男女比9.9対0.1の異常な世界へ転生する事になった件-もっとマシな世界が良かったけれど、特典貰ったから頑張ってみる-
前回のプロローグのみから、少しお話を追加させて頂きました。
なんとなく、感じを掴めるのではないかな、と思っております。
お楽しみ頂けたら嬉しいです。
私の名前は野々村雪29歳独身。
上場企業の受付事務で、張り付けた笑顔で今日も一日頑張った。
同僚から飲みに誘われて、ほいほいとついて行ったら、すでに夜の10時。
もう帰らないと明日に響くという理由で、解散。
「ねぇ雪、なんでアンタはそんなに飲んでも酔わないのよ!」
「小さい頃から男6人兄弟に囲まれて育ったからね。お酒は慣れてるから」
そう、私の兄弟は全員男。
それも母さんが頑張ったせいというか、6人も居る。
全員兄で、私は凄く可愛がられた……なんて事もなく、男兄弟と同じように過ごしてきた。
就職が決まってから、家を出たけれど……女性らしさが全然ないと自覚してる私は、就職してからできた友達が凄く眩しい。
「なんで飲まされ慣れてるのよアンタは……」
と若干呆れられたけど、お父さんが付き合えってしつこいから、飲んでたら自然とそうなったのよね。
しっかりとした足取りで歩道を歩く。
横断歩道の信号が赤になった……のに、止まらず歩く女性が居た。
トラックが近づいているのが見えた。
まずい、これは両方気付いていない!
そう思った瞬間、私は駆けだしていた。
「雪!だめぇ!!」
私は横断歩道を渡っていた女性を突き飛ばし、トラックに弾かれた。
弾かれた瞬間、ああ、これはダメかな……と思った。
「雪!雪!どうしてアンタはいつもそうやって……!この間だって、ほっとけばよかったのに、助けて、また……!」
「ま、い……ごめん、ね……私みたいな、男女の、友達になってくれて……ありが……」
言葉を言いきれずに、瞼を閉じる。
舞の涙を見るのが、辛かったけど……あの女性は、助かったかな?
そう考えるも、私の意識は闇に溶けていった。
「目が覚めたかの?」
そう、優しい声がした。
あれ、私は確か……トラックに突き飛ばされて。
助かった、のかな?
「野々村、雪。享年29歳、もう死んでおるよ」
「そう、ですか。なら、ここは死後の世界なんですね?」
「うむ、そうじゃな。お主は本来死ぬはずではなかったのじゃが……何の因果か、居合わせ助けてしもうた。本来死ぬべき者をのぅ」
その言葉にカチンときた。
「なんですか、それ。本来死ぬべき人なんて居ません!例え神様だって、人の命を好き勝手に奪っていいわけありません!」
「ああ、すまぬな。わしの良い方が悪かった。お嬢ちゃんは優しい子じゃのぅ」
微笑んでそう言ってくれるこの人に、少し冷静になれた。
「本来、ここに来る者は、お主が助けた者じゃった。お主が偶然居合わせ、それを助けたので運命が変わったのじゃよ」
そんな事があるのか。
でも、私が気付かなかったならともかく、気付いた以上、やる事は変わらなかったと思う。
「ふむ……お主は女性でありながら、男前じゃのう。むしろ、お主で良かったかもしれぬな」
何か一人でブツブツ言ってるけど、私はこの後どうなるんだろう。
死んだなら、あの世とやらに行くのだろうか。
「おっと、自己紹介が遅れたの。わしは……そうじゃな、お主の世界の言語で、神様と言うのが理解しやすいかの?」
「そうなんですか。それで神様、私はこの後どうなるんですか?」
「お主、肝が据わりすぎておらぬか?いや、それも好都合なんじゃが……。うむ、お主には、二つの道がある」
余計な口を挟まず、聞く事にする。
疑問は今の時点であるけど、邪魔をして良い事は無い、お父さんがそうだった。
「まず一つ、この世界とは違う、異世界で今の記憶を持ち、赤子から新たに生きる道。そしてもう一つは、このまま輪廻転生を経て、記憶を失い元の世界の何かに生まれ変わる」
「赤子から……つまり、転生という事ですか。その異世界って、どんな世界なんですか?」
「……うむ、非常に言い難いのじゃが」
「戦争とかが頻繁に起こってるとか、世紀末のモヒカンヒャッハーみたいな人がウロウロしてる世界とかですか?」
「いやお主、そんな世界行きたいと思うのか?」
「まぁ、ちょっと辞退したいですけど、記憶を持ったまま生きれるなら、生きたいと思いますよ」
その言葉ににっこりとする神様。
「なら大丈夫じゃ。その世界はの、男女比9.9対0.1の世界での、異常なのじゃよ。お主にはその異常を解決して貰いたいのじゃ」
「全力でお断りします」
「何故じゃ!?さっきの例の世界よりマシじゃろ!?」
って神様が慌ててくるけど、嫌なものは嫌だよ。
「なんで男が9.9の世界で生きないといけないんですか。私子供作りで死ぬ未来しか見えないじゃないですか!その世界で成長したら、子供には見せられない世界になっちゃいますよ!」
「そこは安心してよいぞ?例えるならそうじゃな……馬車でお主と男が2人の計3人で移動している時に、野党に襲われたとしよう」
ああ、男は殺せ、女はってやつね。
「その時の野党のセリフを言うならば、こうじゃ」
「『なんだ、女がいるじゃねぇか、ハズレかよ……おい!男二人は縛って連れて行け!女は道にでも捨てておけ』」
…………想像を超えていると、声も出ないって本当なんだ。
「という感じじゃな。別に女性が冷遇されておるわけではないんじゃが、男は男にしか興味が湧かないのじゃよ、困った事に」
それ、一部の人は嬉しいかもしれないけど、私はオエーって思う方なんですけど。
美男子と美男子の二次元は好きだったけどね、乙女ゲームも結構やったもの。
結局ヒロインと結ばれるから、ヒロインに自分を重ねられない私としては、寝取られてる感じで最後悲しかったんだけど。
これ私だけかしら?
話がそれてしまった。
「それ、子供とかどうしてるんですか?子供だけ女性が生んでるとか、そういうのですか?」
「男が子供を産めないのはお主の世界だけじゃ」
「…………」
生きてるかも分からない脳がショック死したかと思った。
え、男が子供産むの?生物学的にありえるの?
「えっと……それ、男女の意味って……」
「その世界ではあまりないのぅ」
「よし、決めました。私は輪廻転生します。綺麗さっぱり記憶も消してくださいお願いします」
私は生きるのを諦めた。
「な、何故じゃ!争いもない、平和な世界じゃぞ!?」
「そんな気持ち悪い世界で生きたくないわー!!」
私は心の底から叫んだ。
「ふ、普通は喜んで転生やら召喚やらされるじゃろ!?」
「そんな世界、こっちから願い下げです!!」
「ほ、ほら、その世界で楽に生きられるように、いくらか特典をつけてやるから!の?の!?」
この神様、凄い必死である。
「だったらまず、転生はやめてください。そんな世界で、男の人からその、……飲むなんて、死んじゃいます」
切実な問題です。
私は確実に廃人になっちゃう気がします。
「うむ、では希望はあるかの?」
「私はその世界で、男性が異常繁殖してる原因を見つけて、対処しないといけないんですよね?」
「う、うむ、そうしてくれると助かるのぅ」
「では、召喚にしてください。それも、肉体は何かしてても怪しまれないような年齢に……そうですね、15歳くらいでお願いします。見た目も綺麗より、可愛いって思える感じにしてください」
「よ、よく分からんが、お主のイメージ通りに創ると約束しよう」
まぁ、男が男を好きになる世界で、可愛い必要があるかは疑問だけど、普通の恋愛感を覚えさせるには、私にドキドキしてくれないと困るものね。
「後は、これ私の世界でのラノベっていう本で色々あった知識なんですけど、できますかね?」
そう言って、アイテムボックスやらチートの話を神様に言ったら、大体可能とのお返事を頂いた。
「じゃが、そこまでしてしまうと女神の領域じゃからの。その中から、3つほど選ぶがよい。わしからお願いするのじゃから、特別じゃ」
そう言われたので、迷ったけど……。
「それじゃ、まず絶対に必須のアイテムボックスを使えるようにしてください。後は不死はいらないので、不老にしてもらっても良いですか?」
「ふむ、構わぬが、何故不死は要らぬのじゃ?もちろん危険な世界ではないが、永遠に生きられるのは魅力ではないか?」
神様が不思議そうに聞いてくるけど、だってね……。
「最初は良いかもしれませんけど、きっと……寂しさで辛くなります。だって、私より先に、仲良くなった人が死んでいくんですよ。それをずっと味わうなんて、体は死ななくても、精神が死んじゃいますよ……」
「そうか、成程のぅ……」
神様は最初に見た時と同じ、優しい声で言ってくれた。
「それで、最後の一つはどうするのじゃ?」
「神様と、こうしてまた話せるようにしてくれませんか?」
その言葉に驚いた顔をする神様。
「よかろう。じゃが、それはむしろわしから授けたい能力でな。それは例外で構わぬよ」
ありゃ、そうなるともう一つか。
正直、アイテムボックスと不老があれば、後はなんとかなるかなぁって思ってたので……あ、大事な事があったよ!
「それじゃ、水とか食べ物を作る力ってもらえたりしませんか?」
そう、その世界に行って、行き倒れとか嫌すぎる。
不老でも、食べれないで死ぬとか情けないじゃない。
「お主は面白い心配をするのぅ。不死ならそもそもその弱点がなくなるのじゃがなぁ。まぁ、良かろう。では、アイテムボックス、不老、創造の力、この3つで良いな?」
「はい!」
なんか最後の3つ目が、違和感を感じたんだけど、この時の私は気にしなかった。
それが、とんでもない力だと気付くのは、後のお話。
「それでは雪、頼んだぞ」
そうニッコリ微笑んだ神様が、段々と見えなくなる。
ああ、これで飛ばされるんだ。
男女比9.9対0.1の、ハチャメチャな世界に……。
ここは……。
目が覚めると、私は白いベッドの上だった。
体を起こし、横を向けば柔らかな陽の日差しが入り込み、室内を明るく照らしている。
木造の家みたいだが、ベッド以外では姿見の大きな鏡と、ベッドの横に小さな机があり、スマホがあった。
うん?スマホ?
そう思った瞬間、スマホからオクラホマミキサーの曲が流れる。
ああ、うん、最初からスマホに入ってる曲設定してたもんね私。
って、このスマホもしかしなくても私のぉ!?
慌てて手に取り、通話ボタンを押す。
「も、もしもし雪ですけど」
「おお雪ちゃん、無事目が覚めたようじゃな」
この声は、神様か。
もしかして、神様と話をする手段って……。
「あの、神様。このスマホ、元の私の世界のものそのままなんですけど……」
「うむ、お主の姿も、その道具も、お主の記憶を元に創ったでの」
「そういう事だったんですね。あ!もしかして、元の世界に掛けたりできるんですか!?」
「残念ながら、それはできぬのじゃ。元の世界のお主は、もう死んでおる。それは、変わらぬでな」
「あ……すみません、神様。無理を言いました」
「よいよい。じゃが、元の世界の情報を得たければ、インターネットじゃったかな?それは使えるはずじゃぞ」
うそ、それは嬉しすぎるんですけど。
「ホントですか!?ありがとうございます神様!」
「うむうむ、他にも何か困った事があれば、わしに気軽に電話を掛けてくると良いからの。その道具は、お主の意思一つで出し入れができるからの」
そう言って、通話が切れる。
でも、元の世界のネットができるなら、これ程嬉しい事はないよ。
ってまぁ、まずは神様からの依頼を達成してからだけどね。
待ってて私の読書タイム。
自由気ままなグータラ生活の為にも、私頑張る!
とりあえず、私の姿を確認しておこうかな。
そう思って、姿見の前に立つ。
そこには、金髪で青い目、なんていう美少女……服も青いドレスに白いフリルが特徴的で……ってこれ、童話のアリスじゃないか!!
可愛すぎるでしょ!こんな美少女元の世界で居たら、トップアイドルになれるわ!
うわぁ、黒いウサ耳もついてるし……ってこれはカチューシャか、驚いた。
軽く微笑んでみたら、鏡に映る私が微笑んだ。
ぐはぁっ!可愛い!!なにこれ、私萌死しちゃうよ!
そうか、神様、私のイメージ通りって言ってたもんね……私の中の可愛いって、大好きだった童話のアリスちゃんだったから、そのまま創ったんだね神様。
あえて言おう神様、グッドジョブです!!
私神様信じる!信じなくても居るんだけど。
さて、何があるか分からないし、外に出る前に水と食料を創れるのか試さないと……。
どうしたら良いのかな?いきなり神様に聞くのもあれだし、とりあえずイメージしてみよう。
水は……やっぱりポ○リスエットのペットボトルをイメージしてみようかな。
目をつむって、手にペットボトルがあるイメージをしてみる。
目を開いたら、なんと手にペットボトルが。
凄い、全然持ってる感じしなかったのに、あったよペットボトルが。
キャップを回して、飲んでみる。
うん、いつもの味だ。
食べ物は……今回はいっか、飲み物出せたし出せるでしょ。
というわけで、外に出る事にした。
チュンチュン……。
小鳥の鳴き声が聞こえる。
すっごい……見渡す限り、草原だよ。
この家、なんて所にあるのよ。
すっごい高い所にあって、遠く離れた位置に村がいくつかあるのが見える。
男だらけの世界、なんだよね。
今の私、すっごく可愛いからなぁ……やっぱり、警戒してしまう。
襲われたら、どうしようって。
はい、そう思っていた時期が私にもありました。
この体、結構体力あるみたいで、村についたのは太陽(この世界にも太陽あるみたいで驚いた)が真上だったので、多分お昼。
村には結構な人が居るけど、私を一瞥しても、特に何も思わないのか、すぐ目を逸らす。
目を逸らすのが、まだ照れてとかなら分かるんだけど、その表情には何も浮かんでなかった。
そして歩いてみて気付いたのが……本当に男しかいない!
いや、一人くらい女性居るんじゃないかと思ったけど、今の所一人も見かけない。
色々と見て回っていたら、とんでもない光景を目にしてしまった。
「マイケル、具合が悪いの?お医者さんに行かなくても大丈夫?」
「大丈夫さハニー。俺の事など気にしないで。今日は君に楽しんで欲しくて、休暇を取ったのだから」
「嬉しいマイケル。でも、無理はしないでね?俺はマイケルが辛い方が嫌だよ?」
「ああ、愛しいハニー。君の優しさに触れたら、具合の悪さなどどこかへ行ってしまったよ。さぁ、いつものレストランへ行こうね。あそこのラーメンは絶品なんだ」
「そうね、マイケルはいつものとんこつかしら?」
「はは、そうだね。でも今日はハニーが好きな塩ラーメンにしようかな」
「まぁ!」
おえぇええぇぇぇぇ……!!
待って、やめて、私耐えられないから!
今の会話が、百歩譲って男と女の会話なら分かる!
いやそれでもラーメンはないから!!
男女でラーメンの話ってそれもう年季いった夫婦の会話!
どう見ても二十歳くらいだよあの人達!
もうマイケルは病院行ってくださいお願いします!
というか女みたいな話し方した男は、ハニーって名前なのか!?
いやそんな事はどうでも良いんだけど、見た目分からないんだよ!
どっちが攻めでどっちが受けとかいうの超えてるよ!
なんなのこの世界!?神様!私の少ないライフポイントがゼロになっちゃうよ!!
二人はすぐそこのレストランに入っていく。
道端の誰にでも目に付くとこであんな会話してんじゃないわ!
でも、周りの人達は、まるで微笑ましいものを見る目だ。
「あのカップル、良いよなぁ。俺もあんな良い男が欲しいわ」
「俺も俺も。あんなに思いやってくれる男は少ないもんなぁ」
「……実は俺、ずっと前からお前の事好きだったんだ。一生大事にする、俺と一緒に居てくれないかジョニー!」
「なっ!?……急すぎるんだよ、バカ。俺も、その……お前の事は好きだったよ。こんな俺で、良いのか?」
「当たり前だろ!」
「っ……リック!」
「「「おめでとう!!」」」
「「皆っ!」」
やぁめぇぇぇてぇえぇぇぇっ!!
もう私無理、耐えられない。
なんでいきなりカップル誕生するの?
なんなのこの世界!?
ジョニーだかリックだか知らないけど、余所でやれぇ!
神様、私にどうしろって言うのよぉぉぉぉ!!
確かに私は男6人の兄が居たけど、あんな変じゃなかったもん!
ちゃんと私に照れてくれたりしたもん!
両手を地面につけ、項垂れる私。
無理だよ、こんな気持ち悪い世界で生きるなんて、私には……。
「お嬢ちゃん、見慣れない人だね。他の村から観光にきたのかい?」
そう、声を掛けてくれる人がいた。
見た感じ、初老の御爺さん。
身なりは凄く良い。
「あ、その……はい」
「そうか、そうか。この村はご存知かもしれんが、なんにもない村でのう。皆畑を耕して、牛を育てて、毎日を暮しておるのじゃ」
なんていうか、文明はあまり発達していない気がする。
「あの、貴方は?」
「おっと、これは失礼。私はこの村の村長をしております、マーダンバッハと申します。ゆっくりしていってくださいのう」
そう言って、去っていく村長。
何しに来たんだろうか。
とりあえず、何をするにしても情報が必要よね。
私はこの世界の事を全く知らない。
いやおかしい事は分かったけど。
図書館とかないかな……と村を見回る事にした。
「村長、怪しい女が一人居ましたけど、どうでしたか?」
「大丈夫じゃ、国の回し者というわけではなさそうじゃった。手筈通り、頼むぞ」
「へい。でも、良いんですか?ジョニーもリックも、ようやく両想いになれたってのに」
「仕方あるまい。税を払うには、金が要る。その金を得るには、売り払うしか無かろうて……なに、命を取られる事はないのじゃ」
「……そうですね。では、準備に行ってまいります村長」
「うむ、頼んだぞ」
小さい本屋さんがあったので、そこで立読みをする事にした。
なんと、この世界の本は全部無料だった。
その場で読む分には、だけど。
自分の物にしたい場合は、お金を払うみたいだ。
私はこの世界のお金なんて全くないので、物凄く有難かった。
そこで、この世界の情報をひたすら調べていった。
結構広いが、国は3つあり、東のラードゥン国、西のイーゴムリン国、北のマライカン国があるみたいだ。
今私が居るのは、ラードゥン国の近くの、ギムリンという村みたいだ。
もう驚かなくなったけど、国王、王妃共に男のようだ、名前的に。
お前らは王妃の妃という漢字について考えろやと言いたい。
ご都合主義というか、全部私には日本語に見えるので、読めたのは助かる。
多分、神様がそう創ってくれたんだろうけど。
歴史を読んでみても、争い等起こっていない。
そういえば、元の世界でも、争いの原因って、女性をめぐっての事が多かった気がする。
それがないから、だろうか。
とりあえず、問題点が全く見つからない。
いや、問題点だらけなんだけど。
これ以上の情報は本屋では手に入りそうになかったので、外に出る。
すると、なにやら村の入り口付近が騒がしい。
野次馬根性で近づいてみると、何やら争いが。
「これで全員か!?まだ男を隠してんじゃねぇだろうな!!」
「こ、これでこの村にいる男は全員だ!早く選んでくれ!」
「本当だろうなぁ!?俺が以前下見に来た時に見た、美男子がいねぇ気がするんだがなぁ?」
その言葉にうっ……と言葉に詰まる男性。
もうやめてくれませんかね、もうホントやめてくれませんかね。
「おい、そこの女!」
あれ、もしかして私?
「お前見かけない顔だな。この村に女なんて居なかった気がするが、丁度良い」
何が丁度良いんですかね。
「お前、こいつらが逃げないようにロープで縛れ。女のお前の力なら、余裕だろ」
なんだ、この世界の女は力が強いという認識なんだろうか。
腹は立つけど、逆らったらそこに正座させられている男性達が危ない、危ないのかな?
見た目、そこに正座させられてる人達のが強そうなんだけど。
でも、なんかなよってしてる。
なんていうんだろう、女みたいな仕草の男というか。
どちらにせよ、私には気持ち悪いだけなんですけど。
とりあえず、言われたとおりに縛る。
でも、すぐ緩めれるように手を加えておいた。
もし助けがあれば、この男性達はすぐ逃げられるはず。
と考えている時に、大きな声が聞こえてきた。
「頭!みつけやした!奥の倉庫に隠れてましたぜ!」
「んー!んー!」
「ジョニー!!」
ロープで縛られた男性が叫ぶ。
口を猿轡でしゃべれなくされている男性は、ジョニーか。
ってどこかで見たと思ったら、あのカップル成立した奴らかーい!
「へへっ、やっぱ居るじゃねぇか、こんな色っぽい男がよぉ」
ゾワゾワゾワ……この男のセリフに、全身から鳥肌が。
「おい女、その美男子をここにつれてこい。お前はどうなろうが知ったこっちゃないが、その美男子には傷一つつけんじゃねぇぞ?」
ブチーン。
私の中の何かが切れた。
ええ、どうして私がこいつらの言い成りにならないといけないのかな?
なんか段々とこの理不尽さに腹が立ってきた。
「おい……?」
なんか殴るモノないかな、そう思った。
そうしたら、手にバールのようなもの、うん、バールだね。
が握られていた。
「なっ!?」
遠慮なく、バールをそいつに向けて振り下ろす。
ゴスゥ!!
「ぎゃぁぁぁぁぁっ!?」
「ふふっ……さっきから聞いていれば、随分偉そうだね?女の力、味わいやがれぇえぇぇ!!」
ガスッ!ゴスッ!ドスゥ!!
「ぎゃっ!ごぉっ!?ぐぅぁっ!!」
何度もバールを叩き付けたら、いつのまにかそいつは気を失っていた。
冷静になったら、とんでもない事しちゃったんじゃ……。
と思ったら、近くに居た男性が、傷を癒し始めた。
「助けてくれて、ありがとうございます。大丈夫、こんな奴を殺して、貴女を前科者になんてさせませんよ。必ず助けますから、安心してください」
そう微笑む男性に、やっと普通の人が居た……なんて思っていたら。
「俺も手伝うよグレン」
「うん、ありがとうマイサン」
二人して頬を染めて治療にあたっている。
前言撤回。
目の前で、男同士でイチャコラすんなぁぁぁ!!
その後、色々お礼を言われたけど、すぐに最初の家に戻って、神様に電話した。
家に着いた時には暗くなっていたので、もう夜だ。
「神様ぁぁぁぁ!もう無理ですぅぅぅ!」
泣きつきました。
だってもぅ、私の精神力はゼロなんです。
「う、うむ、うむ。泣き止んでおくれ雪や。大変じゃったろうと思う。じゃから、応援にもう1人送る事にしたのじゃ」
「え、もう1人?」
「お主も良く知っておる子じゃよ。桐生舞、と言ったかの?」
「ま、まさか舞が死んだんですか!?」
そんなのって……。
「うむ、自殺、じゃよ。お主を死なせて、自分を責めておった。そして……」
舞……どうして!私は、舞の重荷になんてなりたくなかったのにっ……!
「雪ちゃん、己が取った行動には、何かしらの影響が出るものじゃ。それが、よかれと思ってした事でものぅ」
その言葉に、何も言えない私だった。
「じゃが、これからは……二人でその世界をなんとかしてくれると、嬉しいのぅ」
「舞は、この世界に来ても良いって言ってくれてるんですか?」
「うむ、雪ちゃんが居るなら、生きたいと言っておるよ」
舞……。
私なんかのせいで、舞を死なせてしまった。
謝りたい、そして……今度は、絶対に……!
「神様、私……舞に会いたいです……舞に、会いたい……!」
「うむ、分かった。少し待っていなさい、すぐに送るからの」
そう言って、通話が切れる。
私は目をつむって、ベッドに腰掛けている。
そうして待つ事少し。
「雪……?」
そう、聞こえた。
目を開ける。
「舞、なの?」
「うん、うん……!ごめんね雪、私、助けられなかった!目の前で、貴女を、死なせちゃった!ごめん、ごめんねぇ……!」
そう言って泣き崩れる舞を、私は抱きしめた。
「違うよ、謝らないで。それより、私こそごめんね。死んじゃって……残される人の気持ちを、考えてなかった。本当に、ごめんなさい舞……!」
「ううん、謝るのは私だよ雪っ!!」
お互いに泣きながら、その日は眠りについてしまった。
そして、翌朝。
「舞、大丈夫?」
「うん、もう大丈夫。死んだら異世界になんて、ラノベまんまの展開になるとは思ってなかったけどね」
そう言って笑う舞。
というか、舞も凄く可愛らしい。
「っていうか、雪、アリスだよねそれ。超可愛いんですけど」
私はその言葉に感動してしまった。
だって、この世界にきてまだ二日目だけど、こんなに可愛いのに、誰にも可愛いって言われなかったんだもん。
「舞っ!!」
だから、感極まって抱きついても、仕方ないじゃない?
「わ、わ!?雪、そんなに可愛いのに抱きつかれたらドキドキするんだけど!?」
もはやその言葉も嬉しい。
「舞!舞ぃぃ!」
「っていい加減暑苦しいわ!!」
ズビシ!
「いたぁ!?」
「もぅ、可愛いけど中身は雪だもんなぁ」
「ひどぃぃ……」
お互いの顔を見合わせて、微笑む。
「舞、私、一人でこの世界を救うのは無理だと昨日思ったの。でも、舞が居るなら、私頑張れるよ」
「ま、要は私達に惚れさせれば良いのよね?大船に乗ったつもりで、任せなさい雪!」
「うん!」
こうして、今度は舞と一緒に、この異常な世界を変えていく事になった。
前途多難だけど、私は一人じゃなくなった。
だから、頑張れると思う。
とりあえず、昨日の村に舞と一緒に行こうと思う。
さぁ、頑張るぞー!
楽しんで頂けたでしょうか。
なんとなく、書いてみたくなったお話です。
プロローグのみだと続きが気になりすぎる、という声を聴いたので、少し増量してお届け致しました。
お読みくださりありがとうございました。