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魔王少女  作者: mizuyuri
第五部
139/252

プロローグ

 僕はいつも思っていた。

 この次元に存在している全ての世界は、優秀な人種によって管理されてこそ価値を発揮する。


 優秀な人類……そう、全異世界は優秀な僕達の世界が導いてこそ、真の繁栄と平和がもたらされるのだ。


 そうだというのに、今現在この世界のトップに立っている連中は考えが甘すぎるのだ。

 各異世界の発展を見守るだけで、進んで関与しようとしない。


 その結果『人間災害』などというふざけた存在を容認してしまっている。


 何が「人間災害は既存戦力では対処不可能」だ?連中は何を言っているのだろう?馬鹿なのか!?

 僕が開発した、新型の強化石を使えばいいじゃないか?それで全て解決するというのに、なぜ実行しないのか?


 僕達の世界の人々は攻撃的な魔法は使えない。だが、何かあった時用に、高威力の魔法兵器は大量に存在しているし、使用すれば攻撃魔法も使えるようになる魔力核を新たに作りだせる強化石というアイテムだって存在している。


 劣等種である他世界の人間になんて遅れをとるハズがない!


 いつだってそうだ!いつだって僕達は劣等種だらけの異世界を導いてきた。それによって豊かになった世界は数多く存在している。


 執行部の連中は優しすぎるのだ。

 飼い犬が大きな力を持って牙をむいてきたのなら、黙って様子を見るのではなく、引っ叩いてでも、どちらの方が立場が上なのかを思い知らせなければダメなのだ。


 ただ、どうやってソレを実行するかが問題だ。

 僕が直接動くと執行部の連中が黙っていないだろう。それは非常に面倒臭い。


 ではどうする?この世界の軍を動かすか?

 いや、それもダメだ。

 ある程度は強引に軍を動かす権限が僕にはあるが、ソレは執行部が、その行為を黙認してくれている時のみだ。

 軍を動かす最終的な決定権は執行部にある。僕が強引に命令を下したところで、執行部が「NO!」と言えばそれまでだ。


 だったらいっその事、大金を出して私兵を雇うか?

 いやいや、それもダメだ。

 私兵として雇えるのは、多少血の気の多い連中とはいえ、それは訓練を受けていない民間人だ。

 それでも勝てるとは思うが、勝率は100%とはとても言えない。例え、ほんの2・3人の犠牲とはいえ、僕達の世界の優秀な遺伝子を失わせるわけにはいかない。民間人を危険に晒すなどもってのほかだ。


 だが待てよ?大金を出して私兵を雇う、という案は悪くはないかもしれない。


 そう、あくまでも僕達の世界の民間人を犠牲にしなければいいのだ。


 例えば、犠牲になるのは他の異世界の人間共……とか。


 今、僕達の世界と交流のある異世界……いや、交流という名目にはなっているが、実際は、僕等の世界が管理し導いてきた異世界だ。


 そうだ!劣等種は劣等種同士で潰し合えばいいじゃないか!僕等の世界に住む優秀な人間が無駄な血を流す必要なんて皆無だ。


 ただ、異世界にいるような劣等種では『人間災害』を倒しきる事はできないだろう。

 なので、僕等が管理している異世界のどこかに、この新型の強化石を流通させよう。

 今まで輸出を渋ってきた新型強化石だ。どの異世界でも喉から手が出るほど欲しいがるだろう。

 何と言っても、それさえあれば、その世界の軍の戦力が格段に上昇するのだ。


 と言っても、もちろん正規ルートで流すわけがない。


 戦力強化する事によって、調子に乗った馬鹿共が、僕達の世界に反旗を翻すとも限らない。

 もちろん反旗を翻されたところで、僕等の世界の軍が負ける事など万に一つも無いのだが、無駄な犠牲と無駄な出費、それと無駄な時間が発生してしまう。

 低能な人種のせいで、そのような無駄が生まれるのは非常に腹立たしい。


 なので正規ルートでは流さない。

 流すのは民間の裏ルート。

 そこに少量を高額に売りさばく。


 後は少し待つだけ。

 少し待って、新型強化石が、その世界の裏社会でじっくりと浸透したところで次の段階へ……


 『人間災害』に懸賞金をかける!

 額は、その世界の住人では、どう逆立ちしても手に入らないような金額。


 そんな金額でも、新型強化石を売った金額に少し上乗せするだけで用意できるだろう。


 いい……いいぞ!この方法なら、僕はほとんど懐を傷める事なく、かつ何もする事なく『人間災害』を処断することができる。


 そうと決まればすぐにでも行動しよう。

 ええと?今、その辺条件の合う異世界に行っている個体は……


「ロック・ルグッド・ヴァイスシュヴァル・ログ・ファルブ。聞こえているか?」


『はい。何でしょうか?』


 僕のひとり言のような呟きに対して、すぐさま念話で返事が返ってくる。


「やってほしい事がある。至急一時帰還して、僕の研究室まで来るんだ」


 盗聴防止も踏まえた専用回線での念話……これがいつものやり取りである。

 そして、念話の相手は、どんな理不尽な命令だとしても、決して僕には逆らわない。

 全ての個体には、そうプログラムして作ったのだから。


 なので、本音を言えば、僕の発言に対して返事はいらない。

 答えは決まっているのだから……


『かしこまりましたレイ様』


 いつも通りのやり取り。普段だったら「時間の無駄」と思い若干イラっとするのだが、今は面白い事を考え付いた後なので非常に気分が良く、自然と笑みが浮かぶ。


「首を洗って待っていろ……人間災害」


 念話でも何でもない、聞く者のいない言葉が、広い研究室に静かにこだまするのだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] やった。新章開始だ。 更新再開してくれた [気になる点] 勘違い系の『優秀な人材』が果たして『人間災害』認定に勝てるのか。認定した上層部の一員でもないし上長の命令に逆らえない程度なのに。 …
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