2話
食事を終えた俺は自室でのんびり読書をしていた。
ちなみに部屋には俺以外にセリナもいる。
「セリナよ、今は特に用事も無いことだ。
自分の執務をして構わんのだぞ?」
「やるべきことは既に終えておりますので特に問題ありません。また、何かあった場合は部下が知らせに来ます。
お心遣い誠に感謝致します。」
本当に嬉しそうに笑う彼女にこれ以上は何も言えなかった。
しかし気になって読書に集中出来ない。
まだ心の何処かに日本人の感覚が残っているのだろう。
俺は読んでいた『魔族の歴史』を閉じて机の脇に置くと、代わりにトランプを取り出した。
「セリナ、少し気分転換に付き合え」
「え?あ、わかりました」
セリナは椅子を置いて机を挟んで正面に座る。
「ババ抜きは知ってるか?」
「大丈夫です」
セリナがトランプを配り終えると手札のペアを捨てていく。
捨て終えたところで俺はセリナのカードを引いた。
「そういえばセリナ、お前以外の四天王たちは日中何をしておるのだ?」
魔王軍四天王の一人は目の前にいるセリナ、そして他に三人いるのだが、あまり顔を見ない。
「他の三人は新しく誕生された魔王様の宣伝や、統治、人間の軍との戦争で出払っていますが、もうすぐまた戻ってくる予定です」
俺は今は出払っている四天王の三人を思い浮かべていた。
魔術師で錬金術師でもある、生命の真理に触れた呪われたネクロマンサーのガーナ
神に逆らい地に堕ちた天使、ルシファー
変芸自在、物理攻撃なら完全無効のクイーンスライム、リル
全員ある意味チートな力を持つ四天王に、正直人間に負ける気がしない。
これで負ける時は俺の失敗であろう。
「ん?待てセリナ、いつの間にお前の手札が二枚になっている?」
「え?ついさっきですが」
どうやら気を抜き過ぎていたようだ。
この後俺はババを引き当て、セリナは苦笑いしながらも勝利を手にした。