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強過ぎて虚しい魔王様  作者: カン
3/6

2話

食事を終えた俺は自室でのんびり読書をしていた。

ちなみに部屋には俺以外にセリナもいる。


「セリナよ、今は特に用事も無いことだ。

自分の執務をして構わんのだぞ?」


「やるべきことは既に終えておりますので特に問題ありません。また、何かあった場合は部下が知らせに来ます。

お心遣い誠に感謝致します。」


本当に嬉しそうに笑う彼女にこれ以上は何も言えなかった。

しかし気になって読書に集中出来ない。

まだ心の何処かに日本人の感覚が残っているのだろう。

俺は読んでいた『魔族の歴史』を閉じて机の脇に置くと、代わりにトランプを取り出した。


「セリナ、少し気分転換に付き合え」


「え?あ、わかりました」


セリナは椅子を置いて机を挟んで正面に座る。


「ババ抜きは知ってるか?」


「大丈夫です」


セリナがトランプを配り終えると手札のペアを捨てていく。

捨て終えたところで俺はセリナのカードを引いた。


「そういえばセリナ、お前以外の四天王たちは日中何をしておるのだ?」


魔王軍四天王の一人は目の前にいるセリナ、そして他に三人いるのだが、あまり顔を見ない。


「他の三人は新しく誕生された魔王様の宣伝や、統治、人間の軍との戦争で出払っていますが、もうすぐまた戻ってくる予定です」


俺は今は出払っている四天王の三人を思い浮かべていた。

魔術師で錬金術師でもある、生命の真理に触れた呪われたネクロマンサーのガーナ

神に逆らい地に堕ちた天使、ルシファー

変芸自在、物理攻撃なら完全無効のクイーンスライム、リル

全員ある意味チートな力を持つ四天王に、正直人間に負ける気がしない。

これで負ける時は俺の失敗であろう。


「ん?待てセリナ、いつの間にお前の手札が二枚になっている?」


「え?ついさっきですが」


どうやら気を抜き過ぎていたようだ。

この後俺はババを引き当て、セリナは苦笑いしながらも勝利を手にした。

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