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死突兵団

 シェイドルに案内されたのは、征竜士軍の軍塞である。


 ここ英征和帝国の中枢部に位置し、面積約30000㎡程ある巨大な要塞だ。門には、征竜士軍の紋章。門壁は、団服と同じで黒と銅のおとなしく、禍々しい色。


 

 「悪魔にもそれぞれ個性があってな、一月でどのくらいの竜魂を必要としているかは、測らないと分からないんだ。」

 シェイドルに色々説明を受けながら、艶のあるレッドカーペットが敷かれた廊下を歩く。

 「お疲れ様です!」

 「うっす」

 道中、すれ違う団員達の挨拶に手慣れた感じで愛想をする。

 セイナに対しては、団員皆が愛想の良い笑顔で迎える。護衛団の治安はかなり良さそうだ。


 「それでだな、まずはこの計測器に立ってもらう。」

 シェイドルについていき、最初に紹介された部屋には、計測員であろう女性が1人、そして直径10メートルほどの円盤があった。

 円の中心には、1人分ぐらいの小さな円があり、そこに立つとその人の基本情報、契約した悪魔の魔力、竜魂をどれほど必要としているかなどが色んなことが分かる。

 「まず、契約した悪魔の最大魔力を測る。そして数分単位で消費していく魔力を引くと、一月にどのくらいの竜魂が必要かを予測できる。

 平均的には5から10個ってとこだな。」

 「シェイドルはどのくらいなの?」

 セイナは何気なく聞いたが、そばにいた計測員の女性は何か驚いている。

 「俺は30個ってとこだな。格者の悪魔は、ノーマルの悪魔の様な単なるステータスの向上に加えて、更なる能力が付与されている。

 ちなみに俺が契約している悪魔は〈轟々者〉、格者だ。」

 「そっか、だから炎とか出せるんだ。」

 「そう、だが格者となるとその分竜魂を多く必要とする、だからまぁメリットだけじゃないってことだ。」

 


 円の中心に行き、計測が始まる。

ピッピッピーという機械音が、無機質なこの部屋に響く。

 「あのー、ごめんね、ちょっと円からはみ出してるのかな?髪の毛とか、服の袖とか、、」

 「あぁ、すいません、」

 エラーでもあったのか、別室で測っていた計測員の女性はセイナに注意をする。

 ピッピッピー

 計測の女性は、計測器のサイド部分を軽く叩く。

 「どうした?エラーか?」

 剣の素振りをしていたシェイドルが、計測員のもたつきに気づく。

 「いや、えっと、セイナさんでしたっけ?」

 「あぁ、どうかしたのか?」

 「色々と気になるところが多くて。情報が結構抜けているというか、、年齢も出ないし、基礎体力もあやふやなんですよ、それに格者なんですね、」

 「まぁそうだろうな、あの子さっきまで俺の腰ぐらいのちっちゃい子供だったんだよ、、格者でない限りあり得ないからな。」

 「なるほど、だから団長を呼び捨てしてたんですね、びっくりしましたよ。」

 「あの子は特別だ、、」

 「セイナさんについては理解しました。ただ私が1番気になったのはここです。」

 そう言って計測員の女性は、モニターに映ってる、竜魂の必要量を指さした。

 シェイドルはその数値を見て、目を擦るともう一度モニターを見た。

 「1000個って、エラーですよね?」

 「もう一回測ってくれ、、」

 「はい、、」

 ピッピッピー

 「変わらないですね、、あり得ます?こんな事。」

 シェイドルは焦りながら、計測器にいるセイナに話しかける。

 「セイナ、悪魔の名前はなんて言うんだ?」

 妙なテンションのシェイドルに、セイナは何が起こっているのか分からず、つられて焦ってしまっている。

 「え?えーと、、」

 冷たい暗闇の中で聞こえた声を思い返す。

 「ふくしゅう、ふくしゅう、、あっ、〈復讐者〉って言ってた。」

 「〈復讐者〉、、おいおいまたこれはとんだ化け物と契約したな。」

 「〈復讐者〉って、、」

 計測員は、恐ろしいものでも想像したのか、怯えた顔で呟く。

 「前の軍団長の悪魔だ。〈復讐者〉、能力は謎のまま。だがとんでもない魔力を備え、とんでもない魔力を消費する。軍団長は、その強大な魔力に体が順応出来なかった。ボロボロになった体で竜魂のノルマを達成することは至難の業だ。だから、」

 「団長、本人の前なんでそれ以上は、、」

 計測員はセイナに気を遣ったのか、シェイドルを戒める。

 

 だが、セイナは表情に一切の曇りもみせなかった。むしろ、悲惨な運命を辿る事になると知っても、なぜか高揚感が湧いてくるばかり。先までの非力な自分から、一時でも竜を屠れる力を持っている事が嬉しくて堪らないのだろう。

 「じゃあ、私の体が保つまでドラゴンをぶちのめせるって事でしょ?良かった、その〈復讐者〉?っていう悪魔で。」

 セイナは、竜の話になると別人の様になる。シェイドルは、セイナが内に秘めている強い憎しみを抑えながら自分と話している事は分かっていた。

 だが、たまにその箍が外れる。外れた時はすぐ分かる。

 口が悪くなった時だ。

 

 「会ったばかりとはいえ、セイナの事をちょっとでも俺は知ってるつもりだ、だから出来れば俺が指揮している護衛団に入れてやりたかったのだが、、1000個となると、自ら討伐しに行かないと間に合わない。」

 「死突兵団ですか?」

 開いたくちのままの計測員の女性が、心配そうな口調で言う。

 「それしかない、、」

 

 「死突兵団?なにそれ?」

明らかに2人とテンションが異なるセイナが、シェイドルに質問する。

 「死突兵団はな、世界中に現れるドラゴンを討つため、軍のゲートを使って現場に向かう軍の事だ。」


 軍は主に本軍、シェイドルがトップである護衛団、死突兵団の3つに分かれる。


 主に指令を出し、必要となれば現場にも向かう選りすぐりの少数精鋭部隊、本軍。


 国内の龍門〈ホール〉から現れる竜に対して市民の安全を図るとともに、討伐をする護衛団。


 世界各国に出現する龍門〈ホール〉に応じて、征竜士軍が作り出したゲートを使い、こちらから討伐をしに行く死突兵団。

 

 「死突兵団は1番死者が多い軍だ。」

 「なんで?」

 「軍の連携もあるが、それよりも外国の地に現れるドラゴンの方がシンプルに強いからだ。 ドラゴン側も、自分の属性というものがある。まぁ簡単にいうと得意不得意な地があるという事。だから、ドラゴンは自分の地に合う国を荒らし、軍と戦う。」

 「だけど、死突兵団の中にもシェイドルみたいに強い人だって沢山いるんでしょ?」

 「あぁ、だが問題はそこじゃない。俺たちが住んでいる英征和帝国では、人型のドラゴンの属性とどうやら相性が悪いらしいんだ。だから、さっき俺が殺したあの人型のドラゴンは特殊だ。俺も人型を見るのは10年ぶりだ。」

 「そんな偶然にアランスは巻き込まれたのか、、」

 セイナはふと、アランスの境遇を思い出す。


 「人型のドラゴンにも等級がある。対峙してみるとすぐ分かる。俺が殺したのはせいぜいBランクってとこだろ、、だけど外国にはSランクやAランクのドラゴンが頻繁に出る。腕のある団員は好き勝手に戦うし、新入りを庇う程お人好しでもない。だから、、」


 「私は死なないよシェイドル。殺された友達が言ってたの、俺は征竜士軍に入る! 生きる英雄って、、、私がそれになってみせる。だから、そう簡単に竜の餌食になったりしない。約束する。」


 シェイドルは、セイナの意を決した熱い言葉に偽りを感じなかった。真っ直ぐ前を向き、復讐を誓った女の目に悲哀はなく、憎しみという名の自信が溢れ出している。


 「よし、分かった、手続きをしよう。ただこれだけは伝えておく。 死突兵団はな、変人の集まりだぞ。」


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