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魔王少女  作者: mizuyuri
第六部
182/252

第一話 そろぞれの進路

 冬の寒さにも底が見えてきたと感じるようになってきた。

 とは言っても、まだまだ寒い事には変わりないのだけれど……


 まぁともかく、前回の騒動以降は特に大きな事件も起きず、平穏な時が流れている。

 うん、実に良い事だ。

 何もなければ、無駄に変身する事もないため、私が魔王だってバレる可能性は極端に低くなる。

 このまま何も無いまま、無事高校を卒業したいもんだ。


 ……いかん。今の何かフラグっぽくね?


 何はともあれ、私もそろそろ高校卒業である。

 卒業を控えた今の時期、学校も自由登校期間に突入しており、もちろん私は一切登校していない。


 ん?進路はどうすんのかって?

 いやぁ……その辺私も色々考えた。

 卒業したら、いよいよ本格的に魔王として魔王軍に就職するべきか、とかも思ったりもしたのだけれど……


 結果としては、大学進学を選んだ。

 何故かって?理由は単純だ!まだダラダラと遊んでいたいからだ。


 それにさぁ……私が魔王軍に就職したところで何ができるよ?今まで魔王としての仕事をずっと放置してきた私だよ?まぁせいぜいヴィグルが少ぉぉぉしだけ楽になる、とかそんな感じでしょ?それはそれで何かムカつかね?

 そんなわけでの大学進学である。


 私の様なゴミ知能でも、定員割れおこしてるような超3流の私立大学なら、AO入試で楽々合格できるのが非常にありがたい。

 進学を考えていなかった時期に「何かあった時用に……」と、わざわざオープンキャンパスまで行っておいた甲斐があったというものだ。


 両親に「もっと知見を広げたいから進学して勉強したい!」と言った時、食い気味に「つくならもっとマシな嘘をつけ」とツッコまれ、ケンカになりかけたりもしたが、最終的には「最終学歴を『大学卒』にしとけば『高卒』よりは拍が付くから」という理由で納得してもらい、学費は出してもらえる事になった。


 ってな感じで、高校卒業後の進路が決まっている現在、美咲や幸と遊び歩いていたりするわけである。


「いや!アタシ等、裕美と違ってそこまで暇じゃねぇし!」


 ……遊び…………


「いいですか裕美様?私達はいちおう魔王軍に就職する事が決まってるんです。今までみたいにバイト感覚ではなくて、本格的に仕事する準備段階で色々と手続きやらで忙しいんです」


 あそ……


「裕美様はいいですよ!そうやって好きなように進学できるんですから!私なんて……私なんて!」


「えっと……なんかスマン」


 幸が御立腹なのでとりあえず謝罪だけはしておく。


 何故、幸がこんなにプンプンしているのかというと、まぁ色々と事情がある。

 幸の名誉のために言っておくと、女の子の日で情緒がちょっと不安定になってるからとか、そういうわけではない……たぶん。いや、もしかしたらそれもあるのかもしれないけれど、そこは深くツッコまないでおこう。


 まぁともかく、幸は将来「保育士」になりたかったらしい。

 で、学校の進路相談で、そのための短大か専門学校に行きたいと教員に説明したところ「……え?その容姿で?」と差別発言されたらしい。

 そこで幸は、近場の保育園を回り「こんな容姿でも保育士になれますよね!?」と訪ねたところ「保育士の資格はとれるかもしれないけど……悪魔みたいな羽が生えてたり、白髪黒メッシュで赤目のオッドアイだと子供が怖がるからウチじゃ雇えないかな」と現実を突きつけられた。


 結局のところ、そんな容姿の幸を拾ってくれる職場なんて魔王軍くらいしかなかった……というわけである。


 そんなわけで、好き勝手フラフラしている私に八つ当たりしている、というのが現状なのだ。

 いや……夢を諦めなければならない容姿にしたのは私だから、八つ当たりとかじゃなくて、怒る正当な理由があるのか?

 でも、あのままほっといたら幸死んでただろうから、どっちにしろ夢はかなわなかったんじゃね?

 まぁ幸もその辺は理解してるからこそ、本気で私を憎んでいるわけじゃないんだろうけど……


「ってか幸はともかくとして、美咲にグダグダ言われる筋合いはねぇぞ!お前、私がいなきゃ今頃ニートだってわかってんのか?」


 美咲の頭じゃ、普通だったら就職も進学も無理だ。

 私がいたから魔王軍に就職できたようなもんだ。完全に縁故だ!コネ入社だ!!


「裕美なんもしてねぇじゃん!?アタシを雇ってくれたのはヴィグルさんだし!」


 ぐぬぬ……そう言われると、確かに私何もしてねぇけど……でも、人事権はヴィグルより私の方が上位なんだぞ!私が「ダメ」って言ったら美咲就職できなかったんだぞ!そこんとこわかってんのか?

 ……いや、まぁ実際には、わざわざ「ダメ!」とか言わないけど。


「ウチのオカンも『美咲は本当に馬鹿で人生詰んだと思ったけど、人付き合いだけはよかったのね』って褒めてくれたし!ある意味ヴィグルさんと良好な関係を築けてたってのは、アタシの実力みたいなもんだし!」


 おいおい……そのオカンの発言、褒めてる部類にカテゴライズしちゃっていいのか?


「あ~わかったわかった……美咲が可哀想な奴だってのは理解したから、とりあえず落ち着け」


 とりあえず適当にあしらっておく。


 ……にしても、サーチ魔法で、美咲と幸が外を出歩ってるのを確認したから、この後遊びに行くのかと思って、便乗する気満々で飛んできたのに、何ともガッカリな感じだ。


「で?お前等二人は今仕事中なのか?散歩すんのが仕事とか、随分と楽な仕事だな……」


「散歩だけど散歩じゃねぇよ!」


 ……ダメだ。美咲の説明じゃ意味がわからない。


「この近辺で魔力異常を感知したみたいなんです。何かあってもすぐに対処できる私達二人に、この近辺の調査が命じられたんです」


 私の意図を汲んでか、美咲に代わって幸が説明する。

 もう時間の無駄だから、全部幸に任せて、美咲喋らなくていんじゃね?


「魔力異常?何も変わった感じは無さそうだけどなぁ……」


 いちおう周りを見渡してみる。

 別段変わった様子はない。道の端っこにガキが一人いるくらいで……


「……ん?」

「迷子……でしょうか?」

「目つき悪いガキだなぁ……裕美みてぇだな」


 三人ほぼ同時に声を出す。

 若干一名どうでもいい事ほざいてたような気がするが、慈悲で聞かなかった事にしといてやる。


 ともかく、ド平日の昼間に小学生くらいの女の子だ。不審すぎる。


「こんな所で何やってんだガキんちょ……学校サボりか?」


 さっそく近づいて声をかける。


「裕美様。いきなりそんな事言ったら、この子怖がっちゃうじゃないですか……どうしました?この辺の子ですか?近くにお母さんいます?」


 私を押しのけるようにして、幸が子供に視線を合わせるように座り込んで話しかける。

 ったく……子供好きをこんなところでアピールしても保育士にはなれねぇってのに。


 幸に話しかけられたガキは、私達3人の顔をキョロキョロと見た後、ゆっくりと私を指差す。


 何だ何だ?ケンカ売ってん……


「……アナタが私のお母さん」


 産んだ覚えありませんが!!?


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― 新着の感想 ―
[良い点] 楽しみにしてましたー ありがとうございます [一言] ママぁ
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