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魔王少女  作者: mizuyuri
第一部
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第十話 異世界から来た戦闘狂

「裕美?こんなとこで何してんの?」


「こんな場所で座っていたら学校遅刻しますよ」


 こういう日に限って何で二人仲良く登校してんだよこいつ等……

 家を出たものの、やはり学校には近づきたくなかったんで、途中にある公園でブランコこいでたら、何故か美咲と幸によって発見されてしまっていた。


「あ~……ちょっと調子悪くてさぁ……休んでんだよ」


「え?じゃあ家帰った方がよくね?歩けるか?肩貸す?」


 あ、そうだよね、そういう反応になるよね


「あのね、今はおうち帰りたくないの。ここにいていい?」


 ちょっと可愛らしく言ってみたのに、幸にゴミを見るような目で見られてしまった。


「馬鹿言ってないで早く学校行きますよ」


「わかった!行く!行くから、代わりにお前等二人は学校休んでくれ!」


「何でだよ!」


 そうだよな、今日起こる予定の事を知らなければそういう反応が普通だよな。


「はぁ……もうわかったよ!普通に学校行くから!行けばいいんだろちくしょうめ!」


 もう観念しよう。

 二人にそろって発見されてる時点で、運命的な何かアレが働いてる感じがあるんで、どう足掻いても逃げられなさそうな気がする。


 美咲に「何で逆切れなんだよ」と文句言われつつ学校へと向かう。


 そして……

 校門での人だかりを見て軽く絶望する。

 ヴィグルの予想大外れじゃん……来るの早ぇよ……


「何だあれ?誰かいる?」


 美咲が興味深々にのぞき込む。


 そこには、コスプレ衣装みたいな服を着た不法侵入オッサンと、それを帰らせようと話しかけている教師、そして、それを遠巻きに眺めている生徒達。


 ふいにオッサンが、教師の腹部に手を伸ばす。


「おい、ヤバイぞあれ……」

「皆逃げろ!!」


 私のつぶやきを聞いて、美咲が即座に叫んだ。

 次の瞬間、教師が吹き飛び、昇降口の扉に激突する。

 衝撃でガラスは全部割れている。


 あ~あ……ありゃ死んだな……


 それを合図に、蜘蛛の子を散らすように逃げ惑う野次馬連中。

 ある者は校門から外へ逃げ出し、またある者は急いで校舎内に駆け込む。

 私は咄嗟に走り、吹き飛ばされた教師に生命維持に必要最低限レベルの蘇生魔法をこっそりとかけ、そのまま校舎内に逃げ込む連中に交じる。


「二人とも後は任せた」


 ボソっとつぶやき、校舎の三階の窓際で野次馬に混じり外を見学する。


 そこには、すっかり人気のなくなった校門そばで、変身済みの幸とオッサンが向き合って立っている。

 ……あれ?美咲どこ行った?

 サーチ魔法を使ってみると、校舎の陰で変身済みの格好で隠れながら立っていた。

 アレか、幸みたいに人前で変身する勇気がなくて隠れて変身したものの、既に出来上がってしまった幸とオッサンのにらみ合いの一触即発の空気に出るに出れなくなって隠れてる感じかな?


 まぁ、幸はともかくとして、美咲も戦う気があるなら私ここにいて大丈夫そうかな?


「あの子誰?」

「ねぇちょっと危なくない?」

「あの子も名誉魔族か何か?」


 周りの外野の声が色々と聞こえてくる。

 あぶねぇ~……あそこに残ってたら私も悪目立ちするとこだった。


「ひょっとして今ニュースで話題になってるビル破壊の犯人ですか?アナタ何者ですか?」


 オッサンに話しかけている幸。

 もちろん魔法で音を拾っているので私は聞きとれているが、他の見学者は現場と離れすぎていて、声は聞こえていない。


 幸の問いかけを無視して、オッサンは問答無用で、魔力を込めたコブシで幸に殴りかかる。

 幸はそれをかわしつつ炎を纏ったコブシで掌底をオッサンの顔面向かって放つ。

 オッサンもそれをブリッジするよな形で器用にかわす。

 バランスの崩れたオッサンを追撃するように、幸はしつこくオッサンの顔面を狙って掌底を放つ。

 オッサンはそれすらもかわしつつ、器用に倒れながら幸に足払いを放つ。

 足払いを受けた幸は、倒れそうになるものの、一回転して持ちこたえ、そのままバックステップで一旦距離をとる。


 その一瞬の戦闘を見て野次馬達は「すごぉい!」「格好いい!」等々とどよめいている。


「ふむ……昨日この場所に大きな魔力反応があったので来てみたのだが……お前がそうなのか?思ったほどではないようだが……それとも本気を出してないのか?」


「ここに大きな魔力反応……?」


 幸は、私の方へと視線を向ける。

 おい、こっち見るな!バレるだろ!


「そうですね、アナタの言うソレは私ではないと思います。ただ、その発言は負けた時恥ずかしくなると思うので控えた方がいいですよ」


 幸……お前、馬鹿にされて悔しいのはわかるけど、相手を煽るほどの実力ないんだから、お前が控えとけよ……


「面白い小娘だ……では我に勝ってみせよ!」


 そう言ってオッサンは再び、魔力を込めたコブシで幸に殴りかかる。

 だが、速さが先程の比ではない。

 幸も、今回は避けられないと悟ったのか、両手でガードを固め、さらに魔力障壁が見えるレベルでの魔力全振りで防壁魔法を使う。

 幸の判断は間違ってはいなかった。問題はオッサンの魔力と幸の魔力の差だ。

 オッサンのコブシは、幸の防壁を砕き、そのまま幸を殴り飛ばす。

 幸は数メートル吹っ飛ばされたものの、何とか起き上がり敵意むき出しの視線をオッサンに向ける。


「あ~……ダメだな、ありゃ両腕完全に骨が折れてるな」


 私がボソっと言った発言を聞いて、再度野次馬達が騒ぎ出す。

 しまった……口に出さなきゃよかった。


「昨日戦った連中もそうだったが、何故魔力を別の何かに変換させて攻撃しようとするのだ?魔力を込めた単純な暴力こそが一番効率がいいと我は思うのだがな」


 両腕をぶらーんと下ろして、完全にノーガード状態の幸へと近づきながらオッサンが語り掛ける。


「このようにな!」


 ガードできない幸の腹部に掌底を放つ。

 一応、幸も防壁魔法を使いはしたが、完全に焼け石に水状態だった。

 吐血しながら吹っ飛ばされた幸は、今度は起き上がる事ができずに、そのままむせ返り血を吐きながら、その場でのたうち回った。


「両腕が使えなくなっても戦意を失わなかったのは褒めてやるが、魔王と呼ばれた我を相手にするには実力が足りなかったようだな」


 ん?魔王?


「ま……まお……う……?」


 幸も反応したのか、血と涙でぐちゃぐちゃになった顔でオッサンを睨みつけている。


「我がいた世界で、強者を求めて戦い続けていたら、いつの間にかそう呼ばれるようになっていた、というだけの話だ。もっとも、その世界ではもう我を楽しませる者がいなくなってしまったので、こちらの世界に来たのだがな」


 何となく状況がわかったよう気がする。

 つまるところ、今まで一切関与した事なかった世界から、ただの戦闘狂が単身乗り込んできただけって話かな?

 ヴィグルが、侵略がどうこう言ってたから色々と警戒してたけど、そこまでの事でもなかったのね。


「……この……世界……ま…おう……アナ…タ……」


「もう何を言っているのかわからんな、今楽にしてやるから安心しろ」


 そう言うとオッサンはコブシを振り上げる。

 すると、その振り上げたコブシに魔力でできた矢が突き刺さる。

 オッサンは咄嗟にバックステップで幸のそばを離れ、矢が飛んできた方に視線を向ける。

 そこには、白い衣装に身を包み太陽をバックに屋上に立つ美咲がいた。


 アイツ……幸が両腕折れた時助けなかったから何でかと思ったら……

 カッコつけて登場したいからって屋上でスタンバってる間に助けるタイミング逃して、ギリギリになったな。

 野次馬達から再びどよめきが起こる。


 美咲は屋上から飛び降りると、そのままゆっくりとオッサンの方へと近づいていく。


「その子が言おうとしてた事を代わりにアタシが言ってあげるよ『この世界にいる魔王はアンタじゃ相手にならないくらい強いよ』ってね」


「お前がその『魔王』だとでも?」


「いや、アタシはその魔王に瞬殺されただけの魔法少女ってやつ?実際オッサンより弱いかもしれないしね」


「なら何故わざわざ出てきた?」


「そんなの……友達助けるために決まってんだろ!来な!つぎはアタシが相手になってやるよ!」


 アイツ……一瞬こっちチラ見しやがったな。

 見学決め込んでる私への当てつけか?


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