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5匹の人型

 「寒い寒い、ここは寒くてかなわんわ」


 「暑い暑い、焼け死にそうじゃ」


 「なに、ちょうどいいじゃないですか、」


 「いい天気だな、気分が悪くなるわい」


 「お主とはよう意見が合うのー、わしも気分が悪いわ。」


 異例の5つのゲートから出てきたのは、5匹の人型。

 皆が女の姿をしている。

 これまで、人型は皆筋骨隆々な男の姿しかいなかった。


 そして赤いゲートから出てきた人型以外の4匹。纏っているのは竜の象徴である炎ではない。


 水色のゲートから出てきた人型は、ガラスのような髪色に毛先が腰まであるロングヘアー、前腕から冷気のような煙を放出している。


 緑色のゲートからは、緑髪でポニーテール、全身からは命の化身のような、見惚れるほどの深緑に染まったオーラを纏っている。


 黄色のゲートからは、金髪で男のようなショートヘアー。全身からビリビリと稲妻のような音を響かせている。


 白色のゲートからは、黒髪ボブの一見穏やかそうな女。だが、全身に纏う嵐のような息吹は災害そのものを表しているかのようである。


 死突兵団の団長を任されている男、アモル。

これまで何百、何千、何万もの竜を葬ってきたが、今目にしている光景は、アモルの人生を否定する程の常識外れな事態であった。

 

 5匹の人型をみたセイナは、アモルの指示「逃げろ」という言葉に咄嗟に反応出来ずにいた。

 「逃げろ!」

 アモルの鼓膜を破るような強い恫喝に、セイナは気を取り戻すが、逃げることはしない。赤刀を握りしめ、臨戦態勢をとる。

 「逃げてもいいが、貴様らのゲートは既に封じてある。あちらにどれほどの手練れがいようと、十時は援軍なぞ来やしない。」

 「立ち向かうなんて笑止千万、なんとも勇敢な女だな、、」

 

 明らかに勝てないという恐怖心よりも復讐心が勝る。

 その様子はセイナの姿勢に強く反映していた。


 「にしてもあの女順応してやがるな、、悪魔のくせして生意気なガキが、、」

 「早くきていて正解でしたね、、これじゃ将来が恐ろしいですわ、」


 アモルは呼吸を整え、強張った体を脱力させる。

 「何者だお前ら、」

 「そうか、貴様らはこちら側のことを知らないのか、、私たちは五竜天様の守護者。自分の力量も知らず、恨みしか脳の無い本界の連中と混同されては困るから一応名乗ってやった。」

 稲妻を纏った金髪の人型が、頭を掻きながらむず痒そうに返した。

 「ゴリュウテンサマ?ホンカイ?意味わかんねーよ、、それにお前ら変な姿してんな、ドラゴンは相場炎だろ、ほらそいつを見習え。」

 そう言ってアモルは、赤いゲートから出てきた紅髪の人型を指差す。

 「青髪、貴様に用はない、それに我々は争いを好まない。出来ればその後ろにいる女をこちらに渡してくれんか、、」

 紅髪の人型がセイナの方へ手招きしながら、アモルに反論するかのように交渉をしてきた。

 「なんでこいつを狙う、」

 「教えたら素直に渡してくれるか?」

 ここでセイナは、シェイドルがいっていた言葉を思い出す。

 「等級の高い人型ならまともに話をしてくれる可能性がある」という言葉だ。

 先程のSランクの人型、怒りで我を失い呂律も回ってなかった様子とは全くもって異なり、目の前の5匹の人型は、アモルの話にもちゃんと返し、交渉の術すらも持っている。

 

 「それは無理だ、こいつは俺の部下だ、部下を守るのは団長の使命、、まぁそれに察しはついてる、こいつを狙う理由のな、」

 「じゃあ決裂だな、貴様も殺す、」

 すると5匹の人型は、天を裂くような圧をアモルとセイナに放った。

 その殺気に反応しセイナ達の危機を感じたのか西側にいたエゼル達の魔力がこちらの方に向かってきている。

 

 「おいペイナ、異変に気付いた軍の連中が助けに来るまで耐えるぞー、そう長くはない、、」

 最初に呼ばれた「ペイナ」に戻った。先程正確な名前を呼ばれたのはマグレだったのだろう。

 

 「分かりました、アモル団長!」

 セイナは気合を入れ、再び左手に力を込める。

勝ちはない、援軍が来るまで生き延びる、それがセイナに与えられた過酷なミッション。


 

 「今のあいつなら我1人で充分だ。」

 紅髪の人型は、セイナに殺気を集中させ前腕に3色の炎を纏い、衝撃波を発生させるほどの速さで向かってくる。

 「おいおい、弱い方選んでんじゃねーよ、、」

 「まぁいいじゃないですか、どちらにせよ楽ではないのだから、、」

 「よし、我らもゆくぞ。」

 冷気、深緑、稲妻、嵐の4匹は、アモルに対して戦闘態勢をとる。

 

 「麗麗吹雪〈れいれいふぶき〉」

 冷気の人型が先に仕掛ける。体を仰け反り、腹に溜めた力を凍てつく息にのせ、一気に吐き出した。透明な吹雪が重低音を靡かせながらアモルに襲いかかる。

 冷気に続き、


 「森転合掌〈しんてんがっしょう〉」

 深緑の人型は、全身のオーラを両手に集中させ、掌を合わせる。するとコンクリートの地面から芽が生え、瞬時に大木へと育つ。凄まじいスピードで成長する木で、アモルを左右から挟み込み合掌に合わせて潰す。


 「雷川天麻〈らいせんてんま〉」

 稲妻の人型は、自身の身長と同じぐらいの180センチほどある黄金のハンマーを持ち、頭上で回転させる。回すたびに天候はどんどんと悪くなり、黒雲を作り出す。雷の速度で、アモルまで間合いを詰め、ビリビリと音を立てた巨大な武器を振り下ろす。

 

 「風牙王来〈ふうがおうらい〉」

 嵐の人型は、これまた180センチ程ある体と同じ大きさの大剣を両手で構え、アモルと少し距離をとり、思いっきり振り下ろす。瞬間、切り裂くような風によって地割れが起こり、見渡す限りの全ての建物が吹き飛ぶ。人を喰うように吹いてかかる暴風は、アモルの元へ直撃する。

 



 「自在者の青剣舞〈リベラ・せいけんぶ〉」

 アモルは青刀を自分の顔の前に置き、4匹全ての攻撃を受ける。

 「ん?妙な技を使うな、、」

 「今当たったよな?」


 「あぁ確かに当たったよ、、

 だけど俺は〈自在者〉っつーやつでよ、何にも縛られない、、全ての攻撃から解放されるんだよ。まぁ簡単にいうと、俺に攻撃なんか当たらねぇって事だ。」


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