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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
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第二十四話 ヤンデレ絵梨佳

 絵梨佳にまで手を出したレイのクソ野郎をどうするか、ってな処分方法を色々と考えたいところではあるのだが、そのためには今この場をどう切り抜けるかにかかっている。


 せっかく幸の救援が入って、有利になった展開だったのに、絵梨佳が敵サイドに加わったせいで台無しだ。

 絵梨佳の魔力はかなり高い。それに加えて、最近は実戦経験も積んできているので、より凶悪化している。

 それを考慮すると、幸が来る前よりも、状況は悪くなっているかもしれない。


 と、そんな事を考えている最中でも、「この隙に!」と言わんばかり、クソガキ先輩が魔法攻撃をぶっ放してくる。

 まぁクソガキ先輩の方は片手展開の防壁で何とかなるんだけどね。

 問題は絵梨佳の方だ。

 さっきの不意打ち攻撃の威力から見ても、もう一方の手だけで防げるほどぬるい攻撃じゃないだろう。

 どうする?ちょっと本気でヤバイかもしれ……


「っがぁ!!?」


 変なうめき声と共に、クソガキ先輩の攻撃が止む。

 そして、そのクソガキ先輩当人は、吹っ飛ばされて、近くにあったフェンスにめり込んでいる。


 何!?何が起きた?


「あなた何?何で私のお姉ちゃんを攻撃してるの?お姉ちゃんはね、とっても尊い存在なんだよ。あなたごときがお姉ちゃんに手を出しちゃダメだってわからないの?」


 いつの間にか、絵梨佳の標的がクソガキ先輩に切り替わっていたようだ。

 いや、その表現は正確じゃないかな?

 元々全員が敵同士みたいなもんだ。美咲とクソガキ先輩が無言で共闘してたってだけで、絵梨佳にまで『敵の敵は味方』みたいな理論が通用するとは限らなかったってだけの話だ。


「ねぇ裕美さん……さすがにアレはちょっとやりすぎなんじゃ……?このままだとクソガキ先輩死んじゃわない?」


 ミキちゃんがこそっと耳打ちしてくる。

 当のクソガキ先輩へと目をやると、フェンスにめり込んだまま、内臓を圧迫されてるせいか吐血し始めている。

 なるほど、側面からの重力魔法を受けてる感じかな?

 たしかに、もうあの状態からの反撃は難しいかもな。

 でも……私が対魔法少女する時は、あの程度はまだ序の口なんだけどな。

 あそこから拷問タイムに入るんだけど……一般人代表のミキちゃんから見ると、アレはもうアウトなのか……


「絵梨佳……もうその程度で許してやってもいいんじゃないか?」


 催眠状態の絵梨佳に言って通じるかはわからないが、とりあえずは言葉を投げかけてみる。


「うん、そうだね!お姉ちゃんがそう言うならそうするね。ね?だから言ったでしょ?お姉ちゃんはね、凄く優しいんだよ!あなた、お姉ちゃんに感謝してね」


 思いのほか、あっさりと重力魔法が解除される。

 クソガキ先輩は案の定気を失っているようで、そのまま地面へと投げ出されて、倒れたまま動かない。

 そんなクソガキ先輩に、絵梨佳は何かブツブツ言っているけど、ちょっと不気味なんで見ないふりをしておこう……


「ゆ……裕美さん。クソガキ先輩……し、し、死んでるんじゃ……」


 隣でミキちゃんが、顔を青くしながら質問してくる。


「心音は聞こえるから、死んではいないんじゃね?」


 そうだよね。魔法で音を拾ってるからわかるレベルだから、遠目から一連の流れを見てると、クソガキ先輩死んでるようにも見えるよね。

 まぁ『まだ』とか『かろうじて』って言葉が「死んではいない」の前に付くレベルな状態かもしれないけど、そこは黙っておこう。


「な……ならいいんだけど。で?あの子も裕美さんの知り合いなの?っていうか裕美さん、小さい子に『お姉ちゃん』とか『お母さん』とか言わせるの好きなの?前にも、ネットゲームで知り合ったって子に『お姉ちゃん』とか呼ばせてたわよね?」


「本人達が勝手に呼んでるだけだっての……呼称を指定した覚えはねぇし、そういう特殊性癖は持ってねぇっての」


 というか、容姿が変わってるから気付いてないだけで、その「ネトゲで知り合った子」と目の前にいる魔女っ子は同一人物だからな。

 私を『お姉ちゃん・お母さん』って呼称してるのって、ここに居る2人だけだからな。そこ勘違いするなよ。


「さ、邪魔者は排除したよお姉ちゃん。それじゃあユリちゃんを殺すから、ちょっとどいててお姉ちゃん」


 って言われてもなぁ……

 今の絵梨佳を前にして、素直に言う事を聞くわけにはいかないだろ。


 私は黙ったまま、守るようにユリの前に立つ。


「やっぱりそうなんだね、お姉ちゃん……ズルいなぁ、ユリちゃんズルいなぁ~そうやってお姉ちゃんに守ってもらえるなんて」


 何だろう?口調は穏やかな感じなのに、いつもよりも圧が強いような気がする。


「お姉ちゃんは私のものなの……私だけのものなんだよ。ユリちゃんさえいなければ、お姉ちゃんの愛情を私は独り占めできるのに……」


 いや、そんな事はないぞ!?

 たしかに絵梨佳の事は好きな部類に入ってるとは思うけど、さっきから絵梨佳が言ってる『好き』に対してのベクトルが微妙に食い違ってるような気がするぞ。


「そうだ!この際お姉ちゃんを殺しちゃえばいいんだ。そうすればお姉ちゃんは永遠に私だけのものになるもんね!」


 意味がわからん!!?

 どうしてそういう結論になった絵梨佳!?

 死んだらそれまでだろ!?愛情も何も無いだろうが!?

 暗示にかかってるっていっても思考がぶっ飛びすぎだろ?それとも普段猫被ってるってだけで、こっちの方が素に近いのか?


「今の状態のお姉ちゃんだったら私でも十分殺せるしね。覚悟はいい?お姉ちゃん」


 よくねぇよ!?ユリ狙ってろよ!

 なんだよこの展開は?


 狙われ続けてるのがユリだったから、コーヒーすすりながら「ユリ大変だなぁ~」とか思う程度にしか考えてなかったのに、何で標的が私になってんだよ!?コーヒー噴き出すだろうが!


「裕美さん、幼女はべらしてばかりいるから、こういうヤンデレ引き当てちゃうのよ……罰があたったと思って、今後は少しくらい反省した方がいいわよ」


「はべらしてねぇし!!?」


 ヤンデレか!?絵梨佳ヤンデレなのか!?

 ヤンデレとかジャンルとしては別にあってもいいとは思ってたけど、リアルでぶち当たると結構キツイものがあるんだが……

 できるなら一生知らないまま生きていたかった……知ったせいでヤンデレってジャンルが嫌いになりそうだよ私。


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― 新着の感想 ―
[一言] ヤンデレが素っぽいな
[良い点] 裕美様そろそろ我慢の限界で変身してミキちゃんが口封じor口止めの運命を辿りそうな気も、裕美様なら意地でもバレたくないってこのまま戦う気もするので、ハラハラして見てます。 ほんとに巻き込ま…
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