嘘つきと正直者はどちらが馬鹿を見るか?
嘘つきと正直者の口論のお話
ある一人の嘘つき少女がいた。少女は何事にも小さな嘘をついて生きてきた。
ある一人の正直者の少女がいた。少女は何事にも正直に生きてきた。
正直者は嘘を吐くことを知らなかった、嘘つきは正直に生きることを知らなかった。
そんな二人があるとき出会った。正反対の二人は当然仲良くなれなかった。
「あなたはなぜ嘘を吐くの?」
正直者は心から不思議そうに言った。
「反対に尋ねるけれどあなたはなぜ嘘をつかずに生きていけるの?」
嘘つきは卑屈な笑みを浮かべて聞き返した。正直者は屈託なく笑って言った。
「嘘をついて何か得をすることがあるの?嘘をついてもその内ばれちゃうじゃない」
「ばれないようにすればいいのよ、正直に生きて何か得をするの?」
「うん、自分が苦しくなくなるんじゃないかな?」
笑顔で言う正直者を嘘つきは嘲笑った、そして心から馬鹿にした、可哀そうな奴だと思った。
「知ってる?正直者は馬鹿を見るんだよ」
「うん、知ってるよ」
「じゃあ、どうして正直に生きるんだ?」
「私は嘘を吐くくらいなら馬鹿を見るほうがいいと思うんだ」
「本当にそう思っているのか?」
「うん」
嘘つきはもう正直者の考えていることが分からなくなっていた、宇宙人と話しているみたいだと思った。
きっと世の中全体を見渡せば正直者よりも嘘を吐く人間のほうが多いはずだ、なのになぜ目の前の少女は正直に、他人を疑うことなく生きていけるのか。
嘘つきの少女には理解ができなかった。
「あたしには君が分からないや」
「私もあなたがよくわからないよ」
「君と話し合って分かったことが一つだけあるよ」
「偶然ね私もあるわ」
二人は同時に互いを見合って言い放った。
「「あなたとは永遠に分かり合えない」」
嘘つき少女の持論はこうだった。「正直者は馬鹿を見る」
正直者の少女の持論はこうだった。「嘘つきは馬鹿を見る」
嘘つき少女はこう考える。嘘を吐くのは自分を守るためだと、自分を守るための殻のようなものだ。
正直者はこう考える。正直に生きていればまた相手も正直に自分のことを話してくれるだろうと信じていることが大切だと。
嘘つきと正直者の口論は今日も続く。
世界のどこかで毎日人は嘘をついているかもしれない、また正直に生きている人もいるかもしれない、でもそれは本人にしかわからない。