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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
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第十三話 保護者の仕事

 さて、ユリを助けるとして、どのタイミングで行こうか?

 せっかく当人が頑張っているっていうのに、いきなり横入するのも、ちょっと気が引ける。

 場合によってはユリのやる気を削いでしまうのではないだろうか?子供のやる気を奪ってしまうのはマズイだろう。

 じゃあ、やられそうになるギリギリのタイミングで助けに入る?


 うん!とりあえず冷静になって考えてみよう私。


 前提として、私とユリは似ている部分がある。

 だったら、私がユリの立場だったら、どう考えるかってのを想像してみよう。


 まずは『いきなり横入』パターン。私だったら「余計な事しなくても私一人でも何とかできたっての。まぁ余計なケガしなくて済んだし、楽できたから今回は良しとしといてやるか」ってなるだろう。


 次は『ギリギリ』パターン……「どうせ助けに来んならもっと早く来いよ!私がいたぶられてるの見て楽しんでやがったのか?趣味悪ぃなオイ。テメェと私の力量差を見せつけて、テメェ無しじゃ私は何もできないって思い知らせたかったか?性格ねじ曲がってんじゃねぇのか?」


 …………よし!すぐ行こう!


 ちょっと出遅れた感はあるが、どこに行こうが、先行してる2人とも魔力を持ってる時点で、私のサーチ魔法に必ず引っかかる。

 そして案の定、近くの建物の屋根の上を、飛行魔法でピョンピョン飛び跳ねながら移動する2つの気配を察知した。


 にしても、2人供とろい動きしてんなぁ……私が本気出したら、飛行魔法でも音速軽く超えられるぞ。

 まぁ、音速超えの飛行魔法使うには、魔力消費量が変身前の魔力総量以上だから、変身が必須になるんだけどね。

 色々あんのよ……音速以上のスピードを出すための魔力消費以外にも、音速に達した時に生じる衝撃波を中和する魔法とか、風圧やら気圧差から身体を守る防壁魔法とか、呼吸を維持する魔法とか、とにかく色んな魔法を併用しなくちゃならんのよ。

 ……まぁ私が変身必須な魔法って事は、つまりは誰も使用できないって事になるのかもしれんけどね。


 ともかく、アイツ等のあの程度の速度だったら、そんな音速超えの飛行魔法なんて使わなくても、簡単に追いつけるだろう。

 飛行魔法ではなく、足に魔力を集中させて脚力強化すればいいだけだ。

 空を飛ばなくたって、ジャンプだけでビルの屋上くらい簡単に登れるし、走る速度もアイツ等の飛行魔法よりも全然速い。

 難点としては、強化された脚力によって、踏み込んだ部分が破損するって事くらいだろうか?

 そんなわけで、人様の家の屋根とかを壊すのは忍びないんで、破壊していくのは、極力アスファルトだけにしておこう。


 若干、人目を気にしながらも走り出し、案の定あっという間に2人に追いつく。

 2人がいるであろう建物の下から、一気に屋上へと飛び跳ねる。


「いい加減、観念しなさい!」


 どうやら、ちょうどユリが追いつかれたタイミングだったようで、魔法少女がユリに牽制的な攻撃を加えようとしている。

 ユリも、もう逃げられないと悟ったのか、反撃しようと、右手に魔力をこめながら、魔法少女の方へと振り返っているところだった。


 これは……ナイスタイミングというやつだろうか?


 私は飛び跳ねていた勢いをそのままに、今まさにユリを攻撃しようとしている魔法少女を蹴り飛ばす。

 不意打ち気味ではあったものの、魔法少女はギリギリで防壁魔法を展開し、私の蹴りを防御した。

 ただ、完全には防ぎきらなかったようで、よろめきながらケツをついて転ぶ。……まぁダメージはそんなに無さそうだな。


 次の瞬間、無数の衝撃波のような魔法が飛んできて、私の自動防壁に防がれる。


 一瞬、倒れこんだ魔法少女に反撃されたのかと思って「コイツ意外と曲者?」とか思っちゃったけど、よくよく考えたらコレ、ユリが放った魔法か!?

 私の介入を予想してなかったから、魔法少女への反撃用として放とうとしていた魔法を、咄嗟に止める事ができずに、魔法少女を蹴り飛ばして目の前にいきなり現れた私に、うっかりぶっ放しちゃった感じかな?

 「あ……」とかボソッと言ってたから、たぶんそうなんだろう。

 だが安心しろ。この程度の魔法じゃ、私の自動防壁は何ともない。


 まぁそりゃあそうか……私の自動防壁突破できるほどユリの魔力は高くない。

 ユリの魔力は……一番近いのはステラちゃんくらいか?というか、その辺にいる一般魔族と比べても大差ない。

 いや……でもソレって、全異世界感覚でいえば平均値以上なのか?この世界に来てる魔族って、元々は侵略しに来てるわけだから、そこそこ優秀な魔力持ってる連中が選ばれてるわけだろうし。

 私の周りの連中が、ちょっとイカレてるせいで、感覚が鈍ってるってだけの話なのだ。


 とにかく、無事2人に追いつき、間一髪のところでユリを助ける事に成功した。

 後は私が、この魔法少女を折檻すれば、とりあえずは問題解決だ。

 ……まぁあくまでも、今現在直面している出来事に関しての問題が解決するだけで、根本的な部分は何も解決していないのだけれど、そこは後々考えればいいだろう。


「ずっとアナタが何者か気になってはいたけれど……やっぱりこの子の味方なのね」


 起き上がりながら魔法少女が私へと話しかけてくる。

 ずっと私を無視してたから、いないものとして認識されてるのかと思ってたけど、どうやら攻撃加えた事で、ちゃんと認識されたようで一安心だ。


「いちおう、周りの連中から『護衛しろ』って言われてるんでね……まぁ保護者みたいなもんかな?悪ぃけど、このガキを口説きたかったら、私を黙らせてからにしてくんねぇか」


「……そうね。やっぱりそういう事になるのね」


 あんまり乗り気じゃなさそうな返事だ。

 そりゃあ、自分よりも、ちょっとだけではあるが魔力が高いヤツが相手なんだ。戦わなくていいなら戦いたくはないよな。

 ただ、ある程度は『こういう展開になるだろう』と予想していた通りだったのだろう。驚いた感じはまったくなさそうだった。


「わかってくれたんだったら、まずは場所を変えよう。ここは他人様(ひとさま)が所有してる建物の上だ。壊したりしちゃまじぃだろ?」


 私はそう言いながら、人がいない路地を選んで、そこへと飛び降りる。

 魔法少女も私の意見には賛成のようで、黙って私の後に続いて、建物から飛び降りようとジャンプする。


 馬鹿め!!かかったな!!


 ジャンプした瞬間を狙って、魔法少女へと重力魔法をかける。

 自由落下に重力魔法による加速が追加され、物凄い勢いで地面へと叩きつけられる魔法少女。


「ぐっ……!?ひ、卑怯者め!」


 ……っチ!一撃で決められなかったか。

 しっかりと防壁をはっており、地面に這いつくばりながらも、意識はしっかりとしているようだ。


「卑怯者?何言ってんだ?生きるか死ぬかの戦いに、卑怯もへったくれもあるかよ。油断しすぎなんだよ!馬鹿なんじゃねぇかお前?」


 先程まで無視されていた腹いせも兼ねて、思いっきり罵っておく。

 実に良い気分だ。


「く……うああぁぁぁ!!」


 よっぽど悔しかったのか、魔法少女は起き上がる事なく、全力で魔法を放ってきた。


 そりゃ動けなきゃどうにもならんしね……どうせ動けないままやられるなら、全力で魔法ぶっ放して、一か八かの賭けに出た感じだな。

 全力魔法ぶっぱで倒せれば良し、ダメだったら負ける。実にわかりやすい。


 魔法少女が倒れながらも放った魔法は、無数の風の刃。

 サクラがよく使う真空波のような魔法だ。


 こりゃ並の魔力しかないヤツがまともの受けたら、ナマス切りにされるんじゃね?

 まぁ私の自動防壁なら……


「……お?」


 慢心していた。

 変身しなくても、この程度のヤツならノーダメージで倒せるだろうって……


 気が付くと、刃の一部分だけではあるが、防壁を破り、私の頬に軽い傷をつけていた。


「ふ……ふはははは……」


 自然と笑いがこぼれる。


 まさか、こんなところで、こんな面白い事になるとは思ってもみなかった。


「合格だよ……お前。喜べ!私の真の実力を見せてやる!」


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― 新着の感想 ―
[良い点] あっ(察し) まさか変身前とはいえ自動防壁抜けるとは今回の魔法少女やりおりますね!
[良い点] ちゃんと他人に配慮できてる。えらい [気になる点] 超音速で飛べるけど空間転移はできないのか。 [一言] すごくラスボスっぽいです
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