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初陣

 赤く染まったゲートを潜り、目にした光景は日本という国の街中。

 中でも今回龍門の反応があったのは、東京都〇〇市。英征和帝国とは違った種類の都会であり、並ぶ高層ビルが街の発展を象徴している。

 日本人は、まだ避難しきれておらず至る所に慌てふためいている姿が目にはいる。

  

 竜の咆哮に気付いたのは、入国してから数秒後だった。

 視界に入る高層ビルはどんどんと瓦解していき、消滅したコンクリートの残像には、全長30メートル程ある炎炎と燃えさかった竜の群れが映る。

 セイナは、一気に胸の鼓動が高鳴り、竜を凝視するたびに力が湧いてくるのを感じた。その状態は、他の団員達が視覚できるほどに魔力となって具現化されていた。


 「張り切りすぎだよ、もっとリラックスして、、」

 隣にいるエゼルが、初陣で取り乱しているセイナに助言をする。

 「ごめん、つい、」


 「あの大きさのドラゴンが何匹もいて、動きが統率されている。

 どこかに人型がいる事は間違いないな。」

 「人型、、」

 アランスを殺した紅髪の男を思い出す。


 最後にゲートから出てきたのは、欠伸をしながら目を擦っているアモルだ。

 「まぁ、適当に殺れ。俺は人型を探す。」

 アモルは団員に適当な指示を出し、ゲートとは逆方向に1人で歩いていった。


 「この団には連携とかないの?」

 「うん、全然ないよ。ほら、団長以外にも、」

 そう言ってエゼルが指を差した方向には、他の団員達が前方に見える竜に向かって走り出している。

 

 「俺たちも行こう。」

 「うん。」

 団員に続いて、市内を荒らす竜の群れに向かっていく。

  

 セイナとエゼルは、右手に魔力を込める。すると黒い渦が巻き起こり、その中から悪魔の仮面が現れる。

 

 「close」

 という掛け声と共に仮面をつける。セイナからは赤黒い魔力が溢れ出し、周囲にある生き物を全て枯らすような邪悪さを醸し出している。

 

 身体は綿のように軽く感じ、左手に構えた赤刀は鋒にも神経が行き渡っているように扱いやすく、身体と一体化している気がするほどだ。


 隣で疾走しているエゼルは、セイナの方を向いた。仮面越しにもわかるぐらいの驚愕っぷりをしている。

 「赤い仮面、、生で見るのは初めてだな、」

 他の団員達の黒い仮面とは違う、セイナの赤い仮面を見て、エゼルは呆然としている。

 

 「似合ってる?」 

 「いいや、流石に怖いな笑」

 悪魔に似合えば外道という常識に配慮したエゼルの返しには、怯えを含んだ苦笑で締められた。

 

 仮面をつけて先行していた他の団員達を追い抜き、セイナとエゼルは太刀を強く握りしめる。

 音速を凌駕するほどの勢いで、竜の巨体を斬り裂く。返り血を躱し、市内を飛び交っている竜に次々と向かっていく。1匹、2匹、3匹、4匹、次第に大きくなって聞こえる竜の断末魔は、セイナを高揚の海へ連れていく。

 5匹、6匹、7匹、8匹、見下ろすとコンクリートに打ちひしがれた竜の屍。その屍は蒸発するように消えていき、唯一残った魂のようなものがセイナに吸収されていく。

 エゼルが倒したであろう竜の屍は、まだ蒸発していない。


 後方を見ると他の団員達は、まだこちらに着いていない。呑気に向かっている。いや、そうではない。セイナとエゼルの速度が飛び抜けているのだ。

 ノーマル悪魔と格者の違いが顕著に表れている。

 ただ、それよりも目を引くのが、そのエゼルが1匹倒す間に、セイナは8匹も倒したという事。

 〈復讐者〉とは何者なのか?

 団服の胸ポケットにしまっていたレーダーの数値が、1000から900へと減る


 恍惚な表情をしているセイナの元へエゼルは近寄る。

 「流石だね、脱帽したよ。」

 「ねぇエゼル、最高だね、この仕事。」

 セイナの姿は、まさしく悪魔そのもの。

 

 ようやくこちらに辿り着いた団員達10数人。

 「エゼルさん、この女やばくないっすか?」

 「あぁ、俺もびっくりしてる。」

 「本軍の人みたいですね、」

 「いいや、ちゃんと今日からこの軍に入った子だよ。名前はセイナ。」

 

 竜を狩って悦に浸ってたセイナは、少し正気に戻りつつあった。

 そしてふとここで疑問が生まれた。

 明らかに歳上であろう団員からの「エゼルさん」という呼ばれ方。そして、最近この軍に入り変な人が多いから困っていたというエゼルが、その変な団員達と自然に会話をしている事。

 

 「新入りさん、強いね、、」

 それにセイナに話しかけてくる団員は、意外と変ではない。ごく普通だ。

 

 すると、エゼルと団員達の背後に炎を纏った竜が現れた。

 下を見ると、先ほどエゼルが倒したであろう竜の屍は消えている。仕留めきれてなかったのか?

 セイナはすかさず太刀を構え直す。だが、竜は攻撃の素振りを全く見せない。それに翼の羽ばたく音にエゼル達は気づいているはずだ。

 竜を視界に入れながらもなんの姿勢もとらない。会話を続けるばかり。

 その隙にセイナは、間合いを詰ようとした瞬間、

 「セイナ、こいつは大丈夫だよ、攻撃してこないさ。」

 「どういう事?」

 斬る事に快感を覚えたセイナは、エゼルの言葉をすぐに飲み込めなかった。早く斬りたい。

 「言ったろ俺は格者だって、、」

 気のせいか?口調が少しチャラくなったような、、

 「名前は〈操縦者〉、斬ったドラゴンを1体だけ操れる。だからこいつは俺たちの仲間だ。」

 ノーマルの竜、母を炭にした憎き仇。そいつが仲間になる、それはセイナの矜持が許せなかった。


 「エゼルさんって呼ばれているけど、本当は何者なの?最近入ったばかりって言ってたよね?」

 竜への苛立ちは、エゼルへと飛び火する。

 「あぁー悪い悪い、俺は死突兵団の副団長なんだよ、、セイナが1人で不安そうにしてたから、一団員として話しかけた方が気を遣わないかな?って思ったんだけど、余計なお世話だった?」

 エゼルの第一印象、さわやかな男から一気にチャラい男に見えてきた。セイナが苦手なタイプである。

 「そういう事なら、わざわざどうもありがとうございます。」 皮肉を込めた感謝を述べたが、考えてみると確かにエゼルのお陰で、気を楽にしてこの戦場に来れたのは確かだ。

 

 ただ、エゼルの背後に飛ぶ竜を前にセイナはやはり冷静さを保てなかった。

 「エゼル副団長、面倒みていただいてありがとうございました。ですが、戦場ではもうあなたと一緒に行動する事は出来そうにないです。ごめんなさい。」

 そう言い残して、セイナはエゼル達の元から去っていった。

 団員達の視線が鋭く刺さる。これで、更にこの団への居心地が悪くなるのは承知の上だ。

 



 「なんなんすかあいつ、」

 「エゼルさんの善意を無碍にしやがって。」

 「気が強いっすね、相当エゼルさんに身分を偽られたのがショックだったんですかね?」

 「って事はエゼルさんの事好きだったとか、、」

 「ヒュゥーヒュゥー」

 と宙を飛び交う団員達の野次。

 「それにしても、エゼルさんの思い通りにならない女なんていたんですね、」

 

 「うるせーぞお前ら、、次行くぞ!」

 野次を収め、次の指示をする。

 

 「セイナ、それで良い。お前ならきっと、、」

 思い通りにはなった。エゼルはセイナの竜に対する復讐心の真贋を確かめることができた。それだけで充分だ。


 

 エゼル班とセイナ単独に分かれ、〇〇市内に飛び交う残滓共を狩りに行く。

  

 セイナは、アモルが向かった南方面へと行った。道中、対峙した竜の群れによってレーダーの数値は900から650へと減った。等級は分からなかったが、全て一撃で殺せた為、大した階級ではないのだろう。

 母の仇であるノーマル形態の竜では、何匹殺そうと一向にセイナに満足感を与える事は出来ない。となると、次はアランスの仇である、人型に狙いを定めた。ゲートに入った瞬間に放ったアモルとエゼルの言葉から、この国に人型がいるのは確かだろう。

 

 

 初陣とはいえ、セイナの戦闘センスは素晴らしいものだった。悪魔の魔力を応用し、憎悪の刃で斬り裂く。

 先の戦闘でセイナは、魔力の使い方をマスターしたのだった。

 全身を巡る魔力を無にし、感覚という目に見えない機能に全てを注ぎ込む。

 すると、他の団員達の居場所が正確にわかる。第六感というやつだ。それは魔力が多ければ多いほど分かりやすい。西方面から感じ取れるエゼル達10数人の魔力、その何倍もの魔力量を1人で放つ人が南方面にいる。間違いなくアモルだ。

 そして、そのアモルの魔力が揺蕩う様に不安定になっている。

 アモルと互角に渡り合っている相手、、人型だ。


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