No.18 相容れぬモノ
出されたお題を元に、一週間で書き上げてみよう企画第十八弾!
今回のお題は「壁」「百合」「塔」
12/22 お題が出される
12/25 現在のプロットがなんとなく組まれる
12/27 かなりスローペーススタート
12/28 筆の進みが遅い+リアルでの予定がしばし邪魔をする
12/29 安定の締切ブッチ投稿
今回は胸糞話です。
異星人の言葉を翻訳機に通したイメージで一部の文章を書いています。そんなイメージが伝わりますでしょうか?
地球からワープ航法を利用して約5年の距離にある惑星ビスコンテは、我々地球人類が到着したころにはほぼ焼野原だった。
響くのは人々の怨嗟の声。そこら中に転がる切り傷刺され傷、あるいは黒ずみになった死体。老若男女問わず、都市の大小にかかわらず、その惨劇に巻き込まれていた。
どうやら、この星は元々二つの異なる星が組み合わさってできた星であり、そのお互いを分けるための『壁』が存在していたようだ。それこそ、第二次世界大戦時のドイツのように分けられていたと考えられる。その壁は遥か天空まで伸びている、とその星の人間は言っている。惑星を外から見ると、その『壁』が惑星の直系ほどの高さが有る事がわかる。曰く、神話の時代に建築された壁、なのだとか。
だが現在は『壁』は人や乗り物が通れるような穴が多く開いており、もはや壁としての機能は有していなかった。
この星は、今二つの種族が戦争している。惑星のそれぞれ半分に住む者が、お互いへ攻め込み、戦争は泥沼化している。元々我々地球人はここに資源を求めて、また知的生命体の存在を求めてやってきたが、残念ながらまともな有識者には出会えていない。有識者であった“物”なら見かけたが……それでは意味が無い。
そんな我々だったが、やっとまともに会話ができる有識者を発見し、これを保護した。場所はビスコンテ星の住人曰く『星のへそ』と呼ばれる塔の最上階。『壁』に埋まるように建築された塔の内部に、増築された牢獄にて発見した。
外見は我々地球人にそっくりだが、少々骨格が骨張り、耳が空想小説にあるようにとがっている。また目の瞳は猫科の獣のように縦に割れた光彩を持っている。他には特に差は見受けられない。
翻訳機が機能し、なんとか意思疎通が可能になったため、彼からどうして戦争中なのか、その話を聞くことができた。
曰く……
“この戦争の引き金を引いたのは、他ならぬ私だ。だが戦争を長引かせているのは、相容れない恐怖心と復讐心だ”
以下、彼の語った内容を書き記す。
この星の概念で約一年前、私(この異星人の事だ)は一般的なデゥート(地球で言うラマの様な家畜の事……と思われる)を放牧する仕事をしていました。しかし、ある日デゥートの赤子が群れからはぐれてしまっていたのです。その子を探して、私は『壁』に近寄ることになったのです。
『壁』は古来の神聖な物で有る以前に、それは神話の時代からの“敵”を隔離しているのだと聞いていました。ですから、私は恐怖禁じえなった。だが、愛情いっぱい手塩にかけたデゥートを手放すわけにはいかず、やむを得ず……禁じられている『壁』に近寄ることになったのです。……いえ、そうではないですね。『壁』の近くまで言った時、デゥートなんてどうでもよかった。圧巻でした……はるか雲を突き破り空へ埋まるほど大きな壁、それが地平線まで続いている。それが『壁』なのです。
私たちにとって『壁』の向こうは未知の世界、そして聞き知り及ぶ限り恐ろしい***(翻訳機が適切な単語を発見できない。おそらく意味は「悪魔」か「化け物」だと推測される)がいる世界でした。唯一、『壁』の向うとこちらを繋ぐ境界線が『星のへそ』と呼ばれる塔でした。故に、そこへ近づくことになるとは、当時の私は考えもしませんでした。
デゥートを追って? いえいえ、私の意志で、ここまで来ました。来てしまったんです。今思えば、私は来るべきではなかった。禁断を犯してしまったのです。戦争の火ぶたを切ったのは私です。私の愚かな……愚かな、感情のせいなのです。
話を戻しましょう。私が『壁』へ近寄った時の話です。思わず『壁』に心奪われていた私でしたが、その時女性の歌声が聞こえて来たのです。とてもきれいな……心奪われる蠱惑の歌声でした。そしてすぐにそれが『壁』の向うから聞こえてくると気付きました。私は思わず大声で『壁』へ、その向うに居るのであろう女性へ叫びました。私がここに居ること、私がその歌声に心奪われたこと、私がもっと歌声を聞きたいことを、率直にその声の主に言いました。私の『壁』に対する恐怖心はその時すでになかったのです。いいえ有ったでしょう。ですが、そんなことはどうでも良かった。私の想いを口にしなければ、今伝えねば二度と伝わらない、そう感じたのです。
そこで返ってきたのは、予想通り最初こそ戸惑いの声でした。しかし、彼女もまた冒険心が強かったようで、すぐに「『壁』の向うに居る」という事に興奮を覚えたようでした。様々な質問をされました。家、職業、食事、好きな音楽、好きな食べ物。好きな花……そして****、**、*****(他にも地球には無い言語が並べられており、翻訳機が故障しかける)
ああ、すみません。何か機材の不具合ですか? 申し訳ない。で、どこまで話しましたか……ああ、そうそう。話を軽くしてみて思いました。意外にも私たちの趣味は似ていたようで、すぐに様々な話をするようになりました。ええ、それはもう様々な会話をしましたよ。家族の問題すら話し相談したほどです。そして会話を重ねれば重ねるほど、私は直接彼女に会いたくなりました。そう、壁を越えて……
あとはお察しの通りです。私は壁を超える為、この塔に上り、塔の頂上で彼女と邂逅を果たしました。しかし……ああ、しかし違うということは、かくも残酷なものですね。
もっと詳しくですか? ああ、肝心なところを暈しはしましたからね。……そうですか。あなた方異邦人はこんな話に興味をお持ちなのですね。……良いでしょう。私も、誰かに言いたかった。
約半年の間、私と彼女は『壁』を挟んで話し合いました。そして……最初は彼女からでした。私の顔を見たいと言ってきたんです。私は戸惑いました。恐怖ではありません。お互いに似たような事を考えていることに驚いたのです。そして、私たちはなんとか『壁』をこえる方法を模索することになりました。そして、すぐに塔が両方に出入り口が有る事が分かり、そこを通じれば会うのはたやすいという結論に至りました。そして、私たちは合う日時を決めてその日を終えました。
しかしながら『壁』のどちらでも塔へ近づくこと自体が忌むべきこととされていました。それはそうです。『壁』はウラヒム(彼の種族の祖らしい)の時代に神々が作った物。それは我々を守るために世界を分け隔てた物。それをわざわざ超えること自体が、神への冒涜の様なものですから。
私は塔への立ち入りを一家の長(おそらく族長と言う意味なのだろう)に求めました。答えは決まっていたかのように、ただ「駄目」の一点張りでした。理由を問いただしてみれば「それは神話の時代から決まっていた」とかなんとか、訳の分からない事ばかり。「あれは敵である」だとか「彼らが***、****、*(翻訳機がうまい単語を発見できなかった為理解不能)」だとか、そんなことばかりです。
思わず私は彼らに言いました。「実際に会って見たことが有るのか、見たならば本当に***(また「悪魔」か「怪物」の意味の単語)なのか、確かめてもいないのに恐怖することは間違いだ」とね。そしたら……勘当ですよ。一家を追い出されてしまいました。今の私は、一家の者の前で死にかけていても助けてもらえません。ですが同時に、一家を追い出された為掟に縛られなくなり、塔への出入りを許されたとも言います。私は一家の長に感謝を述べて、一家を後にしました。二度と戻れないと知りながらも、私の頭は彼女の声で一杯でした。
私は塔に至るまでにデゥートを野に放ち、彼女の好きな花を摘んでいきました。ああ、今もそこに枯れ果てた花が置いてありますね。はあ……彼女の好きな、百合の花……(後々調べてみたところ、地球の百合の花とほぼ変わらないことが分かった。なぜなのか、理由は不明)彼女が受け取ることは有りませんでしたが……。ともかく、その時の私は会えることに心を躍らせ、入念に準備をして行ったのです。
私が塔の根元に付くや否や、守護の戦士(おそらくガードマンの事だろう)は私を無視しました。軽い感謝の気持ちを述べましたが、唾を吐かれました。仕方ありません。私の行動で、もし***(「悪魔」か「怪物」の意味の単語)が一家に危害を加えたなら、私は勘当ではすみません。処刑です。処刑されてしまいます。ああ、そうか。私は故郷へは帰れないのだな……。ああ、そうか……ああ……。
(一旦落ち着くまで記録を止めていた)
失礼。もう大丈夫です。塩水は流しきりました。
塔の内部はあなた方もご存知の通り、それなりに複雑でした。迷路も有りました。ですが、手順を踏めば踏破できる仕組みでした。(我々がついた時にはとの内部は瓦礫で埋め尽くされ、仕掛けも迷路も存在しなかった。おそらく壊されたものと思われる)塔の守護の戦士曰く「***(また「悪魔」か「化け物」の意味の単語)は知恵が無いから迷路を越えれない」と言われているから、そのような造りになったようです。
とはいえ、彼女がそういう存在とは思えませんでした。きっと『壁』の向うの世界でも同じように私たちは恐れられていたのでしょう。だから、彼女も、彼女の一家も、塔を超えてこようとは思わなかった。
この考えは私の中にある希望を抱かせました。つまり、彼女がもし会いに来れるなら、私と同じように苦難を乗り越えて来られるはずだと思い至ったからです。彼女が認めてくれる、恐怖なく会ってくれる意志があるなら、会いに来てくれているはずということです。彼女の一家は見送ってくれているかもしれない。そうなら、彼女の一家は私を受け入れてもらえるかもしれない。私の一家とは違うかもしれない。
今思えば、なぜそんな自信にあふれた楽観的な思考が出来たのか……ああ、過去の私を引き留めたい……。
そして、迷路を難なく超えた先、私は……そう、ちょうどここです。塔の最上階で、彼女と会いました。
彼女は人の姿をしていませんでした。***(「悪魔」か「怪物」の意味の単語)と言われるゆえんが、一目で分かりました。その肌は緑色の堅そうな葉っぱに覆われ、光を反射し緑に光っていました。目の瞳は四角く、口が耳元まで裂けているほど大きく、耳は有りませんでした。ぬめりのある輝きを持った四本の長い指が付いた腕に、細長い三本指の足、それぞれの指の間には膜が有りました。
正直、一瞬引いてしまいました。なにせ、私たちとまったく別の姿なのですから。ですが、私は勇気を持って教わった彼女の名前を口にしました。
そしてその瞬間、彼女は……ああ、彼女は! ああ、言ってしまった。行ってしまった。その言葉を言いながら行ってしまった。去って行った。その呪われた単語を私を指さしながら言ったのです!
そう、確かに私の予想は正しかった。彼女もまた、彼女の一家もまた「私たちの一家を恐怖していた」だが、彼女は一家を捨ててきたわけではなかった。彼女は連れてきたのです。一家の男どもを! あの見るも悍ましい青い鱗に覆われた怪物共! 私を殺すのか!? 私を殺すのか!! 嫌だ、止めろ! 助けてくれ、助けてくれ!!
(容量を得ない為、いったん停止。落ち着くまで待った)
ああ、申し訳ない。その時受けた傷が今でも恐怖を思い出させるのです……。
彼女は、一家の男どもを連れて来ていたのです。もし私が彼女たちの価値観で、私の一家で言う***(「悪魔」か「怪物」の意味の単語)であるならば、すぐに対処できるように。襲う事が出来るように……。分かり合えると思っていた私の理想は崩れました。今でも覚えています。あの時の彼女のあの目つきを。
彼女は……そう、彼女は私が怖かったのでしょう。でも会いに来た。きっと彼女の一家の掟などが有ったのかもしれませんが、ともかく、彼女は私を手招きしておいて、その実『恐怖から私を拒絶した』のです。百合の花が無残に床に投げ出されるその様は、私の心など、愚かな感情などどうでも良い、お前の想いなど捨ててやると……行動で示されたようで、私の中で何かが音をたてて崩れ始めました。その崩壊を加速させたのは、彼らが「この種族は危険だ。だから殺さねばならない」と会話しているのを聞いて、焦りが加算されながらも取り押さえられた私に出来ることなど有りませんでした。
そして、私への恐怖が、私の一家への恐怖となり、ウラエルから始まりし私の一家は今や火の海の中……。すべて、私が会おうとした結果なのです。
以上が戦争に至った経緯と言う事らしい。
要するに、お互いに未知への曹禺をし、恐怖から相手の種族を根絶やしにしようとして始めた戦争、という事らしい。
その話を聞いて、我々の中に彼に同情する者が現れた。その隊員は必死に彼を励まそうと、彼にあることを言った。
「それでも、あなたは殺されなかった。それは彼女からの愛なのでは?」と。それは、隊員にとって精一杯の励ましだったろう。
だが、彼は悲しそうな笑い声と共に言った。
「それはない。彼女は、いや、彼らは、私が怖かった。だから殺せなかった。そして、恐怖から私に二度と近づかなかった。拘束してある以上、二度と近寄りたくなかった。だから殺せなかった。なぜそう思うのか、と聞きたそうですな。答えは単純です……彼女が私を指さして言ったのです。『気色の悪い、汚い、害悪だ』と……」
正直すまんかった。
うん
救いはありません。
本格的に「お互いへの恐怖」が戦争への引き金でした。
今回はお互いが明らかに別種族でしたが、
テーマとしてはかなり重い作品です。
ずばり
「相手に関して深く知りもしないで恐怖し差別する心は悍ましい」です。
いわば差別物への警鐘物です。
ちなみに初期プロットでは、
彼女の方も受け入れる体制だったものの、お互いに密かに後から付いてきた者が居て、
彼女が撃ち殺される。その場面を彼女に付いてきた者が目撃。戦争へ発展。という流れでしたが、
より悲壮感漂う救いのない物へ変更しました。
結果こんな胸糞の電波な作品に……
こんな作品に誰がした! ワタクシがした! 正直反省している! ←
ここまでお読みいただきありがおうございました。