DOLL
ある人形のお話
人形は女の子が大好きだった。
人形が女の子のもとにやってきたのはもう何年も前のことだった。女の子の誕生日プレゼントとしてやってきた。女の子は人形を嬉しそうに抱きかかえて毎日遊んで話しかけてくれた。
女の子は人形に名前をくれた、メアリーというかわいらしい名前をくれた。
「メアリー聞いて、今日ねママがお洋服を買ってくれたの、似合うかな?」
とっても似合うわ、あなたにぴったりのかわいいお洋服ね。
「学校が楽しくないの、友達ができなくて寂しい・・・」
大丈夫よ、きっとあなたに素敵な友達ができるわ。
「聞いて、友達ができたの!」
よかったわね!
人形は女の子と一緒に話したかった。励ましたり、褒めてあげたり、一緒に喜んだりしたかった。
でも、人形にはそれを伝える声がなかった。人形はそのことがとてもつらかった、人形にはもともとあるはずのなかった心が芽生えてしまっていた。人形は女の子と友達になりたかった、でも気づいてしまったんだ。人形と人間は友達になんてなれやしないことを。
そのことに気付いたとき人形は深く悲しんだ。見えない涙を流し続けた。
でも女の子は毎日いろんなことを話してくれた。学校でのこと両親と遊びに行ったこと、たくさん話してくれた、人形はそれを聞くのが唯一の楽しみだった。
しかし、ある日突然人形は暗闇に閉じ込められた。狭く暗い箱に閉じ込められてしまった、女の子の手によって。
人形は飽きられてしまった。女の子にとって人形はそれほど大事なものではなかったようだ。
初めは恨んだ、辛くて憎くて腹が立った。でもだんだんと仕方がないことだと思えてきた。
そしてある時からか人形は何も感じることがなくなってしまった。人形はその方が楽だと思った。
だって明るく話しかけてくれた女の子を恨むのは辛いから。もう忘れよう、そう思うようになった。
人形が閉じ込められて長い年月がたった。ある日突然光が差し込んできた。
「わあ、懐かしいな」
大人に成長した少女が視界に現れた。
「結構古くなったなー・・・」
女の子は人形をきつく抱きしめた。そして小さな声でつぶやいた。
「閉じ込めちゃって、ごめんね」
そう言った人形はまた見えない涙を流した。
気にしてないわ、だから謝らないで。
女の子は人形をベットの隅に飾ってくれた。
ありがとう。
人形はまた女の子と一緒にいれることができたのだった。
めでたしめでたし