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魔王少女  作者: mizuyuri
第五部
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第六話 浮遊狐混乱中

 ウチの夕飯の時間は、たぶん他の家庭と比べて遅い方だと思う。


 両親共働きなのが一番の理由ではあるのだけれど……お腹を空かせた可愛い愛娘のために、その辺少しは融通利かせてくれてもいい気がする。


 まぁ両親を助けるためにも、私が料理担当するべきなのかもしれないが、昔一度、何を血迷ったのか、そんな気分になって料理を作ったのだが、母親から「お前はもう二度と台所に立つな」と感謝されたので、それ以来、親の言う事を忠実に守っているのだ。そんな色々と複雑な家庭事情を察してもらえるとありがたい。


 ともかく、そんなわけでウチの夕飯時間は遅いのだ。

 いちおう絵梨佳が生きてた頃は、それなりに早くしようという親の努力はあったのだが、絵梨佳がいなくなってからは、家族の会話が減ってきた事もあり、家で待っているのが私一人なうえに、そんな私も我慢が苦手で、腹が減れば勝手に外食しだしたりしてたので、もう親も努力義務を怠り、やりやすい時間に夕食タイムとなったわけである。

 完全放置で「夕飯?勝手に食ってろ」にはならずに、いちおう毎日出来立ての御飯を用意してくれるあたりは、放任主義ではあるけど両親の良心に感謝しとくべきなのかもしれない。


 そんな感じで出来上がっていた生活サイクルは、いくら絵梨佳が復活したといっても、すぐに改善されるわけでもなく、むしろ絵梨佳に「この状態に慣れろ!」といわんばかりのスタンスを貫いてる両親を見てると、何か血の繋がりを感じてしまう自分勝手さだと思う。


 それに加えて、居候のヴィグルは激務で、帰宅時間は高確率で遅い。ごくまれに帰ってこない事もある。

 その辺も相まって、両親の「別に夕飯の時間早くする必要なくね?」という無言の圧力により、現状が出来上がっているわけである。


 つまり、何が言いたいかというと……


「ユミ!やっと帰って来たんだね!……まったく、どうしてキミはいつもいつも寄り道ばかりするんだい!たまには真っすぐ家に帰って来ようとは思わないのかい!?」


 両親の帰りが遅いのをいいことに、誰もいない家を、我が物顔で飛び回っている浮遊狐が超鬱陶しいのである。


「だから何でテメェは一階のリビングでくつろいでんだよ?見つかると厄介だから、常に二階にある私の部屋にいろって言ってんだろが!」


「キミ達以外の人がいるならユミの部屋から出ないようにはしているよ。僕だって生体反応の位置がわかる魔法くらいなら使えるからね……見つからなければ問題ないだろう?」


 何とも反抗的な浮遊狐だ。ホント鬱陶しい。


「んで?今日は寂しくなって、玄関までお出迎えか?私の帰宅が嬉しくて、嬉ションとかしてねぇだろうな?」


「してない!!何でキミはいつもそう口を開けば下品な事ばかり言うんだい!?」


 コイツは、いつまでたっても煽り耐性身につかねぇな……毎回毎回そんな怒ってて疲れねぇのか?


「とにかく!ここでキミを待っていたのは、ユミに急いで伝えなくちゃならない事ができたからなんだ!」


「何だ?今になって愛の告白か?悪いけど獣姦はちょっと遠慮したいんだが……」


 つうか、そもそもで私が、UMAは恋愛対象外なの知らねぇのか?


「違う!!どうしてそうやって話の腰を折ろうとするんだキミは!!?」


 う~ん……どうやら、この浮遊狐カルシウムが足りてないのかもしれないな。

 普段、何食ってるのか知らないけど、きちんとカルシウム取るように忠告しておくのが、同居人としての優しさだろうか?


「で?要件は何だよ?こちとらお前と違って、そんなに暇じゃねぇんだよ……早いとこ話済ませてくれね?」


さっきから巻き添えくって、一緒になって玄関で立ち往生してる絵梨佳が、ちょっと可哀想になったので、浮遊狐を急かしてみる。


「さっきから話をそらしてたのはキミなのに、その言い方は正直どうかとも思うんだけど……ともかく大変な事になったんだ!」


 私のボケにいちいちツッコミ入れてる余裕があった事考えると、あんま大変そうには思えないんだけど……


「キミに懸賞金がつけられたんだ!このままだと色々な異世界の住民から命を狙われる事になってしまう!」


 マジで大変な事になってんじゃねぇかよ!?

 どういう事だよ!?どうしてそうなった!?


「僕達の世界の権力者の1人が、ユミの……『人間災害』としての存在を快く思わなかったみたいなんだ……」


 オイ!?何で会った事もねぇような奴に嫌われなくちゃなんねぇんだよ私!?


「ふざけんなよ!?何で意味もわからず殺意向けられなくちゃなんねぇんだよ?どういう馬鹿なんだよソイツは?」


「えっと……キミ達が持ってる、変身するための石をはじめ、僕達の世界に存在する色々な魔法設備を開発した天才だよ」


 いや……『天才』って部分を強調されてもなぁ……私の言った『馬鹿』に対して反抗したかったのかしらんけど、頭良くても、バカな事やってるなら、それは馬鹿だ。


「それと、僕達を作り出したのも、その人なんだ」


 OK把握した。つまり諸悪の根源がソイツって事だな。


「正直、僕も困っているんだ。今の僕の主人である、執行部の人達の考えと、その人の……レイ様の考えは異なっているんだ。どちらの命令にも逆らえない僕は、どう行動していいのかわからないんだ」


 いや、コイツがどう行動しようが、現状にまったく支障が無いんじゃねぇの?


「えっと……より優先度の高い命令がどっち、とか決まってないの?何て言うか、権力が強い人の命令に従えばいいんじゃないのかな?」


 今まで黙って話を聞いていた絵梨佳が口を開く。

 そりゃあただ突っ立てるだけじゃ暇だもんな。


「表面上、権力があるのは執行部の方なんだ。ただ、レイ様は革新的なアイテムの開発の功績が凄まじくて、一研究員としては異例の発言力を持っていて、執行部もおいそれと手を出せない権力を持っているんだ……財力の面を考えると、もしかしたらレイ様の方が上かもしれない」


 何か面倒臭ぇ相関図が成り立ってるな……何で異世界の政治事情に巻き込まれなくちゃなんねぇんだよ私!?


「とにかく、執行部の命令通り、キミが暴れるのを抑制しつつ、新たに加わったレイ様の命令に従って『人間災害』を倒しに来た連中の補佐もしなくてはならなくなってしまっているんだ」


 つまり、私の命を狙って来た連中を助けつつ、そいつらを撃退しようとする私に「暴れるな!」と注意する、と……


「それって完全にお姉ちゃんの敵だよね?」

「敵だな」


 絵梨佳と意見が一致する。


「ち、違うんだ!僕は別にユミと敵対するつもりはないんだ!ただ命令には逆らえないからどうにもならないんだ!」


 何やら必死な訴えをしている浮遊狐。

 まぁコイツが私にどんな事を言ってきても、無視してりゃいいだけだから別にいいかな?


「お前がどう行動しようが、私は私で勝手に動くだけだから問題はないわけで、とりあえずは、私が置かれた現状を把握できただけでよしとしとくか」


「そう言ってもらえると助かるよ。とにかく、今後何か情報が入ったらキミ達には伝えるようにするよ……ちなみに、今の時点で何か聞いておきたい事はあるかい?」


 情報が入ったら伝える、ね……「コレは言うなよ」って命令されたら喋れないヤツの情報なんて、あんま期待できないな……


「あ、じゃあ一つ聞いてもいいかな?」


 浮遊狐の発言に対して、絵梨佳が控えめに手を挙げる。


「あのね……『人間災害』って何?」


 あ……そういや、その辺の経緯は絵梨佳には話してなかったかもしれない。


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