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エゼルとアモル

 「変人の集まり?」

 「そう、頭のネジが完全に外れてる奴、無口で何考えているか分からない奴、多様性があるとも言えるな、」

 「それでも戦えるならいいよ。あとシェイドルが言ってたこの終わりの見えない戦争の終止符を探す事も、もしかしたらなにか手がかりが掴めるかも、」

 「そうだな、人型は知能が高い、だから人間とも話ができる。他国に出る等級の高い人型ならまともに話をしてくれる可能性がある。頼んだぞ!」

 「任せて、」

 シェイドルの手続きが終わると、死突兵団の団員が、セイナに案内をしにくる。

 軍塞内には、大きく分けて3つの建物がある。

正面から見て、真ん中が第1棟本軍と国鋭所、右側が第2棟護衛団、左側が第3棟死突兵団である。

 死突兵団の団員は本軍の建物を通じて、こちらの建物に向かってくる。

 

 「どうも、死突のカイルといいます。ベル・セイナさんですね?」

 「はい、お願いします。」

 「では、ついてきて下さい。」


 命の恩人、シェイドルとはここで別れとなる。

 「短い付き合いだったけど、ありがとねシェイドル。」

 「一生の別れみたいに言うなよ、同じ軍の仲間なんだから会おうと思えばいつでも会える、、、死ぬなよ。」

 「うん、、、ありがどゔぅぅ、」

 母と友人が目の前で殺されて極度のショック状態になり、涙腺が閉ざされていたセイナは、シェイドルとの別れによって、その縛りが解放された。

 

 死突兵団の団員と一緒に離れていくセイナを、シェイドルは見えなくなるまで見送った。

 

 「団長、あいつ〈復讐者〉なんでしょ?持ちますかね?」

 セイナが見えなくなると、シェイドルの元に近づいてきたのは、護衛団副団長のデス・アベル。 


 「相変わらず盗み聞きが好きだな、」

 「人を外道をみたいに言わないで下さいよ、、で、どうなんですか?」

 「そうだな、悪魔は契約したその人間の素質に強く依存するからなぁ、、セイナの復讐心が本物ならライオウズ軍団長みたいにならずに上手く順応出来るかもな、」

 「団長がそこまで気にかけるってことは、、、好きなんですか?」

 「んなわけねーだろ、何言ってんだよ、本当はまだ子供だぞ、」

 「でも今は外見も中身も立派な大人じゃないですか?綺麗なお姉さんって感じ?」

 「それは悪魔の力だ、あの子本来の姿じゃない、」

 「とかいいながらーー?」

 「よし、殺す!」

 揶揄うアベルを追いかけ回す。第2棟には賑やかな声が響き渡った。



 

 セイナは、死突兵団が拠点とする第3棟に着いた。護衛団の賑やかな雰囲気が漂う第2棟と違って、内装は黒色が多めで厳格というか、不気味というかそんな空気が充満している。この軍塞には、各棟に別荘があり、そこで団員は生活をする。


 「セイナさんのお部屋はこちらです、」

 カイルに案内されたのは、内装は少し殺風景だが、小綺麗な1人部屋。

 「あのー、団長さんに挨拶とかしておきたいのですが、、」

 「あー、うちの団長適当なんで、全然しなくていいですよ、、それとセイナさんの情報は引き継いでおりますので、必要な時にお声がけさせていただきます。では、」

 カイルは早口で必要な情報だけを伝え、セイナに腕時計サイズのレーダーを渡して、足早に向こうに消えていった。

 

 「適当って言っても、命がかかってるんだから、、何よそれ、」

 第3棟に入って数秒で、シェイドルが言っていた「変人の集まり」という言葉がなんとなく理解できた。

 

 渡されたレーダーをみると、名前、竜魂の必要個数、それと謎の?マークが5つほど。恐らくこの?は基礎体力のステータスを表しているのだろう。セイナの体は、竜と戦うために作られらた悪魔の姿である為、正確なステータスの数値は測る事ができないという事だ。

 必要個数1000個。これがどれほどの数値なのか未だ分からない。軍についても謎が多すぎる。  

 まずは知り合いを作るところから始めないといけない。

 部屋を出て、ロビーのような広い空間に行く。ちらほらと人がいるが、別に集まって何か話をしているとかそういう訳ではなく、1人1人別行動をしているようだ。

 ざっと辺りを見渡す。隅っこで正座をしている人。1人で喋りながらトランプをしている人。ヘッドホンをしながら筋トレをしている人。どれもみんな話しかけずらい。とりあえずこのロビーには、友達になれそうな人はいない。

 諦めて部屋に戻ろうとすると、カーンカーンという鐘の音。

 部屋から続々と人が出てくる。説明が無さすぎて何をしたら良いのか分からない。すると、カイルがセイナの方へと向かってきた。

 「セイナさん、早速お仕事です。ついてきてください。」

 カイルに案内されたのは、ロビーよりもまたさらに一層広い奥部屋。そこには黒いゲートがたくさんあり、その中でも1つだけ血のように赤く輝いたゲートがあった。

 「龍門〈ホール〉の反応があったゲートは、赤色に変色します。今だとあそこです。」

 そう言ってカイルは、その赤いゲートを指差す。

 「反応があったのは日本です。あのゲートを潜る事で日本に行く事ができます。もうすぐ団長と竜魂が必要な団員があのゲートの前に集まってきます。指示があるのでゲート前で待機していてください。では頑張ってください。」

 「はい、、」

 セイナの返事を聞く事なく、カイルはまた足早に消えていく。極度のせっかちなのだろう。


 カイルが消えてから数分もしない内に、ざっくり10数人ほど集まった。少し賑やかになってくる。見渡すと、団員達は笑顔になっているようにもみえる。引き攣りの笑顔ではない。竜を狩ることを楽しんでいるような、そんな笑顔だ。


 すると、トントンと肩を叩かれた。

 振り向くと、黒髪のさわやかな男。歳はセイナと同じぐらいだろう。背丈はシェイドルよりかは低いがそれでもなかなかのスタイルをしている。

 「君、新人だよね、」

 セイナはその男の一言目で、まともな人がいるという安心感を覚えた。

 「そう、名前はベル・セイナ、あなたは?」

 「俺はアーク・エゼル、最近この軍に入ったんだ。ここは変な人多いから話す人いなくて困ってるんだよ。だけどセイナは見たところまともだなーって思ったから話しかけた、」

 「ありがとう、私も困ってたの、この軍について何も分からないからどうしようと思ってて、」

 「じゃあ俺が色々教えてあげる、ちなみにセイナの竜魂は何個なの?」

 そう言われると、セイナは自分のレーダーをエゼルに見せた。

 「1000?え?これまじ?」

 「うん、やっぱり多いの?」

 「かなりね、、多い人でも20から30ぐらいだよ、、」

 「エゼルは何個なの?」

 「18個。格者なんだ、、だから俺でも結構多い方なんだけどな、1000の後だと霞むよね。セイナも格者でしょ?なんていう名前の悪魔なの?」

 「えっとね、〈復讐者〉っていう名前だった。」

 「え?あの〈復讐者〉?、、、いやえーっとーあのー、色々大変だったんだね、なんかごめんね。」

 エゼルは少し気まずそうにしていた。

 「全然大丈夫だよ。そうだ、気になってたんだけど竜魂って1匹倒したら1個溜まるってこと?」

 「いや、そういう訳ではないよ。ドラゴンの中にも等級があるんだ。等級が高いほど竜魂も多い。俺たち死突兵団はいろんな国に行くから、もちろんドラゴンの等級もバラバラ。だから、俺なんかはAランクのドラゴン1体倒したらもうノルマはOKって感じかな?」

 「そうなんだ、じゃあ私多分結構大変だよね、」

 言葉の内容はネガティヴだが、セイナの口角は上がり気味だった。

 

 すると、ドンドンという重たい足音。団服のブーツからは想像できないほどの重厚感。

 ロビーからやってきたのは、青髪で背丈が190センチ体重は100キロを超えているであろう大柄の男だった。歳は30代前半って所だ。

 その男は、シェイドルが放つオーラとは毛色が少し違うが、同じような鋭い圧を放っている。

 「あの人は?」

 「俺たちのリーダー、アモル団長だよ。」

 「あの人が団長、、怖そうだね。」

 「そうでもないよ、挨拶がまだなら後で一緒に行ってあげようか?」

 「本当?ありがとう。」

 


 「よしお前ら、なんか日本にドラゴン共が出たらしいから、、あー目痒ーー、えーっと、なんだっけ?あ、そうだ、ドラゴンが出たらしいからボコボコにしにいくぞーー」

 なんとも適当な鼓舞。見た目に反して声の芯も薄く、それに途中「目痒」って明らかに声に出ていた。セイナはアモルに対する信頼感が一気に消えた。

 「いけいけー」と、団員達を手であおりゲートに向かわせる。


 「よし、行こうか今。」

 「え?今?」

 エゼルに手を強引にひかれ、指示をしているアモルの元へ向かった。

 

 「団長!この子今日からこの団に入る、、」

 「よろしくお願いします。ベル・セイナです」

 アモルは何も考えていないような顔でセイナを見つめて、

 「おう、よろしくペイナ」

 と、セイナの頭に手を置きポンポンと弾ませる。 

 「えーっとペイナじゃなくて、セイナです。」

 「あーごめんごめん、よしお前らもいけエンジェルとチェイナ。」

 「誰なんですかそれ、、」

 エンジェルは恐らくエゼルの事だろう。


 「セイナ、無理だよ団長に名前覚えてもらうのは、、だって団長自分の名前もたまに間違えるから、」

 「はー?」

 

 「いけいけー」

 目の前で部下であるエゼルにディスられたのにも関わらず、機械のように部下達に指示する。


 他の団員達に続いて、セイナとエゼルもゲートへと入って行った。

 「ちょっと、あの団長大丈夫なの?なんかこの軍が一気に心配になってきたんだけど、、」

 「大丈夫だよ。団長の悪魔は〈自在者〉。何にも縛られず意のままに戦う。まぁそのうち分かるよ。」


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