4話 革命-5年前-
今回は語りの部分が入っています。
読みにくいと感じさせてしまったら申し訳ないです。
レイルカがキリを連れてやって来たのは、一軒の宿屋だった。
彼女はここに宿泊している。
「さて、一応は人気のないところまで連れてきてやったぞ。そろそろ話してくれないか」
自分が宿泊している部屋の隅に置かれたベッドに腰掛け、レイルカが言った。
「私が君に聞きたいのは大きく言えば1つだ。この国に何が起きたのか。それと絡めて君のことについても聞かせてもらいたい」
「ああ、分かった。5年前のことになる」
そしてキリは語り始めた。
君は既に知っているようだが、俺はこの国の元王子だ。将来はこの国を治める国王になるはずだった。だが、5年前、この国で革命が起きた。俺の父、つまり元国王は、自分の政敵や政敵になりそうな貴族を辺境の地に追いやっていたらしい。俺がそのことを知ったのは革命が終わった後のことだ。その貴族たちが結託して、ここ王都に兵を進めた。王都に来るまでの間に仲間になった貴族たちもいた。最終的に集まった兵の数は、王都を守る、王の親衛隊の数倍にもなった。そして互いの兵が衝突することになる
「ちょっといいか」
語り続けるキリを止めて、レイルカが尋ねた。
「そんなに兵力に差があるなら、降伏するべきだ。無駄に命を散らす必要はどこにもない。君の父は何を考えていたんだ?」
「さあね。息子の俺にも父の考えは理解できない部分があった。大方貴族たちに屈するのが嫌だったんだろ」
「その考え方は気に入らんな。兵のことを考えれば一度降伏するのも戦術の1つだろうに」
怒りをあらわにするレイルカをキリは黙って見ていた。
「続けてもいいか」
「ああ、すまんな。続けてくれ」
親衛隊も精一杯戦ったが、兵の数の差は埋められない。革命軍は王都や王城の至るところを制圧し、革命を成し遂げた。王族は全員死刑。使用人たちは王都に立ち入り禁止処分を受け、王都を追放された。だが、革命軍が城を占拠する前、母が俺を逃がしてくれた。魔法で髪と目の色を変え、城の地下通路から俺を城から出した。そのあと俺は、母に仕えていた使用人の夫婦に匿われ、一般人に溶け込むことを覚え、ここに戻ってきた。それで今は鍛冶屋の弟子さ。
「これで俺の話せることは全部だ。長々とすまない」
「いや、私が聞きたかったことは全て聞けたから構わん。君が自分の身分を隠しているのは、見つかったら死刑にされるからか?」
「情けない話だが、その通りさ。俺はそんな理由で死にたくはない」
「ふむ。私は君に謝らなくてはならないようだ」
「どうしてだ?」
「今の話を盗聴された」
「な!?」
「心配するな。私が何とかしてやろう」
「何とかしてやろうって言ってもな。もう逃げられただろう」
「逃げられないさ。宿屋に入ったとき、私が入口に封を施したからな」
「ただじゃ済まないことをしれっと言うなよ!」
「さあ、君はここから離れるといい。盗み聞きなどという趣味の悪いことをしてくれた奴は私が罰してくれよう」
レイルカはキリの手を握ると、笑いながら言った。
「また会おう、キリ・ルイス。次は私から会いに行くぞ」
返事をする間もなく、キリは転移させられた。
ご愛読ありがとうございました。