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魔王少女  作者: mizuyuri
第四部
131/252

番外編5 ~6人目の魔法少女 part4~

 殴られた……それはもう完膚なきまでにボコボコにされた。


 希美に彼女の事を聞かれたので、何があったのかを隠すことなく話したところ、問答無用で殴られた。


 別に殴られた事に不満があるわけじゃない。

 私は殴られて当然の事をしているのだ。

 むしろ希美に殴られる事で、ちょっとした免罪符を得たいと思っていたところもあった。

 それを考えると、私の意地汚さが浮き彫りになり、自分に嫌気がさす。どこまで汚いんだ……私は。


 希美にボコボコにされて気を失っていたのだろう。気が付くと希美の家へと運ばれていた。

 話を聞くと、希美は今は変身しなくても魔力を扱えるようになっているとの事だった。

 気絶した私をここまで運んでこれたのだから、たぶん嘘をついているわけではないのだろう。むしろ殴られた時、軽く小突かれただけなのにとんでもない衝撃がきた理由がわかったような気がする。


 そのまま希美の部屋で少し待つと、魔王……彼女の姉と、その友人と思われる人が2人やってきた。

 その片方の人には見覚えがあった。私達の学校にやってきて希美と戦っていた人だ。というか、羽が生えていて白に黒メッシュの髪でオッドアイ、という特徴的すぎる人を見間違える事はないだろう。

 もう一人は……たぶん知らない人、だと思う。


 やって来た魔王に、希美は、私を罵るようにして怒りをぶちまけていた。

 色々と酷い事を言われたが、全て事実なので、何も言い返す事ができずに、ただただ涙を流して謝り続ける事しかできなかった。


 希美は最後に、今後ずっと彼女の味方でいる事を宣言するようにして話を区切る。

 私に勇気が無くてできなかった事……芯の強い希美なら、きっと何があっても実行するのだろう。私も希美のような強さがあったなら後悔する事もなかったのだろうか?

 いや、そもそもで、彼女を苦しめる原因を作った私が、彼女の味方でい続ける、なんておこがましいにもほどがあるだろう。


 そして、そんな事を考えている私を置いて、話題は『何故魔王が、彼女をイジメていた連中を殺害していないのか?』という方向に進んでいた。

 話を聞いていると、当時彼女だけではなく、彼女の姉である魔王にまで被害が及んでいたようだった。

 それを考えれば、確かにあの連中が無事だったのは不思議でしょうがない。

 もしかしたら私が先に、精神攻撃魔法で連中の心をボロボロにしたから、魔王は手を出す事がなく……


「何でもかんでも『殺す』か『殺さないか』で分類するとか物騒だなお前等……私だって大人なんだ、分別はわきまえてるよ。ちゃんと平和的に精神を追い詰める程度でやめてるっての」


 ……え?

 『精神を追い詰める』?

 私だけじゃなくて、魔王もあの連中を精神攻撃魔法で追い詰めていたの?

 私の精神攻撃が予想以上に効果があると思っていたのは、もしかして魔王と同時進行で精神攻撃をしていたから?

 じゃあ……私がやっていた事は……


 魔王には、復讐するだけの権利があるのだと思う。

 でも……私は?


 誰もあの連中を裁けないのなら、と偽善者ぶって……ただ力を得ただけの加害者が、同じような立場の弱い方の加害者を攻撃していただけ?


 倒した魔法少女を蘇生させている魔王の性格上、たぶんある程度のところで攻撃を止めていただろう。

 それを私が横入りして、追い打ちをかけ、連中の精神を壊すほどにまで追い詰めて……


 私がやったのは「人一人の人生を狂わせた罰だ」と言って、その連中の人生を狂わせる、という説得力の欠片も無い事なのだ。


 私は何てとんでもない事をしてしまっていたのだろう。

 彼女のために、とか勝手な言い訳まで用意して、他人の人生を滅茶苦茶にしといて平然としていたの?


 「精神を追い詰めた」と暴露した魔王は、他の3人から非難されていた。

 ただ、その非難は、魔王ではなく私に刺さってきた。

 私は、知らずにやってしまった過ちに気付き冷や汗が止まらなかった。呼吸も落ち着かない。何も考えずに叫びだした衝動を抑えるのに必死だった。


「私が復讐したのは、私にまで危害を加えて来た奴等だけだからな……少なくとも真衣ちゃんはそこに加わってなかったから何もしてねぇよ……なぁ、そうだよな真衣ちゃん?」


 突然魔王から話を振られる。

 そうだ、私はこの時魔王には何もされていない。私は加害者の側なのだから……


「は……はい……何も……されてない……です」


 咄嗟に返答するも、動揺が激しすぎて上手く喋る事ができなかった。

 というよりも、もうこれ以上口を動かせる自信がなかった。


 また罪を増やしてしまった。

 その現実を理解し、罪悪感に押しつぶされてしまいそうで、上手く思考がまとまらない。


 私を除く4人は何かを話して盛り上がっているようだったが、私の耳は、言葉を言葉として拾う事なく、ただの音としてのみ頭に入ってくるようで、話の内容はさっぱり理解できずにいた。


 私は罪悪感で心が押しつぶされてぐちゃぐちゃになっているのに、死ぬ事もできずに生にしがみついているだけの惨めで醜い矮小な人間だ。

 ここにいる人達のように強い精神力を持っていない。

 それが羨ましく、まぶしく見えても、自分から変わる事ができないほどに弱い。


 そんな私が今、この人達に混じってここにいる事が申し訳なく思えてくるほど惨めな気持ちだった。


 魔王は、今の私の心境を全て見透かしているのだろうか?

 ふと目が合った魔王は、私に哀れみの視線を向けていた……


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