表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
22/61

小さい頃から繰り返し見る悪夢。

 グロ、流血注意!少しエグめです。

 苦手な人は読み飛ばしてください。

 大きな手が、鈍く光るのこぎりを振り下ろす。


 ザリッ! という感覚がして、首に走る激痛。

 ブチブチと肉が切断されて行く感触に、首から熱い液体が溢れ出て行く。

 痛みに泣き叫ぶ声は、声にならない。

 ごぽりとせり上がって来る血が口の中に溢れ、ひゅーひゅーと掠れた笛のような音が漏れるだけ。

 ガッとその刃が骨に当たるが、構わずにゴリゴリと刃が上下して、骨が削られて行く。


 ああ、首が斬られて・・・


 冷たい雨の中、打ち捨てられる。


 ・・・・・・・・・

 ・・・・・・

 ・・・


「っ!? ・・・ハッ、ハッ・・・」


 ドクドクとうるさい鼓動。

 思わず首に触れると、冷たい汗に濡れているだけだった。これは血じゃないし、痛くもない。


「夢…か。いつもの・・・」


 いつもよりもざらついた自分の声が気に障る。


 そう。あれは夢だ。

 大丈夫。落ち着け。


 首は痛くないし、血も出ていない。

 疵痕きずあとは残っているが、首は落ちていない。


「はぁ・・・」


 ゆっくりと、深呼吸をする。


 今は、深夜。ここは、家の中。


 このまま寝直す気にはなれない。


 窓を開け、蒼い夜空を見上げる。


 夜空は暗いというのが常識らしいが、オレは夜を暗いとは思わない。

 昔から夜目が利く体質で、星明かりだけでもかなり見通すことができる。

 外から柔らかい月明かりが差す。

 こないだよりも円くなった月が傾く。


 冷たい夜風が身に染みて、さっきの悪夢の余韻よいんを緩やかにさらって行く。


 あれは夢。

 小さい頃から繰り返し見る悪夢。

 覚えていない筈なのに、なぜか物心付く前からずっと見続けている悪い夢。


 本当にあったことではない筈の・・・


 赤ん坊の肉と骨は柔らかい。ゴリゴリと削られるような感触など、しない筈だ。きっと、切り落とそうと思えば、簡単に落ちる。


 だからきっと、あれはオレの作った記憶なんだ。


 オレの想像で・・・

 本当にあったことじゃ、ない・・・


 あの、鋸の刃に肉が斬り裂かれ、ブチブチと千切られて行く激痛も、骨が削られて行くようなおぞましい感触も、全部全部・・・


 生々しい感触のする夢を見ただけで、あれが本当にあったことだとは限らない。


 カチャリと、静かにドアが開いた。


「!」


 ぼんやりとした白い顔の・・・


 赤みを帯びた瞳でソイツは、ドアを閉める。


 柔らかく微笑んで腕を広げ、オレを抱き締める。


 ゆっくりと白い顔が寄せられ、そして・・・


 首筋をくすぐる吐息。そっと唇が触れ・・・


「っ・・・」


 そしてオレは・・・


※※※※※※※※※※※※※※※


 パチリと目を覚ますと、朝になっていた。


 窓もドアも、ちゃんと閉まっている。


 夢を、見ていたようだ。


「はぁ・・・」


 だるい。


 首には、いつものように傷跡が残る。


 起きると、軽く目眩めまいがした。


 夢見が悪くて、寝不足のようだ。


 起きるには、まだ少し早い時間。


 もう少しだけ、寝ていよう。

 読んでくださり、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ