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魔王少女  作者: mizuyuri
第四部
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第二十四話 絵梨佳の個人情報

「武本がウゼぇんスけど……何とかなんねぇッスか裕美さん」


 絵梨佳と二人で、毎度の事ながらノゾミちゃんちで夕飯を食べていたところ、突然話しかけられる。


 ノゾミちゃんは、本日お店が大忙しだったようで、私達がやって来た時は店内を走り回っており、いつものように一緒に飯を食べる流れにならなかった。

 まぁたまに、こんな感じでノゾミちゃんが家の手伝いをしていて、一緒に飯を食べない事もあったりはするので、今回もそんな感じの流れになるのかと思っていたのだが、何故か手が空いた瞬間を狙ったかのように、私達が座るテーブルまでやってきたのだった。


 ってか、何か今日学校で同じようなセリフ聞いた気がするんだが気のせいか?


「アレか?超絶ハンデ付きとはいえ、私に勝てた気になって調子に乗ってる感じか?」


 とりあえず、今日の経験則から予測を立ててみる。


「あ~……美咲さんとかは、そんな感じで調子乗りそうッスけど、武本のは別ベクトルっすね」


 バレてるぞ美咲。


「とりあえずコレを受け取ってほしいッス」


 そう言いながらノゾミちゃんはテーブルの上に手のひらサイズの紙片を置く。

 手に取ってよく見てみるものの、どっから見てもただの白紙にしか見えない。もちろん両面ともマジマジと見てみたが、何か書かれたような形跡はまったくなかった。


「あ、裕美さんじゃねぇッス。妹さんの方ッス」


 私じゃないのかよ!?じゃあ最初からそう言えよ!?めっちゃ恥ずかしいじゃん!?

 つうか、それなら紙をわざわざテーブルに置かずに直接絵梨佳に渡せよ。しかもよりにもよって、私と絵梨佳の中間くらいの位置に置きやがって。これじゃあ勘違いしてもしょうがねぇだろ?


 とりあえず、そんな感じで言いたい事はいったん置いといて、無言で紙を絵梨佳へと手渡す。


「悪かったッスよ裕美さん……謝るんで、その人殺しそうな目で見るのはやめてほしいッス」


 おや?どうやらにじみ出る殺意を隠しきれなかったみたいだな。


「えっと……コレって何?」


 私の不機嫌オーラを察したのか、話題を戻すようにして絵梨佳がノゾミちゃんへと質問する。


「とりあえず今、ペンを持って来るッスから、その紙に妹さんの携帯番号でもメールアドレスでもSNSのIDでも何でもいいんで書いてほしいッス」


「オイオイ……そう簡単に大事な妹の個人情報さらけ出せるわけねぇだろ。業者にでも売る気か?1件いくらで引き受けてんだよ?」


 世間知らずな絵梨佳に代わり、私が断りを入れておく。

 ピュアな絵梨佳の事だ、私が黙ってたら安易に個人情報ばら撒きそうだ。


「裕美さんじゃねぇッスからそんな事しねぇッスよ。武本ッスよ武本」


「何!?業者に情報売ろうとしてんのはノゾミちゃんじゃなくて真衣ちゃんの方か!?」


「違うッスよ!ちょっと話が進まないんで、いったん業者から離れてくんねぇッスか」


 違うのか!?じゃあ業者関係ないなら、絵梨佳の個人情報なんか手に入れてどうする気だ?ストーカーか?


「あの……真衣がどうしたの?」


 ん?ひょっとして絵梨佳、いちいち私の相手してたら話が進まないって判断して、私の事軽くスルーしてないか?

 いや、まぁ正しい判断なんだけどね……


「あ~……今日学校で、ずっと妹さんの事聞いてきたんスよ。やれ『絵梨佳は普段何してるの?』とか『絵梨佳は今何してるの?』とか『絵梨佳は酷い事されてない?』とか『絵梨佳の連絡先知ってるの?』とか……もう本気でウンザリしたッスよ『絵梨佳』って単語が軽くゲシュタルト崩壊したッス」


 なるほど。それが「武本がウゼぇんスけど」に繋がったわけか……


「あまりにしつこいんで、直接本人に聞け!って言ってやったんスよ……そしたら『絵梨佳の連絡先知らない』ってベソかきだしたんで、うっかり『私が聞いてきてやるッスから泣き止め!ウザい!!』って言っちゃったんスよ……そして今に至る感じッス」


 泣くほどかよ!!?


「なるほど、それで絵梨佳の連絡先聞いてきたわけか……にしても絵梨佳、真衣ちゃんにやけに好かれるようになってんな。何した?」


「べ、別に何もしてないよ……真衣とは小学生の時から仲良かったからだと思うよ。それに真衣、優しいから……私の事心配してくれてるんだと思う」


 微妙に照れながら絵梨佳が答える。

 でもノゾミちゃんの話を聞くと、そんな生易しい感じな理由じゃない気がする……うん、真衣ちゃん軽くストーカー入ってるんじゃないか?

 いや、でも絵梨佳も別に嫌ってわけじゃなさそうだからまんざらでもないのか?


「とりあえずアレだ絵梨佳。真衣ちゃんの事一発抱いてやれ。それで若干落ち着くだろ」


 まぁこのアドバイスも、姉としての意見としては正直間違ってるような気がしなくもないんだけど……


「え?抱くって……真衣の事一回ギュッとしてあげればいいの?」


 ピュアな子だ!?すげえピュアな子がいる!!?

 あ、いや……中学一年生だったら普通なのか?若干の性知識はあっても『抱く』って単語が何を意味してるのかまではわからずに、額面通りの意味しか知らない感じなのか?

 ちょっとボケにくいけど、汚れの無い初々しさってのも悪くはないかもしれな……


「いや『激しく犯してやれ!』って意味ッス」


 汚すなや!!?

 ほら見ろ!絵梨佳のやつ顔真っ赤になってんじゃんかよ。


「お、犯……す、って……真衣も私も女の子同士で……」


「大丈夫ッス。そういう需要もいっぱいあるッスから」


 だから汚すなやっ!!!?

 そんな歪な需要を絵梨佳に教えるなよ!


「とりあえず落ち着け絵梨佳。あとノゾミちゃんもその辺にしといてやれ。これ以上続けると絵梨佳の頭がオーバーヒートして鼻血出して倒れるぞ」


 放っておくと変な方向に話がエスカレートしていきそうだったので、話題を断ち切っておく。

 ……うん、話の原因作ったのは私なんだけどね。そこは気にしない方向で。


「そッスね……とりあえず連絡先ッス。真衣に教えてもいいなら、今からペン持って来るッスけど大丈夫ッスか?」


 そうだそうだ、そういや絵梨佳の連絡先の話だったな。


「まぁいいんじゃね?ってか教えなかったら真衣ちゃん、変な方向進んでガチのストーカーになりそうだし。絵梨佳の連絡先一つで人生取り返しつかなくならなくて済むなら、絵梨佳の番号だろうとアドレスだろう……と……」


 喋りながらも、ふと重要な事に気が付く。


「お姉ちゃん……私、今携帯電話すら持ってないから、連絡先も何も……」


 …………真衣ちゃん。強く生きてくれ。


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