1話 キリ・ルイス
本編開始です。
あまり長い文章を一度に書けないので、短く刻んで話を組み立てていこうと思っています。
「えっと、あとは頼んであった新しい金槌をもらってくればいいのか」
手に持った紙に書かれている項目を確認しながら、その青年はつぶやいた。
ここは世界に存在する7つの国のうちの1つ、火の国。
この国は、上質な鉱石が採掘できることで知られており、国中に鍛冶屋が存在し、日夜金槌の音が響く、活気あふれる国である。
この国に生まれた子供は、火炎系の魔法を生まれたときから使うことができ、男性は全てが鍛冶屋を目指すのが一般的な考えであった。
多くの同業者が集まることで、それぞれが技術を磨くことに熱心に取り組むため、この国で作られた武器や防具は世界中で絶賛され、使用されている。
「はあ……俺もそろそろ何か作りたい……」
この青年もまた、一人前の鍛冶屋になるために修行中である。
名はキリ・ルイス。歳は17歳程。茶色い髪と黒い目は、この国の平民の典型である。
彼は師匠にお使いを命じられている最中だ。
「でもなあ。まだ弟子になって3ヶ月だしなあ。まだ早いのかなあ……」
キリはまだ金槌さえ握らせてもらえていなかった。師匠が仕事をしているのを、ただ見ているだけの毎日は、彼に鬱憤と焦りを感じさせていた。
「18になっても鍛冶屋になれなかったらどうしよ……」
この国では成人は18歳と決まっている。成人になっても一人前の鍛冶屋になれていない男性は、人々からの侮蔑の目を向けられることになる。
「それだけは勘弁だよなあ……っと、ここだ」
目的の店に着き、師匠が頼んでいた金槌を受け取ったキリは、来た道を引き返そうとした。
「ん? 何だあの人だかり」
店を出た右手側。帰る道とは逆の道に人だかりができているのを見つけた。さっきは考え事に夢中で気付かなかったようだ。
「少し見てから帰るか」
ちょっとした好奇心から人だかりに近づいていく。その選択が後に自分の運命を変えることになるとは、このときのキリは知る由もなかった。
楽しんで読んでいただけたら幸いです。