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魔王少女  作者: mizuyuri
第五部
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第二十三話 バレた覗き見

「あれ?絵梨佳どこ行った?」


 エフィと話している間に、別室で待っていたハズの絵梨佳の姿がなくなっていた。


「先に帰られましたよ。元々、絵梨佳さんは、エフィさんの身を案じていたようですので、無事だとわかったので、要件は達成されてたのかもしれませんね」


 そりゃあ、どっかの誰かから「エフィがやられた!」とか緊急の電話がかかってきたのが、こんな夜中にこんな場所まで出向いた原因だしな。

 重症なのかと思って来てみたら、本人意外と元気だし……来て損した気分だよ。


 まぁケガの具合を見るのはオマケで、本題はエフィをヤッたヤツの情報収集だったわけだからいいんだけど……ケガの具合を見る方が本題だった絵梨佳としては、本当に損した気分になって、怒って帰ったのかもしれんな。


「何事も無ければ、今頃はご自宅に着いている頃だと思いますが……裕美様も、もうお戻りになりますか?」


「そうだな。エフィから話も聞けたから、もう帰るわ。ヴィグルも家帰るか?ついでだし一緒に転移魔法で連れてってやるぞ」


 もう日付もまたいでるし、いい加減もう帰って寝たい。

 そんなわけで、私の親切心からヴィグルへと提案してみる。


「そうですね……裕美様が仕事を手伝ってくれるのでしたら、明け方には帰れると思いますが、それでよろしいでしょうか?」


 藪蛇だったか……


「すまんなヴィグル。宗教上の理由で今日は労働してはいけない事になってんだ」


 とりあえず適当な事を言っておく。


「無神論者が『宗教上』とかよく言えますね……まぁ私の方も言ってみただけで、裕美様が本当に手伝ってくれるとは夢にも思っていませんがね」


 夢くらいには思っておけよ……

 にしても、とげのある言い方だなぁ……まったく気にしないけど。


「じゃあ私は帰って寝るぞ。じゃあな!」


 これ以上、何か小言言われる前に、とっとと退散する。

 ヴィグルからの返事を待たずに、転移魔法を発動させて自宅へと飛ぶ。


「……ん?」


 自宅の玄関に着いて違和感を感じる。


「……絵梨佳の靴がねぇな」


 出かける時に履いていった絵梨佳の靴は、そこには無かった。


 どういうこっちゃ?

 ヴィグルの話だと、もうとっくに帰ってきてる時間なんだろ?


 ヴィグルの計算ミス?

 いや……こういった、個人の歩く速度も考慮した時間とかの緻密な計算を、ヴィグルは何故か絶対に間違えない無駄な特技を持っているので、それはないだろう。

 じゃあ、絵梨佳が寄り道してる?

 いやいや……クソマジメな絵梨佳に限ってそれはないだろう。むしろ、こんな真夜中にどこに寄り道するってんだ?


 最悪、変身できる絵梨佳なら変質者に襲われても何とかなるだろうから、その辺は大丈夫だろうけど……

 まぁいちおう迎えには行っておくかな?

 もしかしたら、変なナンパ野郎に絡まれて、断れずにいるのかもしれないしな。


 そんなわけで、さっそくサーチ魔法を使って、絵梨佳が持つ変身アイテムの、微弱な魔力を探してみよう……


「ってオイ……これってもしかして、やべぇやつなんじゃね?」


 サーチに引っかかったものは、変身した絵梨佳の魔力と、それ以上の魔力を持った2つの存在。

 1つは、例の石を使ったポチだと仮定して、もう1つは誰だ?

 いくら絵梨佳でも、この魔力持ったヤツ2人に囲まれたらヤバイだろ!?


 私はすぐさま、絵梨佳含めたデカい魔力が集まっている場所の近く、その場所が見えるような建物の屋根へと転移する。

 いきなり現場に行かなかった理由は単純に、状況が把握できていないので、いちおうは様子を見たかったからだ。


 そして、着いて早々に目についたのは、赤い髪をしたポチを掴んで、相手の魔力を操作する魔法を発動させようとしている絵梨佳の姿だった。


 やっぱ予想通り、絵梨佳の相手はポチだったか……にしても、何か意外と絵梨佳が優勢なんじゃね?


 ……と思っていたのも束の間、ポチは絵梨佳の手を掴み、魔法の効果をかき消していた。


 あ~……本当にポチのヤツ反魔法習得してたのか……こりゃ一転して絵梨佳ピンチだな。


 どうする?すぐさま助けに行くか?

 いやいや、もっとピンチになってから登場した方がカッコいいだろうし、お姉ちゃん株も急上昇するだろう、もうちょっとだけ様子見ておこう!

 そもそもで、もう1つの魔力反応が何者なのかを、まだ確認していない。


 そんなわけで、もう1つの魔力反応の主の方へと視線を向ける。

 そこには、赤い髪をして、ポチの背後から魔法攻撃をぶっ放すサクラの姿があった。


 サクラかぁ……まぁ何となく予想できる範疇のヤツだったな……もっと意外な人物だったほうが面白味があったのになぁ……そうかぁサクラかぁ……何かガッカリだよ。


「……あ」


 何かどうでもいい事考えてたら、いつの間にか、サクラがぶっ放した魔法が絵梨佳に直撃していた。


 どうしてそうなった!?


 そして、必死になって絵梨佳に言い訳しながら謝るサクラが、ポチにグーパン喰らってゲロ吐いていた。

 ……油断しすぎだろサクラ。バカなの?


 まぁでもこれで、ポチと対立してた2人がノックアウトされたわけだから、争いもお終いだな。

 うん、完全に出ていくタイミングを逃したな……まぁいいけどね。帰って寝たいし。


 ふと視線をポチへと移すと……バッチリとポチと目が合った。

 私がここにいるの気付いてたなポチのやつ……


「どうした?この程度で終わりではあるまいな?回復するくらいに時間は与えてやる……さっさとかかって来るがいい」


 無理だろ?コイツら2人とも満身創痍だぞ?いくら回復魔法でお茶を濁しても、結果はわかりきって……いや、違うな……コレ私に向けた言葉だな。『助けに来ないならコイツ等殺しちゃうよ』って事か。

 私が、疲れるから蘇生魔法使うの嫌がるの知ってて言ってやがるな。


「ば……かに……して…………後悔……させてやるわよ……ヤガミィィ!!」


 あ~あ……ポチの言葉を真に受けて、サクラのやつその気になってるし。

 はぁ……面倒臭いけどやるしかねぇか……今日はもう眠いから明日以降にしてほしかったんだけどな。


 仕方ないので変身して、すぐさま転移魔法でポチの前に移動する。


「悪ぃけどよサクラ……ポチを後悔させる役目、私に譲ってくんね?」


 とりあえずは、ピンチに現れたヒーローを演出しておく……私、魔王だけどね。まぁそういう、どうでもいいツッコミはこの際無視しておこう。


「私の可愛い妹を、こんなボロボロにした罪は重いぞ……覚悟はできてんだろうな?ポチ」


 いちおうは『カッコいいお姉ちゃん』も演出して、お姉ちゃん株を上げる事も忘れずにやっておく。

 まぁ絵梨佳をこんな風にした犯人はサクラ、っていうのを見てはいたけど、その辺はややこしくなるから見てなかった事にしておく。


「そうか……裕美殿に逆らう気はなかったのだが、身に振る火の粉は払わねばならんな」


 何かポチのヤツ寝ぼけた事言ってんな。私と戦えるのが嬉しくてしょうがない、みたいな顔しながら何を言ってんだ?


 いや……あ~、うん。そういう事か……なるほどね。


 ポチのヤツは義理堅いし、忠誠心が強い。

 一度、自らの主と決めた私に逆らう事は、行動理念から見れば不本意にはなるのだろう。

 ただ、手に入れた力で、私に挑んでみたいっていう、相反する思考もある。


 じゃあどうするか?

 その答えがコレなのだろう。


 『逆らうつもりは無いのだけれど、殺らなければ殺られるから、仕方なく反撃するしかない』という大義名分を得たかった、ってところかな?


 反魔法が使えて、私を抜けば一番魔力の高いエフィを倒したのに、すぐさま私に挑まずに絵梨佳を狙ったのは、たぶんそういう理由なんだろう。


 まぁポチの事だから、絵梨佳に「裕美殿と戦うための人質になれ」とか馬鹿正直には言わずに、適当な理由でもでっちあげてそうだけど……そもそも、そんな事言われて、絵梨佳が「はい、わかりました」とか素直に言う事聞くわけないだろうしね。


 ともかく……

 せっかく、そこまでお膳立てされたんだったら、やってやるのが、ポチの飼い主としての務めだろう。


 さて、ちょっくら力の差ってやつを見せつけてやるか!もう二度と逆らう気を起こさないくらいにまで完膚なきまで!


 ……それはともかく、それを考えると、サクラのやつ何でここに居んの?

 もしかして、無駄にゲロ吐きに来ただけなんじゃね?


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