私が妖精に魅了される理由
なぜ妖精に魅了されるのか、理由が判明したので投稿しておきます。
狩猟採集民の思想に、生と死は同じものの異なる側面である、というものがある。これは狼や鹿など彼らの周囲にいる動物から得た考え方だと思われる。動物達は私達を殺すかもしれない。しかし動物達を殺せば生きる糧を得られる。動物達は生と死、運命を司る。人間と動物、対立し決して交わらない両者が融合を果たす。ラスコー洞窟の壁画の鳥頭の人間、エジプト神話に見られる獣頭の神々こそ狩猟に携わった人々の見出した神の姿、人類が創り出した最初期の神の姿に最も近い。
翻って、現代まで伝わる背中に蝶の翅を生やした妖精のイメージが形づくられたのは宮廷文学が栄えた中世でのこと。当然ヨーロッパ全土に農業が定着して久しい時代。アイルランドの神話ではアイルランド人の祖先となるミレー族が島を侵略した際追い出した古代の神々が弱体化し時折我々に見せる小さな姿こそ妖精であると伝える。ここに於いて、アイルランド神話における神から妖精への転身と狩猟採集から農耕へと舵を取ったことで変化した神の姿が奇妙な一致を見せる。ヨーロッパの民間伝承ではしばしば妖精は人間を翻弄する。人間は彼らの気まぐれが収まるまで耐え忍ぶ外ない。妖精は人間が善い行いをすればささやかな褒賞を与え、悪い行いをすれば手酷い罰を与える。子供の道徳教育向けに翻案されてはいるものの生と死の両面を司る恐ろしく古い半人半獣の神の姿が、そこにある。妖精。英語でFairy。その語源はFail。アイルランド語で、運命。