恋のナイフと祝福を
親友と同じ人を好きになってしまった人のお話
私の好きな人は親友の好きな人。
私はある日親友に相談に乗ってもらうことにした。
「あのね、私、好きな人ができたんだ」
「そうなんだ、奇遇だねあたしもなんだ」
私と親友は笑い合った、このときは思ってもいなかったんだ。
「あたしが先に言ってもいいかな?」
「うん」
小さな声で親友がつぶやいた名前は私もよく知っている人の名前だった、そして私はその名前を親友の口から聞いたとき自分の目の前が真っ暗になった気がした。
同じだったのだ、私たちは同じ人を好きになってしまったらしい。
「応援してくれる?」
「・・・うん」
反射的に言ってしまった、私はほとんど体の力が抜けていた。
「嬉しいな!あたし頑張るね!」
屈託のない私の大好きな親友の笑顔。でもこの時だけは見たくなかった笑顔。
「で、あんたの好きな人は誰?」
「私は・・・」
どうしよう、言えない、同じ人が好きだなんて口が裂けても言えなかった。だから私は嘘をついてごまかすことにした。
「私が大好きなのはあんただよ!」
「えー何それ!つまんないの」
うまく笑えているだろうか、鏡を見たい気分だった。
「応援、するよ」
「うん、ありがとね、やっぱあんたはあたしの一番の親友だね」
応援する、そう言ったのは自分に言い聞かせるためでもあった。親友の最後の一言に少し罪悪感を感じた。
それからしばらくして親友は告白した。
答えはOKだったようだ、私は親友たちを他の皆の様に祝福した。心からの祝福かどうかは分からない。
「おめでとう」
「ありがとう!」
本当に嬉しそうに彼氏のことを話す親友を羨ましく思った。もしあの時私のほうが言うのが先だったらどうなっていたんだろうか、親友は何も言わず私のように恋心を秘めたままだったのだろうか、それとも正々堂々と私も好きだと恋敵宣言をするのだろうか。
今更考えても無駄なのだけど。
彼氏と一緒に仲良く帰る親友、廊下で仲良く話していたり、それらを見るたび私の心には見えない傷がたくさんできていた。親友とその彼氏は私にとってはナイフのような存在だった。
正直、仲の良い二人なんて見たくなかった。けれど、幸せそうな二人を応援する方がいいのかもしれない、私はだんだんとそう思えるようになってきた。
嫉妬や妬みが全くなくなったわけではない、でもいつまでも引きづっていたら私はいつか大事な親友をなくしてしまうかもしれない。
私の恋は終わったんだ、心に何度も言い聞かせた。
少しだけ涙を流したら前に進もう、傷も少しずつ直していこう傷はきっと癒えるから。
「おめでとう!」
私は初めて親友に心からの祝福を言えた。