第十一話 真衣ちゃんの叫び
沈黙。
夕方の町の音ってこんなにうるさかったっけ?と思うくらいの沈黙が訪れている。
っていうか、ココってメイン通りから一本奥に入った、人通りの少ない道だぞ!何で一本ズレた通りの音を拾ってくるほど静まり返ってんだよ。
絵梨佳でも真衣ちゃんでもどっちでもいいから何か喋りだせよ!?
何なら私が口火を切ってやろうか?完全に部外者だぞ私!そんな私が喋り出しちゃっていいのかオイ?
「あ~……えっと、絵梨佳……この子はお前の知り合いか?」
何とも当たり障りのない言葉が口から出る。
いや、でもしょうがねぇだろ?これ以外に私が言えるセリフなんてないだろ!?
「えっと……たぶん。同じクラス……じゃなくて、中学の時の同級生の真衣……だよね?」
何というか微妙な答えだな。
でもまぁしゃあないか。蘇生したばかりの絵梨佳からしてみたら、つい数日前まで学校通ってたって感覚なんだろうし……実際は4年経過してるけど、絵梨佳の記憶には4年間の記憶は存在していないわけだしな。
ってかやっぱり中学の時の同級生か。
しかも同じクラスだったっぽいから、確実に絵梨佳イジメ案件にからんでる奴なんだろうな……
さて、この場合、姉としてはどういう態度で対応するべきなのだろうか?
何もなかったように大人な対応?それとも「おうおう!テメェがウチの大事な妹イジメてやがったのかゴラ!いてまうぞワレ!」とかキレてみた方がいいのだろうか?
まぁ当の本人である真衣ちゃんは、青い顔して冷や汗たらしながら立ち尽くしてる。
そりゃあそうか……4年前に自分がイジメた結果、自殺をしてしまったクラスメイトが、死んだ時と変わらない姿で立っていれば怖いよね。
「ご、ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……ごめんなさい……許して絵梨佳……」
ブツブツと言いながら後ずさりしていく真衣ちゃん。
「真衣、落ち着いて。別に私、皆に復讐したいなんて思ってないから」
それ本気で言ってんのか絵梨佳?私だったら、魔法って力を手に入れて蘇ったんだから、相手の人生を軽く滅茶苦茶にしてやろう、って気分になるけどなぁ……
まぁともかくそんな事を言いながら、一歩下がった真衣ちゃんに向かって一歩近づいて行く。
でも絵梨佳……その近づいて行く行為は逆効果だと思うぞ。
「ごめんなさい……ごめんなさい!来ないで、こっち来ないで絵梨佳ぁ!!」
案の定ビビりまくって泣き叫ぶようにして魔法少女へと変身する真衣ちゃん。
……ん?変身!?
そこにはビビりまくった状態のまま、青い髪にヒラヒラの衣装に身を包んで真衣ちゃんと思われる魔法少女が立っていた。
え?真衣ちゃん魔法少女だったの?マジで?世間は狭いなぁ。
そういや見た事ある気がするぞ。
何人目だったかは忘れたけど、自分の体が腐り落ちていく幻覚を永久ループで見せ続けたら7ループ目で心が折れて舌噛んで自殺した魔法少女だ!
今考えてみると因果なもんだな。
イジメで追い詰めて自殺させたヤツの姉にいたぶられて、自ら死を選ぶハメになる結果になってたって事だよな。
まぁこの真衣ちゃんの場合はすぐに蘇生させてるんだけどね。
「ああああああ~~!!」
真衣ちゃんは、混乱して泣き叫びながら、右手に魔力を集めだす。
あ、これマズイな。
魔力自体はそんなに強い感じじゃないけど、ソレをぶっ放した攻撃だと、生身で耐えるのはキツイだろう。
死にはしないけど、確実に病院送りだろう。絵梨佳は保険証とかないから医療費がダイレクトアタックしてくるから勘弁してほしい……いや、まぁ魔法で回復させればいいんだけどね。
「変身しろ絵梨佳!」
攻撃が飛んできても、自動防壁でどうにでもなる私はおいといて、生身のままじゃマズイ絵梨佳に変身するように促す。
絵梨佳は、私が言うのとほぼ同時に変身して、真衣ちゃんへと駆け出す。
「えっ!!?」
絵梨佳が魔法少女に変身したのを見て、さらに驚きを増した真衣ちゃんだったが、自分の方へと向かってくる絵梨佳へと咄嗟に溜めていた魔力を炎へと変えて、絵梨佳へと放つ。
何だろう?アンデット系モンスターには炎系の魔法が効果的とかいうゲーム脳持ちなのかな真衣ちゃん?
ともかく、そんな魔法を、絵梨佳は防壁で弾きつつ、そのまま真衣ちゃんの目の前まで来ると、手を伸ばして真衣ちゃんの頭を右手で鷲掴みする。
「いやぁぁ!?何っコレ!?何で?何で!!?」
真衣ちゃんは頭を鷲掴みされたまま何やら叫びだしながら、魔力も何も纏っていない状態で、絵梨佳を何度も殴りつける。
もちろん、ただの物理攻撃なんて、魔力で防壁張ってる絵梨佳に通じるハズもなく無意味に終わる。
なるほど……
魔力の流れをよく見てみると、絵梨佳のやつ、相手に直接触れる事で、真衣ちゃんの魔力回路に干渉して、魔力が練れないようにしてるのか。
だから真衣ちゃん、突然魔力が自在に操れなくなって大混乱して、なりふり構わずに絵梨佳を殴りつけてたってわけね。
私が使う反魔法の魔法ほどじゃないにしても、相手の魔法を無力化するのにこういう方法もあるのか……覚えておこう。使うかどうかはわからないけど。
「いやあぁぁ!ごめんなさい!ごめんなさい!!助けて……助けてぇ!」
涙どころか鼻水まで垂らして叫ぶ真衣ちゃん。必死すぎだろ……可愛い顔が台無しだ。
「落ち着いて真衣……私のお願いを聞いてくれたら、いくらでも助けてあげるから……ね?」
「な、何でもする!私……何でもするから!!お願いだから助けて!!」
絵梨佳の言葉に間髪入れずに応える真衣ちゃん。
でも女の子が何も考えずに「何でもする」なんて言っちゃダメだろ。どんなエロい要求されるかわからんぞ。……絵梨佳はやらないだろうけど、主に私からね。
「私達、魔王さんに戦いを挑もうとしているの……それに協力してくれるなら助けてあげてもいいよ」
って何を言いだすんだ絵梨佳!?
真衣ちゃんが魔法少女だってわかったから、戦力になると思って勧誘してるのか?
でも絵梨佳……『私達』って何?もしかして、魔王への反乱軍に私も含まれてるの?
いや、さすがに『魔王を倒すための反乱軍』に魔王当人がいるのはマズイでしょ?
「ま……まお、う?」
絵梨佳の言葉を聞いて、途端に顔が青くなる真衣ちゃん。
「あ……あ、う……ううぅ……」
何かゾンビみたいなうめき声出しはじめたぞ真衣ちゃん……たぶん、もの凄く葛藤してるんだろうなぁ。
今ここで絵梨佳に殺されるか、また魔王に生き地獄を味あわされた後に惨殺されるか……嫌な2択だ。
「いやあああああぁぁぁぁぁーーーー!!!?」
あ、思考放棄して叫びだした。
真衣ちゃんも、どんだけ魔王にトラウマ持ってんだよ?




