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セイナvsバルモフ

 紅髪の人型は、セイナに向かって殺意を放つ。

 紅髪の前腕に纏う色彩に富んだ炎による打撃によって、セイナはアモルから大分離れてしまった。

 かろうじて赤刀で受け止めたが、刀身にはジュワーと煙を立てて蒸発していった焦げ跡が残っている。

 前腕に纏った炎、先ほどセイナが受けた炎はオレンジ色だった。

 今まで対峙した竜が放つ色と同じだ。

 だが、他の色の役割は皆目検討がつかない。


 「よく受けとめたな、華奢な女子よ。」

 紅髪は、少し驚いた表情をみせた。

 「なんなのお前達は、、今までのドラゴンとは少し違うみたいだけど、」

 「先程の会話が聞こえていなかったのか、、それとも恐怖でそれどころではなかったのか、、」

 会話は聞こえていた、だが正体が知れたわけではない。

 「まぁいいわ。」

 「そうか、」

 セイナは確信した、やはりちゃんとした会話ができる。

 目の前の憎き仇相手に、体が小刻みに震える。

 赤刀の柄が歪んでしまうほどに力を込めた手を脱力させ、会話を続ける。

 「なんでお前達は、私たち人間を襲うの?」

 「我は貴様と話をしに来たのではない、貴様を葬る為に来た、」

 紅髪はセイナの目の奥を見て話しかける。

 「あっそ、、なんだ知能の高いドラゴンならもっと話ができると思ったんだけどな、、もしかして低級のドラゴンさんですか?」

 セイナは今すぐにでも紅髪に向かって斬りかかりたかった。だが、命の恩人シェイドルとの約束がある。

 ある程度知能が高ければそれなりの矜持というものがある。それを刺激する事で、話を聞くという作戦にした。

  

 挑発を受けた紅髪は、眉を顰めセイナの方を見つめる。

 「まぁよい、冥土の土産に応えてやる。」

 セイナの作戦は成功したみたいだ。

 「30年も前、貴様ら人間の方から我々の世界へ侵入し、戦争を仕掛けた、、」

 「人間から、、?」

 紅髪は嘘をついている気配はない。だが、人間が竜の世界へと侵入できる術は未だに無い、、半信半疑の状態である。

 「あぁそうだ、この傷が見えるか?」

 そう言って紅髪は後ろを向き、背中の傷を見せる。その傷跡は、セイナの持っている太刀と同程度の斬れ味を持った刀で、深く抉られているようだった。

 「この傷は、我々の祖先が貴様ら人間に強襲を受けた時に喰らった傷、、そしてその子孫である我々は皆この傷跡を持ってして生まれる。呪われた様に、、この意味がわかるか?」

 突然の告白にセイナは言葉が出ない、、

 「我々の本能が貴様らを殺せと命令している。憎き人類をな、、」

 もし紅髪の言う事が本当なら、悪いのは人類の方になる。

 「だが、勘違いするな、我々は貴様らの世界に行き、本能に導かれるまま人類を葬るような下等種族では無い、、我々は五竜天様が治める分界の種族だ。」

 アモルと人型の会話から分かることは、人間界を襲うのは本界という種族の竜であること、そして目の前にいる人型は、高い知能を持つ分界の種族であるという事。


 「我々は自分の力量を理解している、貴様ら人間に強者がいることもな、、先の青髪が良い例だろう、、」

 セイナは一方的に話を聞く事しかできない、、しかし心の中で紅髪に反論している。ただ言葉に出ない。

 人類がこの戦争を仕掛けたと言うことを受け入れたくないのだ。


 「我々高等種族は無駄な争いを好まない、、ただこうして今人間界に舞い降りた目的は、

  貴様だ〈復讐者〉、、」

 「なんで、、」

 「もう終わりだ、話はした。高等種族であると言う証明には充分なった筈だ、、」

 他の人型は知らないが、目前の紅髪の人型は自身の種に対するプライドがかなり高いのだと分かる。

 「ゆくぞ、我は炎天の守護者バルモフ、平和を乱す〈復讐者〉よ、貴様を焼き殺す。」

 

 紅髪バルモフは、両腕に青炎を纏う。と同時に髪色がその青に同調するように染まっていく。

 温度が変わった、、触れればすぐに体の芯から溶けてしまいそうになる程。

 そしてこの押しつぶされるような圧。幼児の体だった時に対面した、2匹の竜に対する自分の非力さを思い出す。

 セイナは、勝てない相手に挑む程馬鹿ではない。勝ちにはいかない、助けに来るのを待つ戦いが始まる。

 だが、セイナは闘志燃え盛ったバルモフを見る度に、母とアランスを殺した竜を脳裏に浮かべる。

 同じ圧、、元凶がなんだろうと幼体で見た悲劇の仇が竜である事は変わらない。

 所詮竜は竜、高等も下等もない、ただの害獣。

 いつも通り恐怖はない、あるのは怒りのみ。

 戦争の終止符探しは後でいい、、


 セイナの赤黒いオーラはどんどんと増幅していく。

 「おい劣等野郎!背中の傷が気にならない程全身ズタズタに斬り裂いてやる。」

 セイナの口調が変わる。

 後退していた右足を前に出し、守りから攻めの姿勢へと切り替える。

 悪魔の力全開のスピードで間を詰める。

 セイナは、握った赤刀をバルモフの脳天目掛けて振り下ろす。

 その恐ろしスピードにバルモフは反応が遅れていたが、すぐさま立て直し体ごと後退させる。

 バルモフの瞬時の後退により、脳天への狙いは外れたが、ガードで構えた左腕の前腕を斬り落とすことは出来た。

 しかし、再生は速い。

 「速いな、、だがもう慣れたぞ、、」

 「劣等のくせして一丁前に赤い血流してんじゃねーよ、、」

 「一気に人が変わったな、、それとさっきから貴様、劣等劣等ほざいてんじゃねーぞぉー。」

 

 

 バルモフは両手に力を込める。両手から出て来たのは、バスケットボール程の丸い青炎の塊。その塊を握りつぶすように指を曲げると、そこからオーブのような小さい青炎の塊に分裂する。


 「炎螺縷〈えんらる〉」

 バルモフは空中で浮遊している無数のオーブを吹き飛ばす。

 

 セイナはその飛んでくる青炎を、赤刀で斬りいなす、が、

 処理しきれなかった塊が、団服を少しずつ溶かしていく。肌の薄皮も次第に溶け始め、赤く染まった筋肉が露出する。

 熱い、、痛い、、生まれて初めてこれほど強烈な感覚を味合う。

 熱い、、痛い、、殺す、、殺す、、 

 この感情がセイナの中でこだまする。


 気付くとセイナの赤刀の刀身は、ノコギリのような斬る事に特化した形状に変化し、体はさらに軽くなっている。

 青炎を喰らった傷も消え、痛みも無くなっている。

 「また魔力が増えたな、、それにこの肉体の安定感、、〈復讐者〉よ、よっぽどその女子が気に入ったらしいな、、」

 「てめーこそさっきから〈復讐者〉、〈復讐者〉ってうるせんだよ、、私の名はセイナだ、、ゴミカスクソボケ野郎殺してやる。」

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