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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
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第二十二話 厄介者美咲

 美咲は上空から、毎度お馴染みの魔力の矢を放ってくる。

 それに呼応するかのように、まひるちゃんは正面から、炎やら氷やら雷やらの魔法をぶっ放してくる。

 そして私は、戦力外2人を守るようにして、広域に防壁をはって耐える。

 っていうか、私一人ならともかく、ユリとミキちゃんを守らないとならないせいで、防戦一方になっている。


「お母さん!私まだ死にたくないから、死ぬ気で頑張って!」

「『お母さん』!?……いや、今はそんな些細な事どうでもいいわ!とにかく裕美さん!この場を切り抜けられたら、裕美さんファンになってあげてもいいから、お願いだから私の事見捨てないでね!」


 う~ん、この欲望に忠実なクソ共め。

 せめて「私はどうなってもいいから、アイツ等をやっつけて」くらい言えよ!建前でもいいから!その一言さえ聞ければ、躊躇なく見捨ててやるのに!


「いつもの覇気がないな裕美!わかってるぞ!アタシの方へ向かって来ようにも、その短いスカートで空飛んでパンツ見えるのを恐れてるだろ!アタシの作戦勝ちだ!」


 馬鹿だろ美咲?論点はパンツじゃねぇよ。

 お前、変身した衣装のスカート丈が長いからって油断してるだろ?

 スカートが長かろうが短かろうが、真下から見ればどっちだって同じだっての。


「……パンツ見せながら何言ってるの?やっぱ馬鹿なのあの子?」


 あ、私が思ってても、優しさから言わないでおいてあげた事を、ミキちゃんが声に出しちゃったよ。


「……え?マジで?」


 ミキちゃんの声はしっかりと美咲に届いていたよで、今更ながらスカートを抑えて恥じらいだす。


 安心しろ美咲。

 今この場に、お前のパンツ見て興奮するような特殊性癖のヤツは一人もいない。

 だから、本気で気持ち悪いから、頬を赤らめながらモジモジするのやめてくれ。お前にその動作は似合わない。


 っと、違う違う!今は『美咲の気持ち悪い動作』という精神攻撃をまともにくらっている場合じゃない。

 このチャンスを最大に活かさなくては!


 上空からの攻撃が無くなったので、正面だけの防壁に変更する。

 それを片手で展開し、空いたもう一方の手で突風を起こす魔法を発動し、それを美咲へと向ける。


 上空でモジモジしている美咲には効果は抜群で、良い感じに吹っ飛んでいく。


 これで一旦は、対処すべき対象は一人になった。

 防壁展開しながら一気に距離を詰めて、至近距離から強烈な魔法ぶっ放して終わらせるか?

 いや……それはもろ刃の剣か?一撃で仕留められなかったりしたら、たぶん私を無視して、無防備になったユリとミキちゃんを狙ってくるだろう。

 そうなったら二人を守り切れない。

 ……近距離戦をするのは得策じゃないな。

 まぁ最悪、二人が死んだら蘇生させればいいんだろうけど、「後で生き返らせてやるからお前等一回死んでくれ」を素でやるのは、人としてちょっと終わってる気がする。

 二人とも守り切るに越した事は無い。

 蘇生魔法は、あくまでも最終手段だ。


 じゃあどうする?遠距離攻撃合戦?

 遠距離魔法のぶつけ合いでなら競り勝てる自信はあるけど、ぶつけ合いで相殺されて、威力の落ちた魔法を当てても、簡単には仕留めきれないだろう。

 そうなると必然的に長期戦になって、せっかく吹き飛ばした美咲が戻ってきてしまう。

 私が大嫌いな『ふりだしに戻る』状態だ。

 それだけは避けなくては……


 だったら……


「ユリ!ミキちゃん!クソガキ先輩は私が抑えとくから、今のうちに美咲が吹っ飛んでった方とは逆方向に逃げろ!」


 そう!先に足枷を無くしてから、思う存分戦えばいい!


「了解!お母さん!意地でも踏ん張って私達を守ってね!」

「少しでも私達に攻撃飛んで来たら、私泣くわよ!本気で泣くからね!!」


 相変わらず自分本位な2人組だなオイ……


『逃がさねぇぞ!』


 突然美咲の声が直接頭に響き、それと同時に、ユリとミキちゃんがいる辺りに魔法の矢が飛んで来る。

 咄嗟に防壁をはって2人を守る。

 ……危なかったぁ!?ギリギリだったぞ!?


『アタシが遠距離攻撃得意なの忘れたか裕美?こんだけ離れてれば裕美だって怖くなんかねぇぞ!』


 再び美咲の声が頭に響く。

 美咲も念話使えたのか……こんな場面で披露しやがってクソが!


 っていうか美咲の、私に対するトラウマって、至近距離で対峙しなければ発動しないタイプの面倒臭いやつなのか?

 それとも暗示か催眠に掛かってる状態だから気にならなくなってるだけなのか?……まぁどっちでもいいか。


 つうかアイツ、どっから射撃してきてんだよ?上空にいたから2~3キロはぶっ飛んでったハズだぞ?

 魔法による補正があるにしても、どんだけ超長距離射撃してんだよ!?

 コレって完全に、漫画とかでよくある『味方の時は弱いけど、敵になると強い』パターンのやつじゃね?


 ……にしても、よりにもよって一番恐れてた『ふりだしに戻る』パターンじゃんかよコレ。

 グダグダ考え事してないで、二人を逃がす決断を真っ先にしてれば、また違っていただろうか?まぁ今更、後の祭りなんだろうけど……

 たらればで話しても仕方ないんだが、決断が早ければ、一瞬のチャンスを活かせたのかもしれない、って考えると、非常に悔やまれる。


 ともかく今は現状把握だ。前方からまひるちゃんによる波状攻撃。後方上空から美咲による超長距離射撃。

 どっちも私じゃなくて、ユリを狙って攻撃してきてるのが微妙にたちが悪い。

 ……まぁそれを考えると、ミキちゃんは側面からシレっと逃げてっても見逃してもらえるんだろうけど、子供であるユリを守るように抱きしめながら行動してるんで、その折角の優しさに「ミキちゃん邪魔」とはとても言える雰囲気じゃない。


 まぁとにかく、このままじゃ埒が明かない。

 誰でもいいから、私以外でコイツ等と同等以上に渡り合える助っ人が一人欲しい……ん?待てよ?


「ユリ!私のスカートのポケットに、変身用の石があるから、取り出して変身してみろ!」


 前後に防壁展開していて、手がふさがってる状態なので、ユリに指示を出す。


 ユリの見た目は変身前の私にソックリだ。

 つまり変身してない状態なのだ。

 って事は、変身すれば、魔王状態の私と同じ……って事はないか。変身前の魔力量的にみても、全然弱い。

 でも、多少は戦力になるハズだ。

 上手く変身できて、見た目が『ミニチュア版魔王』みたいになっても、一般人の目撃者はミキちゃんだけだ。適当な事言って誤魔化しとけば問題ないだろう。


 ミキちゃんが変身できない事は実証済みなので、今はユリが戦力になる事を祈るしか……


「お母さん……何も変わらないよ?本当にこんな石で変身なんてできるの?」


 私の指示に従い、石を握りしめたままの状態のユリから絶望的な言葉が漏れる。

 マジでかぁ……いけると思ったんだけどなぁ……


 って、そうか……これで変身できて、強い魔力を持ててたら、レイの野郎がこんな刺客送って来る意味ないもんな……アイツ頭だけはキレるみたいだし、こんな単純な事早々に試してるよな、絶対に……


 クソ……相変わらずピンチが続きやがる……


 ……それなのに、ユリを見て『変身できない仲間がいた~』みたいな顔してニヤニヤしてるミキちゃんが、妙にムカつくのは、私のただの八つ当たりなのだろうか?

 軽くビンタくらいなら、しても罰はあたらないんじゃなかろうか?


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