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魔王少女  作者: mizuyuri
第四部
135/252

第二十六話 増員

「あれ?今日も魔王様来てないの?」


 いい感じに話がまとまったタイミングを見計らうかのように、ノゾミちゃんちの店の入り口あたりからミキちゃんの声が聞こえてくる。


 最近ノゾミちゃんちでよく会うなぁ……そりゃあ、ここが魔王行きつけの店だって教えたけど、そうそう毎日来るわけじゃないだろ?

 あ、いや……実際は、私ほぼ毎日のように来てるんだけど、それはミキちゃんにとっては知らない方がいい事なわけで……


「はぁぁ~……ここに座ってるのが裕美さんじゃなくて魔王様なら言う事ないんだけどねぇ」


 何かミキちゃん大げさにため息つきながら、私達が座るテーブルに近づいて来るけど……私魔王ですが何か?


「いらっしゃいッス。いつものでいいッスか?」


 やって来たミキちゃんの接客をさっそく開始するノゾミちゃん。

 ……って、ん?何『いつもの』って!?


「母さん!杏仁豆腐1つッス!」


 ミキちゃんから注文を聞いてすらいないのに、メニューをオーダーするノゾミちゃん。


「オイ!?ちょっと待て!何だその常連っぽいやり取りは!!?」


 ちょっとばっかりスルーできない事態だったので、思わず大声でツッコミを入れてしまう。


「え?何言ってんスか裕美さん。ミキさん最近は毎日のように来てくれる常連さんッスよ」


「そうそう。去年の年末くらいから、バイト終わりにここでデザート食べて帰るのが日課になってるのよ私」


 それガチの常連じゃねぇかよ!?

 まぁ大衆食堂で飯食わずに、デザートだけしか注文しない客ってのも珍しいかもしれんけど。


 にしてもミキちゃん、魔王に会うためにガチでノゾミちゃんち通ってるのかよ……会ってどうすんの?まぁミキちゃんの事だから『魔王と親しくなりたい』って下心あってノゾミちゃんち来てるんだろうけどね。

 そして、さっき「バイト終わってから来てる」って言ってたから、たぶん毎回遅めな時間に来てるんだろうけど、私が来るのはもっと早い時間なので、仮に私が魔王の格好して来ててもブッキングする事がない、っていう非情な現実があったりもする。


「あの……お姉ちゃん……」


 ミキちゃんの発言を聞いていた絵梨佳が『正体教えてあげないの?』みたいな顔をしながら小さく声をかけてきたので、人差し指をそっと口元に持っていき『言っちゃダメだぞ』という意味合いのリアクションをとっておく。

 絵梨佳は黙って、首を2度縦に振っていたので、たぶんわかってくれただろう。

 これで、空気読めない絵梨佳の口から爆弾が投下される可能性はだいぶ減っただろう。……可能性が『無くなった』って言いきれないところが怖いところではあるんだけど……まぁ大丈夫だろ。


「ん?『お姉ちゃん』?……裕美さん、そっちの子って裕美さんの妹さん?裕美さんって姉妹いないって聞いたような気がするけど、その噂ってガセ?」


 ちゃっかりとコッチの話を聞いてやがったのかミキちゃん。


 にしても、これはどう答えるべきか?

 絵梨佳は実際に私の妹ではあるけど、現在戸籍等存在しない身元不明児である。

 関係者以外に真実を伝えていいものか……?


 ここで絵梨佳が私の妹だって事を認めるのはかまわないが、怪しまれて色々調べられると厄介な事になる。いくら調べても『大間絵梨佳』という『故人』がいた、という事実しか出てこない。

 まぁミキちゃんに限って、無駄な労力使って、私と絵梨佳の関係を探り回るなんて事は無いだろうけど、可能性の問題でいえば0ではない。


 とはいえ、絵梨佳が私の事を『お姉ちゃん』と呼んでいる時点で、嘘ついて誤魔化すのも難しい気がする……どう誤魔化すべきか?


「あ、違うんです。おね……裕美さんとはネットゲームで知り合ったんですけど、ゲーム上で私、裕美さんの事を『お姉ちゃん』って呼んでて、こうしてリアルで会った時も、そう呼ばせてもらってるだけなんです」


 私が、どう反応すればいいか悩んでいたら、私の表情で察したのか、絵梨佳が咄嗟に誤魔化すための嘘をつく。

 ゴメンよ絵梨佳。お姉ちゃん、アンタの事『空気読めない子』って認識してたよ。でもやれば出来る子だったんだな。

 あと、その嘘をつき続けるのはちょっと難しいかもしれないぞ。


「へぇそうなんだ!ねぇ、なんてゲームやってるの?」


「ふぇっ!!?」


 だよね。ミキちゃんの反応は間違ってないよ。

 そんな事言われたら、次に返す質問はそうなるよね。

 もちろん最近復活したばかりの絵梨佳に、最近のネトゲ知識なんて無いだろうから、ゲーム名を答える事もできない。

 絵梨佳……空気読むなら、こう言ったらどういう言葉が返ってくるか、まで予測して嘘設定を考えておかないと、すぐに嘘が破綻するぞ。

 案の定、変な声出してるし。


「ひ……秘密です!」


 その返答は苦しいだろ絵梨佳。


「ふーん……まぁいいか、裕美さんがどこで幼女はべらしてても興味ないし」


 反応薄っ!?まぁこれ以上追及されないのは喜ばしい事なんだけどさぁ……少しは興味持とうよ私に!これでもいちおう、ミキちゃんの大好きな魔王様だよ。


「裕美さん……忠告だけはしておくけど、未成年をたぶらかして性的行為に及んだ場合は立派な犯罪だからね。いくら男ひでりが激しいからって、ソッチに手を出すのもほどほどにしといた方がいいわよ」


「あ、ミキさん。その辺は前に私が注意しといたんで、さすがの裕美さんもわかってるとは思うッスよ」


 仲いいなコイツ等。

 コイツ等二人仲良くぶん殴ってやろうか?


「ともかく、そんな犯罪者スレスレな裕美さんでも、これから善行を積めば将来きっと幸せになれるわよ。だから、魔王様に『ファンクラブ会員集めて魔王様ディナーショーしたいから、予定教えてください』って伝えておいてもらえる?」


「そんなもんに誰が行くか!!!?」


 思わず脊髄反射で叫んでしまう。

 っていうか、魔王へのメッセンジャーで徳が貯まる私の存在意義っていったい……


「はぁ?来たくないなら、別に裕美さんは来なくていいわよ」


 予想通りなミキちゃんの反応。

 スマン絵梨佳。偉そうな事思ってたけどお姉ちゃんも、こう言ったらどういう言葉が返ってくるか、まで予測する前に言葉を吐きだしてたわ。


「あの……魔王さんのファンなんですか?」


 突然絵梨佳が話に割り込んでくる。


「そりゃあそうよ!だって魔王様って可愛いのにカッコいいのよ!ファンにならない方がおかしいわよ!」


 うん、そう聞かれたらミキちゃんならそう答えるよね。それは予想できたわ。


「わかります!クールなのに、すごく優しいところも私大好きなんです!」


「あ、ソレわかるわかる!!」


「それにすごく強いじゃないですか!心も体も……本当に私の憧れなんです!」


「だよね!魔王様ほど欠点のない完璧な人、他にはいないよね!」


 ……なんだろう。

 すげぇツッコミ入れたいんだけど、めっちゃくちゃ褒められてるから、言うに言えない……

 正直言うと、凄い照れる。

 だってしょうがないだろ!褒められ慣れてないんだよ私!こんな、心からの賞賛なんてされた事ないから反応に困るんだよ!

 どう反応すりゃいいんだよ私は!?


「…………」

「…………」


 私が照れてる間に、いつの間にか無言のまま見つめ合う形になっている絵梨佳とミキちゃん。

 何だ?どういう話の流れだった?


「……アナタもファンクラブ入る?」


「はい!是非!!」


 あかん……何か意気投合しちゃってるよコイツ等。

 もう変な新興宗教の会員増やすのやめてくれ!


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