に、1枚上着を羽織って幸と合流する。

 目的はもちろん、新しく現れた魔法少女を探し出す事。


 他の連中は何故か出来ないらしいが、私のサーチ魔法なら変身アイテムの石が放つ微量の魔力も感知する事ができる。

 さらに微妙な差異も無意識化で認識する事ができるらしく、一度覚えた魔力反応は二度と忘れたりしない……らしい。


 さっきから、説明が曖昧だったりしているが、それも仕方がない事なので許してほしい。

 だって使ってる私が、完全に感覚だけで使ってるから、理屈なんてまったくわかっていないのだ。


 あくまでもヴィグルやポチといった、理屈好きな連中からそうやって説明されただけで、私本人はあまりわかっていない。


 前にも説明したかもしれないが……

 私がサーチ魔法を使うと、世界中の魔力を認識できる。

 ただソレは、大都市で人ごみを見ているような感覚で、この時点では、どれが誰の魔力なのかはよくわからない。

 そこで「アイツはどこだ?」と考えると、人ごみの中からソイツが飛び出してくるような感覚で、どこにいるのかがわかったりする。

 これには距離も、魔力の大小も関係ない。どれだけ離れてようと、どれだけ魔力反応が小さかろうと、確実に感知可能なのだ。

 まぁ難点は、一度認識した事あるヤツしか探せないって事だけどな。

 簡単に言うと、顔と魔力を一致させる必要がある。


 例えば魔力を持った「Aさん」という人がいる。

 私がAさんを知らない状態でサーチ魔法を使ったら、Aさんは「その他大勢」として認識されており、探し出すのは困難だ。

 精々が「〇km離れた場所に、中くらいの魔力反応がある」くらいの認識しかできずに、それがAさんだったとしても、Aさんとしては認識できない。

 認識するためには、Aさんの特徴がわかるような状態でサーチ魔法を使い「この魔力反応がAさんなんだな!」というアクションが必要になってくる。

 そうする事により、顔と魔力が一致し、次回からのサーチ魔法ではAさんも検索対象に加える事が可能となるのだ。


 まぁ使ってる私本人は、そこまで深く考えて使っているわけではなく、あくまでも感覚で使ってるので、不便だと感じた事はない。

 魔法でも出来る事と出来ない事がある。程度に考えていれば、ほぼほぼ問題無いと思っている。




 と、まぁ長々と説明したが……

 幸の変身アイテムの魔力は一度認識しているので、私のサーチ魔法にかかれば一発で見つける事が可能なのだ。


 そしてサーチの結果、幸の変身アイテムは現在、この魔王軍本部近くにある喫茶店の中にある事が判明したため、幸と二人、今まさに踏み込もうというところであった。


 さぁて……幸の変身アイテムを拾って、魔王軍に喧嘩吹っ掛けてきた、アタオカ魔法少女はどんなツラしてんだろうなぁ?


 若干ビクビクしている幸を気遣う事なく、何の躊躇も無く喫茶店のドアを開ける。


「裕美様、物事は慎重に運びましょうね。また変な理由で絡まれるの私嫌ですからね」


 小声で耳打ちしてくる幸と共に、店の中を見渡す。


 丁度すいてるタイミングだったのか、テーブルに座っている客は1人しかいなかった。

 そして……私達が入って来た入り口に背を向けて座るソイツの隣の椅子の上に置いているバッグの中から、しっかりと変身アイテムの魔力反応があった。


 でもちょっと待て。

 あの後ろ姿って……


「……サクラさん?」


 幸も気付いたようで、座っている人物の名を呼ぶ。


「幸さん?……げ!魔王も一緒!?」


 げ!ってなんだよ、げ!って。


「でもアンタが来たって事は、あの件で何か進展があったって事なの?」


「『あの件』って何だよ?どの件だよ?」


 いきなり意味不明な事を言い出すサクラ。

 『あの件』とか言われても、まったく見当がつかない。

 新しい魔法少女の件が、サクラの耳に入るほど大事になってるとは思えないし、『進展があった?』とか言ってたから、長く続いてる案件であって、今日現れたばかりの魔法少女の事ではないだろう。


「幸さんやヴィグル社長から聞いてないの?最近この周辺で、魔力を持った不審人物が目撃されたって案件」


 私が不思議そうな顔をしているのを見て、サクラが詳細を語り出す。


「ヴィグル社長に言われて、ここ数日張り込みしてるのよ。アンタが来たからその件で、何か進展があったのかと思ったんだけど……違うみたいね」


 そりゃちょっと気になるな。

 不審人物って事は、魔王軍でも把握してない魔力を持ったヤツって事だろ?

 また異世界から何者かが来た?それとも、新しい魔法少女が何かしら絡んでんのか?


「……嘘、なんです」


 私にだけ聞こえる程度の音量で、隣に立つ幸がボソッつぶやく。


「うそ?何が?」


「サクラさん、私が正式に魔王軍に入社してから、色々とやらかしてまして……私に良い所を見せたいのか、やらなくてもいい事をやって余計な仕事を増やしたてばかりいて……ヴィグルさんも頭痛めてるみたいで……仕方なく、しばらく魔王軍本部から追い出しておこうって事になって……居もしない不審人物を探す任務を与えられてるんです」


 死んだような目になって、私に事情を説明する幸。


 サクラ……お前ってヤツは……

 簡単にクビにならない社内規則に感謝しとけよ。


 とりあえず、サクラの取扱に関しては、私は関わらないようにしよう。


「残念だが私が来たのはまったく別の用件だ……なぁサクラ。幸の変身用アイテム持ってるか?」


 サクラのやらかしに関しては聞かなかった事にして、私は私の用事をさっさと済ませる事にする。


「え?たしかに持ってるけど……何でアンタが知ってるのよ?」


 あっさりと自白したな。

 っていうか、変身アイテムが無くなったせいで幸がテンパりまくってたのに、「それが何?」くらいな感じで言ってね?


「この前、遊園地でバンジーの試運転行ったでしょ?その時、幸さんに『私は行けないので、コレを私だと思って持って行ってください』って……その後すぐ、私はこの任務に就いたから返せないでいたのよね」


 初耳なんだが……


「あっ……!!?」


 何か、隣では「そういやそうだった!今、思い出した!?」みたいな声を上げてるヤツがいるし。


「……なぁ幸。ちょっと聞きたい事があるんだが?」


 ゆっくりと隣を振り返る。


「て……テヘペロ!」


 なんか誤魔化そうとしてねぇかコイツ?

 そんなポーズとっても、可愛くもなんともないからな?ただイラつくだけだぞ。


 とりあえず、サクラほどじゃないにしても、幸もそこそこポンコツっぽいな……

 大丈夫か?魔王軍四天王。



 そして、新しい魔法少女に関しての情報も、またふりだしに戻った感じだな。


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