コルド! 一緒に帰ろ!
学生達の課題を済ませた図書館からの帰り道。
夕暮れのオレンジ色に染まる石畳を、コルドが一人で歩いていると――――
「コルド! 一緒に帰ろ!」
弾んだ声と同時にぽんと背中が叩かれた。
相手は、ふわふわの金茶の髪に青灰色の瞳、整った顔立ちに、散ったそばかすが愛嬌のある、コルドよりも一つ二つ程年上の子供。
「・・・はぁ」
返事をする前には、既にコルドの手が握られて引っ張られている。
「なに? その嫌そうな顔」
「別に」
その返事がお気に召さないのか、ソバカスの笑顔が一転してムッとした顔になる。
「オレ迎えに来るよか、スノウ迎えに行ってやれよ。ホリィ」
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コイツはすぐ上の兄妹のホリィ。クリスマスシーズンに柊の木の下で見付けられたからホーリーという名前。略してホリィだ。
ちなみに、スノウは一番下の妹。雪の降る日に拾われたからスノウ。
斯くいうオレも、氷雨の降る寒い日に拾われたからコールドでコルドだ。
兄妹達はみんな、院長に名付けられたというが、みんな安直な名前で……院長はいい人だったのだが、如何せんネーミングセンスが無さ過ぎた。
「べ、別にコルドを迎えに来たワケじゃないし! た、偶々通り掛かっただけ!」
慌てたような言葉、赤くなる頬を、冷ややかに見やる。嘘だな、と。
「ふ~ん……」
ホリィは、昔からオレに過干渉気味。
あれこれ理由を付けては、一緒に行動したがる。オレ自体は、自分のことは自分でできるあまり手の掛からない子供であったにもかかわらず、無駄に世話を焼きたがる。
そんなに世話好きなら、一番チビのスノウの世話を焼けばいいのに、と思う。ちょっとウザい。
「だ、だから……一緒に帰ろ? ね?」
なにが、だから、なのかわからない。
しかし、ホリィは構わずにオレの手を引っ張って歩く。ホリィは同年代の子供よりも小柄なクセに、相変わらず力が強い。無駄に身体能力が高いのだ。
とはいえ、オレも同年代の子供よりも小柄な方で……二つ程年上のホリィに引っ張られるのは当然と言える。
「はぁ……」
抵抗しようが、どうせホリィには力では敵わない。面倒なので、結局はそのままついて行くことになる。
「溜息!」
「なんだよ?」
「なんで溜息吐くの!」
「別に」
「もう、コルドはいつもそればっかりなんだからっ。ちゃんと答えてよ」
「……」
面倒というのは勿論あるが、質問の意図自体もよくわからない。答える必要性を感じない。
「また黙るし。なにか言いたいことがあるならちゃんと言ってよ! コルド!」
本当にオレに言いたいことがあるのは、ホリィの方だと思うんだが……
「……なにか」
「違う!」
「じゃあなに? なにが聞きたいワケ?」
なにを聞きたいのか?
「それ、は………」
ホリィはいつもこうだ。
なにかを聞きたそうにして、結局なにが聞きたいのかを明確にしない。ハッキリと言わない。いつも途中で言葉を途切れさせる。
「コルドのバカ……」
そして、不満そうにこう言う。
「……」
「なんか言い返してよ」
拗ねたように見返す青灰色の瞳。
オレは別に、喧嘩がしたいワケじゃない。喧嘩するのは面倒だし。
「……帰んだろ」
立ち止まったホリィを、今度はオレが追い越してその手を引いて歩く。
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