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魔王少女  作者: mizuyuri
第七部
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第一話 遊園地のアトラクション

 季節とは常に移ろい行くものである。

 その時は、永遠だと思える事も、いずれは変わっていくものである。

 魔王である事を隠して通う高校生活。

 入学したての頃は、この楽しい時間がずっと続くようにも思えたものである。


 季節とは常に移ろい行くものである。

 苦手な寒い冬が終わり、出会いと別れの春がやってくる……



 そんなわけで、私は無事に高校を卒業した。

 親に説教されながらも、一人暮らしの権利も勝ち取った。

 まぁ一人暮らしってな感じになってはいるが、実際はユリとの二人暮らしなので、微妙と言えば微妙な感じだ。

 しかも、何故かちょくちょく絵梨佳まで入り浸ったりしている。

 『一人暮らし』とはいったい……


 ともかくなんだ……新しい環境へと突入する準備は万端となっている。


 卒業式の時は「コイツ等ともここでお別れか……」とか、ちょっと感傷に浸ったりもしたが、引っ越しやらが忙しくて、即行で感傷とかどうでもよくなった。


 そして遂に私は、JKからJDへと進化したのだ!


 それなのに、何で私は今、こんな場所にいるんだ?


「うっひゃぁ~~……こりゃあ絶景だなぁ」


 猿みたいな声を出す美咲。

 約50mの高さから見る地上に大興奮しているようだ。


 でもな美咲……この光景、飛行魔法使える私達からしてみたら、意外と見慣れた風景だぞ。

 魔法少女やってるお前が、何故そんなテンション上がってんだ?


 ちなみに、今私達がいるこの場所は、とある遊園地の稼働前の新型アトラクション。


 話せば若干長くなるのだが……

 数か月前に、何をトチ狂ったのか「魔王軍とコラボしたアトラクションを作りたい」とか言う遊園地の管理会社が現れた。

 娯楽提供は一般人からの好感度を上げられるだろうと判断したヴィグルは快く承諾。

 ただ、コラボといっても、どんなアトラクションにするのかを決める事に難航した。

 そりゃあそうだ。

 どこかしらにありそうな既存のアトラクションを参考にしても『魔王軍とのコラボ』感が一切無い。

 とりあえず、魔法を絡めた物にすれば、コラボ感はでるだろう、みたいな企画の流れになったものの、『遊園地のアトラクション』に、どう魔法を絡めていくかで再び難航する。


 そして……ちょっと前に、私がエフィにやった『成層圏からの紐無しバンジー』をヒントに、一気に企画が動き出した。

 ここまで言えば何となくわかるだろうが、この新アトラクションは『バンジージャンプ』だ。

 ただ普通と違うところは、括り付ける紐にちょっとした細工がしてある。


 この紐、ちょっと引っ張るだけで、簡単に切れるようになっているのだ。


 ……まぁこれだけ聞くと、「やべぇアトラクションだ……」としか思えないのだが、この紐が切れる事で、魔術トラップが作動する仕組みになっている。

 トラップが発動すると、紐を括り付けられている人は、強制的に飛行魔法を使った状態にさせられる。

 ちなみに、魔力は紐の方から流れ込んでくるんで、魔力無い一般人でも空を飛べるようになるのだ。


 ……と、まぁ『空を飛べるバンジージャンプ』として売り出す感じなのだ。

 あ、ずっとは飛べないよ、紐に残ってる魔力は有限なんで、1分くらい自由飛行したら、そこからはじわじわと高度が下がり、最終的にゆっくりと地上に着地する仕組みになっている。


 最初から紐を伝って飛行魔法使えるようにすればいいじゃないかと思うかもしれないが、魔法はそこまで便利ではない。

 紐から直接にするには、魔力を込めたヤツが、いちいち魔法を発動させなくてはならない。つまりは、そのアトラクションに付きっきりにならなくてはならない。

 そこでトラップ形式。

 『紐を切る』という発動条件をつける事で、魔法使えるヤツが常に待機しなくても、勝手に作動するようにしたのだ。

 RPGとかでいう、特定の床を踏むと発動するとか、宝箱を開けると発動するとか、そういった類の罠と同じ原理だ。


「コレ本当に大丈夫なの?ヤガミが監修したって時点で、あんまり信用できないんだけど……」


 同じくやって来ているサクラが不満の声をもらす。


 そう……このバンジー。魔法を使った道具作成が得意なポチが監修している。

 こんなダンジョンの罠みたいな仕様になったのは、こういったトラップ系を作る事に慣れているポチの仕業といえばそうなのだ。


「私らは、それを確認しに来たんだろが……グダグダ言ってねぇで、誰から飛ぶか決めるぞ」


 まぁ単純な話。私達は、一般人が使用しても大丈夫かどうかの試運転をしに来たのだ。

 私達なら普通に魔法が使えるので、トラップが発動しなくても何とかなるから、ってな理由である。


 もちろん、このアトラクションが稼働すれば、使用するのは『人』なので、体格的にちゃんとした人型をした私達が選ばれたのだ。

 幸も私達と一緒に来たがってはいたが「羽が生えた人間はいねぇよ」と一蹴されていた。絵梨佳とエフィは「あの……落ちる系はちょっと……」と全力拒否してきた。

 まぁエフィは紐無しバンジーで死にかけてるし、絵梨佳は屋上からのダイブで一回死んでるから、しゃあないっちゃしゃあないんだけど……


 そんなわけで、今ここにいるのは、私と美咲とサクラの3人だ。

 体格的にポチも必要なのだが、忙しいので後日1人で来る、との事らしい。


「大丈夫なの?ヤガミの事だから、私が使う紐にだけ、反魔法発動するようにしてないわよね!?死ぬわよ私!?」


「どの紐使うかもわかんねぇのに、そんな面倒臭い細工をポチがするかよ……」


 だいいち、反魔法をセットしたら、魔術トラップ自体発動しなくなるだろうが……


「サクラが面倒臭ぇから、お前から飛べ美咲」


「よっしゃ!まかしとけ!!」


 ノリノリだなオイ。


 美咲は変身して、物凄い速さでセッティングしていく。

 そんなにやりたかったのかコイツ。


「よーし!いいか!私のタイミングで飛び降りるからなぁ!押すなよ!絶対に後ろから押したりするなよぉ!!」


 あ、コレうざいやつだ。


「こういうのはタイミングが大事だからな!自分のペースでいきたいから、押すんじゃないぞ!」


「わかったわよ……そんな念を押さなくても、押したりしないわよ」


 あ、コッチはネタをわかってないやつだ。


「押すなよ!絶対に押すなよ!!」


「はいはい、わかったわよ……」


「……………………」


「……………………」




「早く押せよっ!!!!」

「どっちなのよ!!!?」



 と、そんな馬鹿共のやり取りがあったりもしたが、トラップは何事もなく発動し、何事もなく私達は遊園地を後にするのだった。


 くだらないやり取り見せられた時間を返してほしい。


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