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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
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第二十話 仲良く登校

「ねえ、お母さん……コレ、いつまで続けるの?」


「そうだな……私も極力やめたいんだが、如何せんまだ監視が続いてんだよ。あきらめてくれ」


 家から学校へと向かう通り道。

 ユリと二人、しっかりと手をつないで仲良く……って感じでもないな。仲良さそうに歩いていく。

 あまり大衆には見られたくないので、できるだけ人通りの少ない道を選んでいるのだが、これがとても面倒臭い。


 なんでこんな事しているのか、というと……理由は単純だ。

 絵梨佳にそう命令されたからだ。


「何が起こるかわからないし、ユリちゃんがはぐれて道に迷っても大変だから、お姉ちゃん!ちゃんと最後まで手をつないで歩かないとダメだからね。約束だからね!ほら、小指出して!……はい!ちゃんと約束したからね!破っちゃダメだからね!」


 と、まぁこんな感じだ。


 ただの口約束で、破る気満々だったのだが、絵梨佳のヤツわざわざ変身までして、遠視の魔法で私達の事を監視しているのだ。

 私が、私に向けられてる魔力を認識できるって事知らねぇのか?

 いや……コレは、知っててあえてやってやがるな。

 策士だな……だが、こんな事してる暇があるなら、早く魔王軍に出社しろよ!?勤退の時間とか適当なのか?


 ともかく、見られてるからといって、こんなくだらない約束事なんて破ってもいいんじゃないか?って思うかもしれないが、約束を破った時の絵梨佳は果てしなく面倒臭いのだ。

 ブス~っとした顔で、何も言わずにコッチを睨んでくるのだ。そして謝罪の言葉を口にするまでは、一切話しかけてこないのだ。

 場所を移動しても、ブス~っとした顔のまま、無言で付いて来るので非常に鬱陶しくて、たちが悪い。


 そんなわけで、絵梨佳からの監視がある以上、この『おててつないで仲良く登校』状態を維持しなくてはならないのである。


「絵梨佳さんをダシにして、可愛い私と手を繋いでいたいってだけなんじゃないの?恥ずかしい事じゃないから、正直に言えばいいと思うよお母さん」


「お前……『可愛い』とか何言ってんだ?私のクローンだって自覚してんのか?」


 ああ……このツッコミは言ってて自分にもダメージが入ってくるな。


「残念だけど、お母さんには無い『幼さからの可愛さ』ってのが私にはあるからね。失われた過去の栄光を悔やむがいい」


 わざとらしく「クククッ……」とか笑いながら、生意気な発言をしてくるユリ。

 やっぱコイツ私のクローンだわ。

 こういうところ、本当に私ソックリだ。

 ただ、小学生時代の私の方が、ユリより可愛かったと思う……たぶん!


「っは!わかってねぇなぁ~クソガキ。いいか?『女子高生』って肩書だけで付加価値が付いてんだよ。それこそ『幼い』なんてもんよりもな。つまり、お前よりも今の私の方が、可愛さレベルでは勝ってんだ。理解したか?理解したなら身の程をわきまえろ」


「っは!!そんなのただの男受けの問題でしょ?言ってる事が、ただのクソビッチだよお母さん。ロリコンおっさん達にモテて満足してるなんて、まったくもって嘆かわしいよ」


「ペド野郎にモテるよりはマシだな。それに、世間一般的なイメージでみても『女子高生』と『メスガキ』を比べて、どっちの方がより人気があるか……」


 言いながら気付いたんだけど、なんか今なら、どっちにも需要がありそうだな……っていうか、このまま話を続けたら、完全な下ネタ路線に進むんじゃね?ユリの情操教育的に続けちゃダメな気がしてきたぞ。


「……?何で途中で言い淀むの?」


「気にするな!」


 ともかく、私が2人いると、通常会話がキャッチボールではなく、ドッヂボールになるんだって事を改めて理解したな。


「っと……無駄な会話してるうちに学校着いたな。これで心おきなく手を離せるな」


 とりあえず、通学中は何もなく、無事学校へと到着する。

 それと同時に、私へと向けられていた遠視魔法が解除された。

 どうやら絵梨佳のヤツも満足したのだろう。


「あれ?裕美さんじゃん。おはよ。また登校する日かぶったね」


 突然後ろから声をかけられる。

 振り向くと、そこにはトートバックを持ったミキちゃんがいた。

 そういや図書館で本借りてるとか言ってたな……って事は、あのトートバックには返却予定の本が入ってんのかな?


「うわ……いつかはやるかも、とは思ってたけど……誘拐は犯罪よ、裕美さん」


 何で、私とユリのペアを見たヤツは、全員そういう発言をするんだよ!?

 何で、そんなに私を犯罪者にしたがるんだよ!?


「ったく……急遽、親戚の子を預かる事になったんだよ。家には私しかいなかったから、私が面倒見てるってだけだっての……んで、学校行く用事があるから、仕方なく一緒に連れて来たんだよ」


 いちいち嘘設定の説明が面倒臭いな……これだから誰にも会いたくなかったってのに……コレ、校内入ったら教師にも説明しなくちゃならないんだろ?面倒臭ぇぇ~……


「まぁ確かに裕美さんにソックリな子ね……遺伝子って凄いわね」


 そりゃあ私のクローンだしな……口が裂けても言えねぇけど。


「にしても、自由登校期間なのに、学校に用事があるってどうしたの?裕美さんが進んで自主学習とかするとは思えないけど……」


 とんでもない偏見だな……あながち間違ってないのが悔しいけど。


「いや……進路なんちゃら報告書?とかいうのを提出しろ、って呼び出しくらってんだよ」


「はぁ?アレまだ出してなかったの!?提出期限いつだと思ってるのよ?……で?それを書いたから提出しにきたの?」


「いや、用紙すらもらってねぇから、ソレ取りに来ただけだけど」


 あ、ミキちゃん完全に呆れてるな。口には出してないけど表情がものがたってる。『絶句してる』とも言うかもしれんけど。


「気持ちはわからなくもないけど、私にとっては良い反面教師になってるよお母さん……」


 別方向から、私にだけ聞こえるような音量で、ボソッとツッコミが入る。

 気持ちを理解してくれてありがとう。さすがは私のクローンだな。


「つうか、いつまでもこんな場所で立ち話しててもしょうがねぇから、早いとこ移動しね?春に近づいてるっていっても、さすがにまだ寒ぃし…………ん?」


 ふと、校門を入った位置で、ずっと立ち話をしていた私達を、校門の外から見ている視線に気が付く。


「あれ?クソガキ先輩?こんな所で何やってんのかしら?」


 ミキちゃんも気付いたようで、視線を送る相手を見て、小声でつぶやく。

 たしかに、ミキちゃんの言うように、そこにはクソガキ先輩ことまひるちゃんが立っていた。


 でも何だろう?なんか様子がおかしいような気が……?


「……見つけた」


 まひるちゃんは、一言そうつぶやくと、ミキちゃんがいるにも関わらず、何も躊躇せずにいきなり変身をする。


 何してんだよまひるちゃん!?どういう事だよ!?わけわかんねぇ!!?

 コレってアレか!いきなりのフラグ回収ってやつか!!

 マジで勘弁してくれ絵梨佳!!


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