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魔王少女  作者: mizuyuri
第四部
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第一話 ペットの名前

「裕美様……私、しばらく帰省してもいいですか?」


 冬休みも終わった通常登校初日。

 学校着くなりいきなり、今にも死にそうな顔した幸が話しかけてくる。


 ってか、コイツ正月中は普通に帰省してなかったか?冬休み終わってすぐに、また帰省するんだったら何でコッチ帰ってきたんだよ?

 いや、そもそもで、何でわざわざ私に報告しに来る?

 ホームシックになったっていうなら止めねぇから、勝手に帰ってろよ。


「そうか、元気でな」


 ツッコミ入れると、色々と面倒臭そうだったので、目を合わせる事もなく、適当に返事をしておく。


「どうした?さっちゃん?何かあった?」


 み~~さ~~き~~……オマエちょっと空気読めよ!?


 微妙にかまってちゃんオーラ出してる幸っていう爆弾の導火線に、何でわざわざ火をつけるような事言ってんだよ!?

 空気読んでスルーした私を少しは見習えよ!?


「うう……実はですね、私が飼っていたペットが亡くなったって、昨日母から連絡がきたんです」


 あ~……コレあれだ。

 本当は実家帰る気なんてサラサラないのに、同情を引いて話を聞いて欲しくて言ってる系の鬱陶しいやつだ。


「いいか幸。人間だろうとペットだろうと生きてるヤツはいずれ必ず死ぬんだ。お前が飼ってたっていうダンゴムシが何年生きたかしらんが、天寿を全うしたんだったら、残されたお前はメソメソせずに前向きに生きる事が、そのダンゴムシの一番の供養になるんだぞ」


「あの……私飼ってたの犬なんですけど……どっからダンゴムシ出てきたんですか?」


 もっともっぽい事言って、さっさと会話を終わらせよとしたのに、どうでもいいツッコミが幸からとんできた。


「そうだぞ裕美。ダンゴムシだって3・4年くらい生きたりするんだぞ。そんだけ一緒にいれば情だって移るだろ」


 知らねぇよ!?

 ダンゴムシうんちくなんてどうだっていいよ。

 ってか勉強できないくせに、何でそんな変な知識持ってんだよ!?

 いや、そもそも会話の論点がズレまくってるだろ?何でダンゴムシの部分掘り下げた?

 馬鹿なのか?知ってたけど、やっぱ馬鹿なのか美咲。


「あ~わかったわかった!で?幸は、そのダンゴムシとの思い出を私達に語りたいとかそういうやつか?」


 とりあえず美咲のせいで、面倒臭い方向に話が進む前に、話題の軌道修正をしておく。


「えっと……ですから私が飼ってたの犬なんですけど……」


 あーー!頭こんがらがってきた!?


「はいはい……犬、犬ね。で?その犬のポチちゃんがどうしたって?」


「私が飼ってた犬は、そんな厚顔無恥で傍若無人みたいなダサい名前じゃありません!!」


 私のセリフを食い気味にクレーム入れてくる幸。


 っていうか『ダサい名前』ってなんだよオイ!?

 異世界人に『ポチ』って名付けた私と、ペットにポチって名前付けた全世界の愛犬家に土下座して謝れ!


「ちなみに、さっちゃんが飼ってた犬って、何て名前なの?」


「ペスです!」


 ……おい!ちょっと待て……ポチもペスも五十歩百歩だろ?

 まぁどっちが50歩で、どっちが100歩かはわからんけど、少なくとも超ドヤ顔で答えるのはどうかと思うぞ?

 やっぱ今すぐ土下座して謝れ幸。


「とりあえず、名前はどうでもいいとして、死因は何だったんだ?事故か?寿命か?」


 ツッコミたい事は山ほどあったが、話が進まないのもいい加減鬱陶しくなってきたので、幸へと質問してみる。


「あ、えっと……老衰です。私が物心つく前くらいにウチに来た子だったので……両親の話ですと、弟ができたって言って、物凄くはしゃいでたらしいです私……まぁ実際に、姉弟(きょうだい)みたいに、ずっと一緒に仲良く暮らしてましたしね」


 そう口にしながら、幸は若干涙ぐんでいた。


「あ~……犬の弟だったら可愛くていいかもなぁ~マジもんの弟とか生意気で鬱陶しいもんだよ、さっちゃん」


 幸の独白に口をはさむ美咲。

 いいよ、いちいち相づちうつみたいに反応しなくて……話が長くなるじゃんかよ。


「美咲さん、弟さんがいらっしゃるんですか?」


「うん、勇貴(いさき)っていう、2個下のヤツなんだけど、最近特に生意気になってきて、ホント鬱陶しいんだよ」


「勇貴……さん?もしかして、ずいぶん前に、私達を騙そうと、美咲さんの妹を騙った時に名乗った名前!?アレって実在してる人の名前名乗ってたんですね」


 幸……お前、なんでそんなどうでもいい事覚えてんだよ?


「そうそう!実は妹じゃなくて、弟の名前だったのだ!」


 美咲も反応すんなよ!いい加減話進めてくれよ……


「あ、そういえば裕美様は兄弟とかはいるんですか?」


「……あ」


「……いねぇよ。一人っ子だ」


 幸の質問に、私の家庭事情を軽く知っている美咲が微妙な反応をするが、私は気にせずに幸の質問に返答する。


「つうか、今は兄弟トークじゃなくてペットトークしてんだろ?早く言いたい事言わねぇと、もう授業始まるぞ」


 変なところで空気を読まない美咲が、気まずそうな空気をかもし出しているので、私は無理矢理に話を戻す。


「ああ!そうでした!では単刀直入に言います!裕美様の蘇生魔法って老衰で亡くなった方にも効果はあるんですか?」


 うん、私に話を聞かせたそうにしてた時点で、何となくソレ聞きたいんだろうなぁ~とは思ってたわ。


「試した事はねぇけど、たぶん老衰は無理だわ……いや、死ぬ直前の状態に戻せるから、もしかしたら生き返るかもしれないけど、またすぐに死ぬ事になると思うぞ」


 外傷とかは治して復活させられるけど、たぶん、すでに死んでる細胞は蘇生の対象外だろう。


「えっと……では再生魔法では?」


「再生魔法は、切断面が記憶している隣接部分を再生し続ける魔法だから、隣接部分の細胞が死滅してたら、結局老衰死した死体が完成するだけだぞ……ちなみにソレに蘇生魔法をかけても、効果は同じだろうな」


 私の返答を聞いて、幸は肩を落とす。


「もしかしたら、とは思ったんですけど……やっぱり裕美様でも無理ですよね……」


 そうつぶやきながら、始業のチャイムが鳴ったため自分の席へと戻っていく幸。


 ……もしかして、コレって幸からの挑戦状か?

 私を挑発するとはいい度胸だなオイ!


 やってやろうじゃねぇか……

 実験しまくって、蘇生魔法と再生魔法を完全分析して強化してやろうじゃねぇか!

 あまり私を甘く見るなよ。

 魔族っていう実験素体を大量に持ってる私に死角はないぞ!


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