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魔王少女  作者: mizuyuri
第五部
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第十三話 出撃魔王様

 最近、この辺りの治安が非常に悪い気がする。

 いや、世間一般的に見たら、別にそんな事はないのかもしれないのだけれど、主に魔力扱える人限定で、とても生活しにくくなっている。


 まぁ簡単に言うと、異世界から金目的でやって来る連中が、人間災害である私を探して「魔力持ってるヤツなら何か知ってるだろ?」理論で、通り魔的にケンカ吹っ掛けてくるようになった、ってな感じである。


 連中のサーチ魔法の範囲がどんなもんかはわからんけど、私が常に変身してれば、そんな通り魔も減るのかもしれないが、常に変身は疲れるからやりたくないし、何より、群がって来る連中を私一人で捌くのは、もっと疲れそうだから嫌なのだ。


 そんなわけで、対処をまったくせずに、基本放置状態になっているのである。


 と言っても、常に魔力持ったまま生活しているのは、魔族以外だと数える程度しかいない。

 私をはじめ、幸、ノゾミちゃん、ポチ、サクラ、エフィ……うん、どいつもこいつもケンカっぱやいな。


 まぁコイツ等だったら、魔力増強される新型強化石とかいうヤツ使われても対処可能だろう。

 もし、コイツ等以外の一般魔族が襲われたらどうするか?ってな事を考えるかもしれないが、その心配は意外となかった。


 異世界から来る連中はどいつもこいつも自意識過剰なヤツが多く、「俺の方が強い!」アピールがしたいらしく、感知できる範囲にいる、より魔力が強い奴にケンカを売る習性があるのだ。


 現在私が行っているのは、範囲内に四天王クラスの実力者がいないせいで、それでいてそこそこの実力を持っているため襲われて、対処不可能になった奴を助けに行く、ってくらいである。


 ……そう、まさにこんな感じに。


「裕美様……わざわざ来なくても、後程、蘇生魔法を使って頂ければ事は済んだのですが……面倒臭がりの裕美様にしては珍しいですね」


「皮肉言えるって事は、まだだいぶ余裕があったんだなヴィグル……登場もうちょっと遅くした方が、ありがたみが増したか?」


 そんなわけで、私は今、そこそこの実力はあるけど、新型強化石を使われるとマズイ状態になる代表例であるヴィグルを助けにやって来たのだった。

 ヴィグルの他には、元四天王連中がいたりもするのだが、意外とサーチ範囲内に、私をはじめとして対処可能連中がだれか一人くらいは入り込む事が多いようで、滅多には対処不可能連中は襲われたりはしないのだが、今回は稀なケースだったりする。


「あんだテメぇ?そっちの化物よりは魔力あるみてぇだけど、状況わかってんのかコラ?テメぇみてえなのが加わったところで、俺様に勝てるわきゃねぇだろうが!」


 髪を赤くした、チンピラっぽい兄ちゃんが吠える。

 ホント、最近になってこの世界にやってくる異世界人って、こんなバカっぽい奴しかいないのな?

 まぁ、頭回るヤツだったら、もうちょっと慎重に行動するだろうから……つまるところ、金に釣られて即行動に移したような連中ってのは、こんなのしかいないって事だわな。


「何だ?私の事を探してるって聞いたからわざわざ来てやったのに、冷てぇ言い方だな」


 喋りかけながらチンピラ兄ちゃんへと近づいて行く。

 もちろん、ベストなタイミングでの変身も忘れずに行っておく。


「は?何言ってんだてめ…………え?」


 いいねぇ!その、変身した私の魔力をサーチしちゃった後のリアクション。

 冷や汗を垂らして、目の焦点が合わなくなる……うん、いい絶望っぷりだな。


「いちおう忠告だけはしといてやるよ。このまま黙って、お土産でも買って元の世界帰るなら見逃してやってもいいぞ……でも、今目の前に、一生マジメに働いても手に入らないような大金を得るチャンスが転がってるのに、見逃すなんて事ないよな?」


 慈悲はいちおう残しつつ、それ以上に煽ってみる。


「うわあぁぁぁぁ!!!」


 やけになるかのように叫びながら、チンピラ兄ちゃんは魔力弾を放ってくる。

 さらにそれだけでは終わらず、雷を剣のようにして斬りかかってきたり、炎の竜巻を作ってぶつけてきたりもした。


 ……まぁ、反魔法で全部無効化してるんだけどね。


「何だよコレ!?……こんなの聞いてねぇよ……何だよ……何なんだよお前は!!?」


「ん?人間災害だけど?知ってて攻撃してきたんじゃねぇの?……ああ、それともココは『魔王様』とか『魔王少女』とか、この世界で私が名乗ってる決め台詞の方が良かったか?」


 聞きたいのはそういう事じゃない、ってのはわかってて煽ってみる。

 ただ、それに反論してくる気力は、もうチンピラ兄ちゃんにはなさそうだった。


「ともかく……だから忠告してやったろ?大人しくお土産買って帰ってればよかったろうが……」


 チンピラ兄ちゃんは、冷や汗をダラダラ垂らして、歯をガタガタいわせながら震えており、私が一歩一歩近づくたびに、その具合が増していくようだった。

 もうダメだなコイツ……


「なぁ?この国の伝統品で、ダルマってあるんだけど知ってっか?」


 もちろん返事は返ってこない。

 私はチンピラ兄ちゃんの両肩に手を置く。


「どうせだったら、そういう伝統的なやつをお土産にした方が喜ばれるぞ」


 喋りながらも、チンピラ兄ちゃんの両足を、足の爪先で軽く触れる。

 そして、両肩に乗せていた手を放し、チンピラ兄ちゃんとすれ違うような形で、ゆっくりと歩く。


「そうだ!私がお前の世界に、後で送ってやるよ!お前の出身世界の次元座標教えろよ」


「ふ……ふざけんな!俺の世界まで滅ぼす気かよ!俺は……俺は!!」


 突然叫びだすチンピラ兄ちゃん。自分の世界に何か想う事でもあるんだろうか?

 ……まぁそんな事はどうでもいいんだけどね。


「そうか、そりゃ残念……」


 私は一言そう言うと、パチンと指を鳴らす。


「うあぁぁぁぁぁ!!!?」


 瞬間、はじけ飛ぶチンピラ兄ちゃんの両手・両足。


「いてぇ!!?いてぇよぉぉ!!?」


 地面に倒れこみながらも、しぶとく生き延びているチンピラ兄ちゃん。

 だが、身体の欠損部分からは、大量の血があふれ出ていた。


「ダルマってのは、本来、倒れてもすぐに起き上がるって縁起物なんだが、お前は駄目みたいだな……悪ぃな……失敗作作っちまった」


 私は、倒れているチンピラ兄ちゃんの顔の上に、ゆっくりと足を上げる。


「駄作は壊す主義なんだ……じゃあな」


 そう言って、私は勢いよく、足を下ろした……


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