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魔王少女  作者: mizuyuri
第四部
124/252

番外編 ~魔王軍四天王総括~

 私がこの世界で生活するようになって約一月が経った。

 手探りではあるが、魔王軍での仕事もやっと慣れてきた感じではある。

 やはり私は、自らがトップに立つよりは、誰かの下に着いて、与えられた任務だけをこなす方が様になっているような気がする。

 まぁ、あちらの世界にいた時も、お飾りのトップというだけで、やってる事は常に誰かの言いなりに動いていただけなので、根っからの労働者体質なのだろう。


 そんなある日、変則で与えられる休日を自室で満喫していたところ、社用携帯が鳴り響いた。

 せっかくの休日ではあるため、正直出たくはなかったのだが、魔王軍には、この世界で普通に暮らしていくための基盤を与えてもらったという恩もある。

 そのうえ、一応新人ではあるが立場は管理職であるため、電話に出ないわけにはいかなかったため、仕方なく通話ボタンを押す。


「もしもし……エフィだ。何かあったのかい?」


 若干声に不機嫌さが出てしまったかもしれない……無意識とはいえ、今後は少し気を付けなくてはならないな。


『あ、女神様。お休みのところ申し訳ありません』


 電話の相手はステラだった。

 ん?でもステラだったら念話の魔法が使えたハズだから、電話じゃなくて、直接念話を飛ばしてくればいいだろうに……

 仕事中は社用電話を使わなくてはならない、とかいう固定概念でもあるのだろうか?

 ステラは、根がマジメなので、あながちそうなのかもしれない。


『実は今日、サクラさんが出社してきてなくて……サクラさんから連絡とか頂いてますか?もしくは、サクラさんに何か社外での仕事を与えたとかは?』


 サクラが?

 でも、うん……マオウ・サマに命を狙われていた時、私をボディーガードしてくれていた恩があるから、あまり声を大にして言うのが憚れるのだが……一緒に働いていて、あの子の仕事に関してのポンコツっぷりを思い知っているため、無断欠勤と聞いても「あ~……そっか。いつかはやると思った」くらいしか感想が出てこない。

 いや、まじめに仕事してくれようとしてるのはわかる。わかるんだ。でも……何というか、思わず「何で!?」と言いたくなる事をやらかすというか。

 たぶん本人は気付いていないのだろうけど……


 ああ、えっと、とにかく何だ……


「いや、サクラからは何も連絡も受けていないし、仕事も与えていない……おそらく無断欠勤だと思うよ」


『そうですか……』


 少し残念そうな口調でステラがつぶやく。

 サクラは何だかんだで面倒見がいいので、周りからは意外と好かれており、ステラもその内の一人なので、サクラがいなくて、少しがっかりしているのだろう。

 そう、何故その面倒見の良さを仕事に活かせないのかと言ってやりたくなるくらいに……


『それと女神様。今日は絵梨佳さんも見ていないのですけど何かご存じですか?』


 絵梨佳も?……でもまぁ、あの2人がいなくても仕事は問題なく回るだろう。


「絵梨佳に関しても何も聞いていないね……うん、では散歩がてら少し探してみよう」


 変身しないと魔力を持てない絵梨佳はともかく、サクラは常時魔力を持っている。少し辺りをフラフラして、私のサーチ内に入るようだったら、一言注意してもいいだろう。

 魔力の無い絵梨佳は……まぁマオウ・サマが何とかするだろう。そもそもで妹らしいので、もしかしたら絵梨佳はマオウ・サマと一緒にいる可能性もある。


『今日はお休みなのに申し訳ありません……よろしくお願いします』


 本当に申し訳なさそうにそう言って電話を切るステラ。


 さて、それでは言った手前、サクラを探さなくてはならないね……

 昼ごはんには少しだけ早い時間ではあるけれど、フラフラと散歩して時間を潰しながら、昼食を食べに行くのも悪くはないかもしれない。


 玄関で靴を履きながら、一度サーチ魔法を使ってみる。

 私のサーチ範囲ギリギリの位置ではあるが、サクラの魔力反応があった。

 うん、とりあえずはその方角に向かって散歩していこう。


 そんな気楽な感じに考えながら向かった目的地には、何故かサクラはいなく、絵梨佳が一人ベンチに腰掛けていた。

 サーチ魔法を使ったのは家を出る時の一度だけなので、時間がたてば対象が移動するだろうというのはわかる。ただ、サクラがいた場所に絵梨佳が一人でいる理由に関してはよくわからない。


「こんな場所で奇遇だね。私の事は覚えているかい?……サクラとは一緒ではないのかい?」


 わからない事は聞けばいい、とばかりに絵梨佳へと話しかける。


「あ、えっと……エフィさん、ですよね。サクラさんは……今、その辺でお弁当買ってくるから待ってろって……」


 なるほど、やはり2人は一緒にいたのか……それにしても「お弁当を買ってくる」か……こんな寒い場所にいないで、食事なら別の場所でとればいいものを……ここを動けない理由でも何かあるのだろうか?


「あの……ごめんなさい。今日、お仕事無断でお休みしてしまって……」


 何とも申し訳なさそうに謝罪してくる絵梨佳。まぁ直接の上長ではないとはいえ、私は彼女の上司にあたるわけだからな、無断欠勤を咎めに来たと思われているのかもしれない。


「私は今日は非番でね、公私は混同しない事にしているんだ。休んだ事に関して私に謝る事はないよ。それに反省している事に対して、とやかく言う気もないよ。ただ、そうだね……ステラが心配していたようだから、謝罪は彼女にしてあげるといい」


 私がそう言うと、絵梨佳は少しほっとしたような表情になる。


「それはそうと、仕事を無断欠勤してまで、こんな場所で何をやっているんだい?」


 絵梨佳は本来は死んだ事になっているので、無暗な外出は控えるようにと、ヴィグルさんよりお達しが出ている。それなのに、こんな場所で一人…………ん?ちょっと待てよ?

 違う!一人じゃない!!?サクラも一緒だったハズ!?外出控えろのお達しはサクラも知っているハズなのに、何をこんな場所に対象と行動を共にした挙句、一人で放置させてる!?またか!?サクラのポンコツっぷりがまた発揮されたのか!!?


「あの……実は私、魔王さんと戦いたいって思ってて……それで、サクラさんに相談したら、じゃあ今から行くぞって事になって……」


 事情を説明しだす絵梨佳。

 ってやっぱりサクラのポンコツっぷりが発揮されてたのか!?


 それにしても『戦いたい』か……前に会った時もマオウ・サマに恨みを持っていたようだったけど……仲が悪い姉妹なのだろうか?


「今は、お姉ちゃんが、魔王さんを呼んでくるって事になっていて、待っているところなんです」


「ん?『呼んでくる』?マオウ・サマは君の姉じゃないのかい?」


 思わず考えた事が口からもれる。

 その言葉を聞いて絵梨佳は、絶句しているようだった……あれ?何かまずい事言ったかな?


「魔王さんが……お姉ちゃん?」


 もしかして気付いてなかったのだろうか?姿は違っていても、声は同じだから、わかっているものだとばかり思っていたのだけれど。


「じゃあ……今まで皆にヒドイ事してたのって……お姉ちゃんなの?」


 ああ、この反応は本気で気付いてなかったのかな?


「ヒドイと言っても、それは必要悪だと思うがね」


 私が言った事に不思議そうな顔をする絵梨佳。


「マオウ・サマが力を振りかざしているからこそ、今の平和が成り立っているのさ。マオウ・サマが絶対的な力で君臨していなければ、他の力ある者達が好き勝手な事をして、今頃はヒドイ情勢になっていたと思うよ」


 そう……それは、私がいた世界のように……


「たまに行き過ぎてる事はあるかもしれないが、それで世界の秩序が乱れるような事をしでかすわけでもない」


 友人達の暴言を受けても、ある程度は我慢できてはいたので、そこまでヒドイ狂犬っぷりではないだろう。


「でも、魔王さ……お姉ちゃんに、ヒドイ扱いを……イジメを受けてる人も……」


「イジメと強権は違うよ。マオウ・サマは向かってくる敵を返り討ちにしたり、平和に必要な暴力を振るう事はあっても、特定個人をいたぶったりする事はないよ」


 ……たぶんだけど。


 絵梨佳はすっかり黙り込んでしまい、今にも泣き出しそうな表情になっていた。


「それじゃあ私は散歩の途中なんでもう行くよ……サクラが戻ってきたら、無断欠勤は程々に、と伝えといてくれるかい」


 絵梨佳は黙ったまま、ただゆっくりと頷くだけだった。

 うん、気まずい雰囲気を作ってしまった時は、早々に立ち去るのがいいだろう。

 私は絵梨佳へと軽く手を上げ歩き出す。


 う~ん……軽くフォローはしたつもりだけど、何か余計な事をしてしまったのだろうか私……


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[一言] オマエノシワザダダノカ
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