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魔王少女  作者: mizuyuri
第五部
159/252

番外編4 ~ポンコツ担当の四天王~

「誰もいない……のよね?」


 絵梨佳の家の前で立ち尽くす。

 『絵梨佳の家』という事は、ある意味クソ魔王の家でもあるのだけれど、2人ともまだ家には帰ってきていないようだった。


 若干の魔力反応はあるのだけれど、ソレはおそらく、得体の知れない空飛ぶ動物のものだろう。

 別にソイツ相手に用事を済ませてしまってもいいのかもしれないけれど、生憎とあまり関わりたくないので、素直に引き返す事にする。


「まったく……コレ、大事な物なんじゃないの?」


 私の手の中に納まっている小さな球体を見てぼやく。

 魔法少女と呼ばれている連中が、魔力を得るために変身するアイテム。


 私も一度、幸さんが持っていた石を使ってみた事はあったけれど、変身後の魔力核の方が弱かったので、それっきりになっている。


 ともかく、魔法少女にとっては大切であるハズの変身アイテムを、絵梨佳は魔王軍本部に置いたまま帰宅してしまっていたのだ。


「変身もできない状態で、敵に襲われたらどうするつもりなのよあの子は……」


 何かあってからでは遅い。

 一刻も早く渡してあげようと家まで届けにきたのだが、空振りに終わってしまったというわけである。


 あの子がどこにいるのか、まったく当てがない。

 魔法で探そうにも、変身していない絵梨佳は魔力を持っていないのでサーチ魔法には引っかからないので探しようがない。


 かなり癪なのだが、ここはクソ魔王を頼るしかなさそうだ……

 本気になったアイツは、魔道具を使用しなければ見逃してしまうような微弱な魔力反応でも察知できる。

 事情を説明して、絵梨佳に何か危機が迫った場合はすぐに助けられるようにしてもらおう。

 そして、何も起こらなければ、クソ魔王から変身アイテムを、絵梨佳に渡しておいてもらえばいいだろう。


 ただ、そのクソ魔王の魔力反応も、私のサーチ魔法の範囲外にある。

 とはいえ、魔王が居そうな場所はわかっている。

 おそらくだが、また希美の家で何かやっているのだろう。


 私はゆっくりと、希美の家の方角へと歩きだす。


「……つけられてる?」


 少し歩いた所で、ふと違和感に気付く。

 私よりも少し強い程度の魔力反応が、一定距離でピッタリとついて来ていた。

 もしかしてコレが、ヴィグル社長が言っていた異世界人なのだろうか?


 私は少し行先を変更して、人の気配がない路地裏へと方向転換する。


「私に何か用?尾行するならもう少し上手くやった方がいいわよ」


 周りに人がいないのを確認して、後ろへ向かって声をかける。


「声をかけるタイミングを見計らってただけで、別にバレたくなかったわけじゃないわよ。そこのところ誤解しないでほしいわね」


 そう言って現れたのは、見るからにいけ好かなそうなオバサンだった。


「ふーん……で?私と何を話たかったの?オバサン」


「おっ……おば!?私はまだ20代よ!!」


 あ、怒った。


「年齢なんて聞いてないわよ……私も暇じゃないのよ。用事がないなら、もう帰ってもいい?オバサン」


 私も相手を煽るのが、昔に比べて上手くなってきたような気がする……ヤガミの悪影響かもしれないわね。


「ッチ!……この世界での魔力持ちって事は、人間災害の関係者よね?……いや、よく見るとアナタもこの世界の人間じゃなさそうね……もしかして同業者かしら?」


 はぁ~……また『人間災害』か。

 相変わらず人気者ね、あのクソ魔王。


「その『人間災害』の名前は大間裕美。年齢は17……あ、この前18歳になってたわね。本気出してない時は私と同じくらいの魔力量の、目つきもガラも悪い女子高生よ……これでいい?」


 正体を黙ってる義務も義理もないので、ためらいなく知っている事を口に出してみる。


「やけにあっさりと喋るのね……何か裏でもあるの?」


 何か変に勘ぐってるし……


「ソレがわかった事でどうなるっていうのオバサン?そんな情報持っててもアイツをどうこうなんてできないんだから関係ないわよ。何にしたって可哀想な御遺体が一体出来上がるだけなんだから……そもそもアンタ、私にすら勝てないんじゃないの?」


 慢心、というわけではないけれど、このオバサン、私よりも魔力量は多いけど、何となく負けるような気がしない。

 根拠もない、ただの直感みたいなものだけど、そんな気がするのだ。


「ふーん……言うじゃないクソガキ。アンタ、サーチ魔法使えないの?私はアンタより魔力量多いってわかってる?」


 ホント、わかってないわね、このオバサン。

 魔力量だけで実力が判断されるんだったら、私は絶対に希美に負けないし、ヤガミにだって勝ててもおかしくはない。

 でも現実は、私は一度希美に負けてるし、ヤガミには、幸さんと二人がかりで戦ったにも関わらず引き分けで終わってしまっている。


 まぁどっかのクソ魔王みたいに、桁外れの魔力を持ってるヤツは、その範疇じゃないかもしれないけれど、ああいう人外を、私達一般人類と同じカテゴリーに入れる事自体間違っている。


「知ってるわよ……『魔力が多い』って言っても、それって仮初めの魔力でしょ?何か変なアイテム使うと、髪が赤くなって魔力が増えるんでしょ?その似合ってない赤髪が何よりの証拠になってるわよオバサン。そんな借り物で強くなった気にでもなってるの?」


 ちょっと前に、魔王軍本部の連絡事項で回ってきた情報を口に出して言ってみる。


「仮初めだったとしても、今の私がアンタより魔力上なのは事実でしょ?負け惜しみ?」


 ダメだ、このオバサン。

 っていうか、その魔力至上主義みたいな考え方、好き勝手やって世界の頂点に君臨しているクソ魔王を肯定しているみたいで、無性に腹が立つ。


「だったら試してみる?」


 魔力関連の事件は、この世界の法の外にある。

 だから、私がここで、このオバサンをボコボコにしても、何の罪にもならない。


「いいわよ。人間災害を倒す準備運動くらいはしてあげるわよ」


 どうやら私が売ったケンカを買ってもらえたようだ。


 せっかくだから、日頃の鬱憤を解消させてもらうとしますか!


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