第三話 激おこ絵梨佳
とりあえず一旦落ち着こう私。
コイツ等が何者かってのは後程考えるとして、私は今攻撃されたんだよな?自動防壁のせいでほとんど痛みはなかったけど……
って事は、やり返すのは有りだよな?
どこの誰だか知らねぇけど、誰に向かってケンカ売ったのかを、よぉ~~~く教えておいた方がいいよなコレ。
「そこの目つき悪ぃ女……テメェ何なんだ?」
は?「何なんだって」何なんだよ?言葉は文法をきちんと理解して喋れよ。子供の時そうやって教わってこなかったのか?……まぁこの馬鹿っぽいツラ見れば、まともに勉強してきたようには見えないか。
「この世界の人間は魔法使えねぇって聞いてたんだけどよ……何でテメェ魔力持ってんだよ?」
すぐさま、もう一人の馬鹿が追加で喋りだす。
ああ、そういう事か……私が魔法を使えるのが不思議なのね。
そして、この馬鹿の発言で、コイツ等が異世界人だって事が判明したわけだが……ヴィグルから何も報告がなかったのはどういう事だ?職務怠慢か?あとで説教だな……コブシで!
「ねぇお姉ちゃん……この人達、さっきから何を言ってるの?」
絵梨佳から小声でささやかれる。
何だろう?絵梨佳が耳元で呟いてくると、何かエロいな……
いや、今はそんな事考えてる場合じゃないな。
「ああ……コイツ等どうやら、ポチやエフィ達と同じで、どっかの異世界から来た連中みたいだな」
どこの異世界から来たのかは知らねぇけど……
ともかく、絵梨佳と真衣ちゃんにも、いちおうわかるように状況の説明をしてやる事にする。
「私が魔力持ってるのがわかったから、何か突っかかってきたみたいだな……自動防壁があるから痛くはなかったけど、さっきすれ違いざまに、頭を魔力の塊で小突かれたよ」
「……は?」
突然、私の説明を聞いていた絵梨佳が声を出す。
ってか絵梨佳……今、声色がいつもと違う音域になってなかったか?
絵梨佳はゆっくりと、チャラ男二人に視線を向けると、そのままソチラへと歩きだす。
「ねぇ?お姉ちゃんアナタ達に何かした?……ちゃんと誘い断ってたよ……無視したわけでも何でもないよ……それなのに……それなのに…………ねぇ?いきなりすれ違いざまに頭殴られる怖さって知ってる?……何でそんな酷い事できるの?」
あ、イジメられてた時のトラウマスイッチ入っちゃってるなコレ。
目が完全にイっちゃってるし。
そして、そんな絵梨佳を見て、何とも言えない表情になっちゃってる真衣ちゃん。何だ、その……強く生きろ!
「謝ってよ……もう二度としないって誓ってから、きちんとお姉ちゃんに謝ってよ……」
フラフラした足取りで、ブツブツ言いながらチャラ男二人組に近づいていく絵梨佳。
その手には、いつの間にか変身アイテムの石が握られていた。
「あ……」
私が止める間も無く絵梨佳は、チャラ男二人組の前で変身する。
サーチ魔法で見た感じ、この二人組の魔力はそこまで高くない。
たぶん相手が一人だったら、真衣ちゃんでもギリ勝てるんじゃないか、ってくらいだ。
なので、現在トランス状態の絵梨佳が暴れてしまったら、コイツ等から色々聞きだす前に、肉塊にしてしまう恐れがある。
「強化石持ちか!!?」
「何だ!?このガキの魔力は!!?」
変身した絵梨佳を見て、チャラ男二人組は、すぐさま絵梨佳から逃げるようにして距離を取る。
何だ?コイツ等、魔力の大きさまでわかるサーチ魔法使えたのか?
あきらかに二人がかりでも倒せないだろう魔力持ってる私にケンカ吹っ掛けてきたもんだから、魔力の有無しかわからない程度のサーチ魔法しか使えないのかと思ってたんだけどな。
「強化石使ったって事はコッチが本命か!?どうするよ!?コッチもアレ使うか!?」
「どうするも何も、使わねぇとアッチの目つき悪ぃ女にも勝てねぇだろ!……やるぞ!!」
何か息巻いてるけど、アッチとかコッチとかアレとか……ちゃんと固有名詞使って言語化してくれよ。バカには難しいかもしれないけど、聞かされてる身としては、マジで意味不明なんだよ。
まぁアイツ等二人だけで喋ってるから、お互いに通じればいいんだろうけど、だったら二人だけでコソコソ喋っててくれないもんかねぇ?気になってしょうがなくなるじゃん!
そんな事を考えていると、馬鹿二人組はポケットから妙な石を取り出す。
何だアレ?私達が持ってる変身用の石っぽく見えるけど、色合いが少し違うような……
次の瞬間、二人組が持っている石が光ったかと思うと、馬鹿二人も変身する。
いや、これは『変身』って言うのだろうか?
容姿でいうなら、コイツ等の髪の色が、金から赤に変わっただけで、他は特に何の変化もない……ただ、魔力が劇的に増した。
どれくらい増えたかと言うと、変身してない今の私よりもちょっと多いくらいにまで……
「お姉さん……この状況、何がどうなってるかわかります?アイツ等、何で急に魔力が……」
私の隣で変身したまま立っていた真衣ちゃんが、すぐさまサーチ魔法を使ったのだろう、小声でつぶやく。
「知らん!とりあえず今わかるのは、絵梨佳の魔力がいくら高いって言っても、あの二人を同時に相手するのはキツいだろうって事だ!」
「絵梨佳にキズ一つでもつけたなら、アイツ等……例え殺されても殺してやる!」
あ、しまった……私の一言で、真衣ちゃんまで暴走気味になっちゃったよ。
さて、いつの間にか私以外全員がテンション上がっちゃってるこの状況……どう収めようか?




