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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
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第二話 謎の子供

 さて、いきなり意味不明な事をほざき出した、このクソガキをどう対処しようか?


 いや……この場合は、対処するより無視した方が利口かもしれない。

 何と言っても、初対面の私をいきなり『お母さん』呼ばわりするような奴だ。おそらく何かしらの訳アリなのだろう……もしくは完全に頭が狂っているかのどっちかだ。

 どっちにしても関われば厄介事に巻き込まれるに決まっている。


「えっと……裕美様はまだ18歳なので、そこまで大きなお子さんはいないと思いますよ」


「よ~く聞くんだお子様。子供というのは男女の営みがあって初めてできる神聖な行為でもあるんだ……つまり、男日照りな裕美とは無縁の事……いや待てよ?裕美ならワンチャン細胞分裂で増えたりする可能性も……」


 はいはい、そうですよね。

 私が無視したところで、お供に馬鹿二人を引き連れてたら無理だよね。

 こういうパターン結構あるから、こうなるんじゃないかなって、私なんとなくわかってたし!うん!!


 あと、そっちの金髪馬鹿!ワンチャンどころか何万回チャンスがあったとしても、私が細胞分裂で増える可能性はねぇよ!!

 少なくとも人間辞めた記憶は存在しない。


 しかし何だろう……

 このガキには会った事無いハズなんだけど、見た事あるような気がしなくもないんだよな……


「まぁともかく……確かに裕美にすげぇ似てるっちゃ似てるとは思うけどさぁ……母親じゃなくて、従姉とかじゃねぇの?」


 美咲のやつ、しっかり会話してやがるな。

 いい加減『無視する』っていう行為を学べよ。


 ただまぁ……美咲の言う通り、確かに私に似てなくも……あっ!!そうだ!見た事あるわけだ!このガキ、私が小学4・5年だった頃の顔とそっくりだ!!

 この顔面!小学校の時のアルバムでよく見たやつだ!


「そっちの人、名前『裕美』っていうんでしょ?私のお母さんの名前も『裕美』だし、その顔は、私の記憶にあるお母さんの顔と一緒だよ!」


 ガキもガキで何か言ってるし。

 いくらそんな事言ったって、産んだ覚えねぇし。


 そうだよ!いくら似てるっていっても、私当人が産んだ記憶がないんだから、私の子供なわけねぇじゃんかよ!

 何でこんな当たり前な事を再確認しなくちゃなんねぇんだよ!?


「そうかそうか、名前同じかぁ~っても私自身がお前を産んだ覚えねぇから、完全な人違いだろ。ともかく、迷子なんだろ?交番まで連れってやるから、もう行くぞ」


 適当にガキをあしらいつつ、とっとと交番まで移動するように、幸と美咲を促す。

 しかし、幸は動かずに、何か考え込むようにして突っ立っている。


「どうした幸?電池切れか?わりぃけど今乾電池4本も持ち歩いてねぇぞ」


「それは私の性能が初代ゲーム〇ーイ程度だって言いたいんですか?」


 よく『乾電池4本』で、そのツッコミができたなオイ……


「それはともかく裕美様。私達は、この周辺で魔力異常があって、その異常を探してここにいるんですよね?」


 いや、知らんけど……私は、幸と美咲からそう聞いてるだけだから何とも……


「さっきから、この辺りを歩き回っていますけど、何か異常はありましたか?」


「異常だったら、今まさにあっただろ。この頭おかしい不審なガキがいた、っていうな……魔力異常は知らんけど」


 思った事を素直に口に出してみる。


「そこで裕美様に一つ質問なんですけど……」


 一つ?さっきから質問攻めにあってるような気がするんだけど、そこツッコんじゃダメなのか?


「裕美様……たしか、時間軸をいじって過去に移動できる魔法……使えましたよね?」


 ……使える。

 確かに使えるけど、今ソレ関係ないだろ!?


「まぁ使えるけど……でもちょっと待て幸!あの魔法は時空間のブレが激しいから、数分から数時間程度しか過去に戻れねぇぞ!」


「『今の裕美様が使うと』ですよね?……では質問を変えます。裕美様が十数年という時間の猶予をもらった場合、この魔法のブレを修正して年単位での過去移動は可能になると思いますか?」


 そりゃあ十数年も時間をもらえれば余裕でできそうな気がする……いや、おそらくできるだろう。

 こと魔法に関しての、私の才能を舐めてもらっては困る。


 ただそうなると……

 私がいくら馬鹿でも、幸が何を言いたいのかはわかる。


 つまり、幸が言いたいのは『未来の私が、自分の子供でもあるこのガキを、この時間軸に送りつけて来たのではないか?』って事なのだろう。


「オイ!ガキ!お前、未来から来たのか!?」


「未来……って言われても、気が付いたらココにいたから、どこから来たかなんてわからない」


「じゃあココに来る前はどこで何してた?何の目的でココに来た!?っつうかお前、名前なんてんだよ!?」


「わからない。両親の顔と名前以外は何も思い出せない……私の名前も…………」


 矢継ぎ早に質疑応答をする。

 にしても、何とも都合のいい記憶喪失だなオイ!嘘臭さが満点だよ!


「裕美様。この子はまだ子供なんですから、そんな責めなくても……」


 私とガキの間に入るようにして、幸が割り込んでくる。


「少なくても10年以上もの時間移動してきたんです。おそらく裕美様の強大な魔力がこもった魔法です。そんな魔法を生身で受けてここまで来たんですよ……何かしらのショックで記憶が抜け落ちてても不思議じゃありませんよ」


 まぁたしかに、そう言われると否定はできない。


「ったく……何やってんだよ裕美もさっちゃんも……両親の記憶はあるって言ってるんだから、まずはそこから聞いてみればいいじゃん」


 会話から外れていた美咲が、何やら強引に話に割り込んでくる。


「えっと……名前がわかんないから、とりあえず小裕美ちゃん」


 『こゆみ』って……言いにくくね?


「母親の名前が『裕美』ってのはわかったけど、父親の名前は何ていうの?」


 っておいっっ!!!?それ聞くか普通?私の目の前で!?

 ここで私が将来の結婚相手の名前知っちゃダメだろ!?本来だったら、相手の名前なんて知らずに過ごしていたわけだろ?

 未来からの予言みたいなの聞いちゃったら、それって歴史に干渉しちゃうんじゃね?

 つまり、このガキがいた未来とは別の未来になる可能性が出てきちゃうわけで……

 私が将来の結婚相手を意識しすぎるあまり、結局結婚できなくて売れ残ってしまう未来になる可能性もあるわけだろ?

 本来だったら、子供もいる幸せな家庭を築いて大往生って流れだったのが、一人寂しい老後を過ごして誰にも気付かれる事なく孤独死する未来に切り替わる可能性も……


 反対!歴史改変に断固反対します!!


「オイっ!ガキ!!父親の名前なんて言わなくて……」

「お父さん『レイ』って名乗ってたと思う」


 ……私の制止が間に合わなかった。

 ……言いやがったよ、このガキ。


 いや、それよりも……このガキ、今何て言った?


「「「……レイって」」」


 三人のつぶやきがハモる。

 たぶん全員、思い浮かべた顔は同じだろう。


 決まった未来など存在しない!運命とは……未来とは変えていくものだ!!


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