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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
188/252

第七話 歳の差なんて

 私が転移する場所候補……


 まずは『魔王軍本部ビル』。

 そもそも、ここを出発しての道中での出来事だったので、わざわざスタート地点に戻りたくない。

 すごろくとかで「ふりだしに戻る」ってマスを考えたヤツは死ねばいいとさえ考えている私にとっては、まずありえない選択肢の一つである。


 次に『私の家』。

 今日は両親、仕事休みって言ってたから、高確率で家に両親がいる。

 そんな両親に、この二人をどうやって紹介する?魔法少女の方は、最悪「コスプレ趣味があり、普段からコスプレしちゃう頭イタいクラスメイト」とかいう嘘が通じそうな気はするが、ガキの方はどう説明すりゃいいんだ?「アナタ達の孫です!」とでも言えばいいのか?マジ説教をくらう自信があるぞ。

 その前に、今の私の姿は魔王様だ。両親に見つかったら、即アウトなので、そんな危険な橋は渡りたくないので却下。


 となると、自然と向かう場所は限られてきて……


「裕美さん。率直な感想を言っていいッスか?『超絶に迷惑ッス!』」


 そんなわけで、いつも通りなノゾミちゃんの部屋である。


「いいッスか裕美さん、よく聞くんスよ。ここ、私の部屋ッス!裕美さんの頭じゃ難しいかもしれねッスけど、頑張って理解してほしいッス」


 ノゾミちゃんは、私の脳をどれだけ過小評価しているのだろうか?念を押して言われなくても、そんな事はわかりきっている。


「大丈夫!ちゃんと理解してるって!つまり、この家に住民票移せばいいんだろ?」


「とりあえず、何もわかっていないって事がわかったんで、もういいッス」


 ツッコミを放棄しやがったなノゾミちゃん……

 まぁ実際は、このままダラダラとボケ&ツッコミを繰り返してたら、全然本題に入れないから、強引に話の流れを切ったんだろうけどね。


「で?裕美さんが、どっからか誘拐してきたと思われる、この二人は誰ッスか?そろそろちゃんと紹介してほしいんスけど」


 やっぱり私の予想通り、話の流れを本題に移してきたな。

 なら私も、マジメに答えてやるとするかな。


「二人とも名前知らん!!」

「じゃあ何で連れて来たんスか!!?」


 おお、食い気味にツッコミ入れてきたなノゾミちゃん。

 でも私ボケたつもりないんだけどなぁ……マジメにこの二人の名前わからんし。


「馬鹿なんスか裕美さん!?いい加減本能だけで人さらいしないで、きちんと知恵を付けてから行動するようにしてくんねッスか!?」


 ヒドイ言われようだな。


「アンタ等も裕美さんにホイホイ付いて行くのやめるんスよ!!……で、二人とも名前なんていうんスか?」


 いい加減、自分が場をまとめないとどうにもならないと悟ったのか、ノゾミちゃんが二人に話をふる。


「自分の名前とか憶えてたら苦労しないっての……」

「いや何で!!?自分の名前記憶する程度の事で苦労してて、よく今まで人生歩んでこれたッスね!!!?」


 今日のノゾミちゃん、ツッコミが冴えてんなぁ……でも、そのガキの言ってる事、けっこうマジなんだよな。


「………………」

「いや!そっちのお前は何か喋れッス!!!?」


 あ、しまった……そういえば、そっちの魔法少女の拘束魔法解くの忘れてたわ。

 そりゃ自己紹介なんてできないよね。


「すまんノゾミちゃん。ソイツうるさかったから、ちょっと喋れなくしてたんだわ」


「どういう状況だったんスか……ともかく、このままじゃ埒が明かないんで、喋れる程度にはしといてほしいんスけど」


 仕方ない、拘束魔法解いてやるか。


「いいか?状況よく理解しろよ?今、人様の家にいるんだ。拘束魔法解いた瞬間にまた騒ぎ出したりしたら近所迷惑だから、その時は今度こそ完全に息の根止めるからな」


 一言忠告をした後で、魔法を解呪する。


 解呪した瞬間、やっとまともに息が吸えるようになった事を満喫するように、ハァハァ言いながらも数回深呼吸を繰り返すものの、いきなり叫びだすような事はなかった。


 まぁ叫んだだけで死にたくはないだろうしな。

 っていうか、私がその気だったら、いつでも殺せるってのは理解できてるだろうから、それを行動に移さないって事は、つまるところ余計な事をしない限りは、今のところ殺される事はないって理解して、若干落ち着いた感じなのかな?

 ……怯えたような表情してるのは変化ないけどね。


「もう喋れるようになったんスか?喋れるんなら、さっそく自己紹介してくんねぇッスか?呼称がないと会話しにくいんスよ」


「……久保(くぼ)まひる」


 ノゾミちゃんに急かされ、渋々と名前を名乗る魔法少女。


 とりあえず、コイツの名前はまひるちゃんね。いちおう覚えておこう。


「何なのアナタ……そっちのピンク色の子が何者かわかってるの!?」


 名前を名乗って調子が戻ってきたのか、さっそく喋りだす。

 私相手ではなくノゾミちゃんにだけど……


 これはアレかな?さっきからノゾミちゃんが、私に激しいツッコミをしてるのが気になったやつかな?

 つまりは『ちょっとでも機嫌を損ねたら殺されかねないようなヤツ相手に、何でそんな生意気な口聞いてるの!?それとも、何もわかってないの!?』って言いたい感じなのだろう。


「ん?自己中極まりない、傍若無人な、ハラスメント大好き魔王ッスよね?もちろん知ってるッスよ」


 そういうとこだぞノゾミちゃん。

 まひるちゃんは、さっきから、ノゾミちゃんのそういう発言に肝を冷やしてるんだぞ。


「そういうアンタもわかってるんスか?魔王の前で変身しっぱなしって事は『まだ敵意があります』って言ってるようなもんッスよ」


 いや、別にそんな決まり事はねぇよ。

 実はノゾミちゃん、まひるちゃんの事ビビらせて遊んでる?


 まひるちゃんもまひるちゃんで、即変身解いてるし。


「……それ、どこの学校の制服ッスか?この辺の学校で、そんな制服あったッスか?」


 変身を解いたまひるちゃんの姿を見て、さっそく質問をするノゾミちゃん。

 言われてみれば、確かにこの辺じゃ見ないデザインの制服だな。


「いや……コレ、どこの学校の制服でもないの。制服っぽい服を自作しただけで……」


「「はぁ??」」


 ノゾミちゃんと声がかぶる。

 自作した制服っぽい服?コイツはいったい何を言ってるんだ?


「私、大学生なのよ。でも私服で街中うろついてると補導される事が多いから、昼間は『早退・遅刻した女子高生』って設定でいる事にしてるの」


 いや、ホント、何言ってるのコイツ……

 っていうか『大学生』!?

 見た感じ年下かと思ってたのに年上かよ!?どんだけ童顔なんだよ!?


「大学生……?私、てっきり中学生くらいなのかと思ってたッス……『年上に敬語も使えない最近の若い子』くらいに見てたッス」


 どうやらノゾミちゃんも、私と同じように度肝を抜かれたようだ。

 でもノゾミちゃん……『年上に敬語も使えない最近の若い子』ってお前が言うなよ!?年上の私にどんだけ暴言吐いてると思ってんだ?


「やっぱり年下だと思ってたのね……今からでも私に敬語使って喋ってもいいわよ」


「いや、普段からコスプレしちゃう頭イタいヤツ相手に、敬語とか使いたくねぇッス」


 うん、それについては私も同意見だ。


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