4話
「魔王様、一つお尋ねしてよろしいでしょうか?」
今俺はセリナと共に魔王軍の訓練所へ向かっていた。
その道中遠慮がちにセリナが尋ねる。
俺が頷き許可する。
「領土を奪還するというお考え、私も大賛成ですが、そのまま世界征服してしまわないのですか?」
「・・・」
「も、申し訳ありません!
出過ぎた真似を!」
俺が黙っていたのを怒っていると思ったのか、セリナは慌てて深々頭を下げて謝罪する。
「いや、お前の言うことも分かる。
俺が領土奪還までと命じた理由は、戦いでは魔王軍も無傷とはいかん。当然兵士の疲労も溜まるであろう。
慢心してそのまま次の戦を始めればこちらの被害も無視出来ないものとなる。
俺は俺の部下を無駄に死なせたくないのだ」
それを聞いたセリナの目はまるで恋する乙女、憧れのヒーローに出会った子供、瞳をキラキラさせて頬を興奮で赤らめ祈る様に手を組んでこちらを見ていた。
「私たち下々のことまで配慮される寛大なお心、私が間違っておりました!
私、セリナは一生魔王様に着いて行きます!」
「・・・うむ、苦しゅうない」
正直、今のは建前だ。
本当の理由は前世の人間だった記憶・・・元同族を殲滅するのが嫌なだけなのだ。
そんな一人シリアスになるのが何か悔しく、訓練所で兵士を全員巻き込んで投げ飛ばして八つ当たりしてやった。
反省も後悔もない。