5話 勧誘
第一章も終盤に入りました。
自分で書いておいてなんですが、短いですね。
文才のなさに挫けそうですが、第二章、第三章…と続く予定なのでがんばって書いていきます。
レイルカと別れた後、キリは急いで師匠の下に戻った。
人だかりの原因を少しだけ見るつもりが、2時間近くも経っていたからである。
「師匠、遅れてすいません。今帰りました」
「おいキリ! お前どこほっつき歩いていやがった。すぐ仕事に戻れ!」
「はい! あ、師匠これ新しい金槌です」
キリはお使いの目的であった金槌を師匠に渡した。
「ふん。これは俺のじゃねえよ。お前のもんだ」
「え? ということは師匠」
「今日から俺の横でそれ振ってもらうからな。これまで以上に厳しくいくぞ」
「はい! ありがとうございます!」
キリもようやく鍛冶屋になるための第一歩を踏み出すことができたのである。
数日後。
師匠が言ったように、厳しい修行が続いていたある日のことである。店に客がやってきた。
キリの師匠は、製作した物品の販売は行っていない。この店にやってくるのは、剣を鍛えなおしてもらうのが目的の客が大部分である。
接客も修行のうち、と師匠に言われているキリは、客の応対をするために店の方に出た。
「いらっしゃいませ……ってレイルカじゃないか。どうしてここに?」
「また会おうと言っただろう? 道行く人に聞きながらだったが、無事に着いたな。そうか、ここが君の店か」
「俺のじゃないよ。師匠の店だ」
「そういえば君はまだ弟子だったな。仕事の邪魔をしてしまっただろうか。それなら悪いことをしてしまったな」
「邪魔ではないけど、あんまり長くは話せないな。ご用件は何ですか、お客さん」
「ハハハ。うん。そういう仕事にまじめな態度はいいことだ。そういう人間は大好きだ。
今日来たのはな、もう一度勧誘するためだ」
「勧誘? ……ああ、旅に出ようって話か」
「そうだ。君は私と旅をする資格がある。私と共に、世界を救う旅に出ないか」
「ありがたい申し出だけど、俺にはやっぱり無理だよ。血筋としての資格があったとしても、あの剣を振るう資格がない。あれを使えないんじゃ、旅に出ても足手まといになるだけだ」
「別にあの剣がなくても私は構わないのだがな……君の先祖だって何の変哲もないただの剣で私と戦ったのだし」
「それはご先祖様だからできたことだ。俺にはそんなことができる剣の腕も魔法の才もない」
「むう。君は中々難しくて頑固なのだな。分かった。旅に出る前に、私と共に剣を取りに行こう」
「剣を取りにって……本気か?」
「もちろん本気だとも。私と君の冒険譚の前哨戦。いざ火の国王城へ!」
ご愛読ありがとうございました。