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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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『知の試練』 3

 二人は次の部屋の扉を開ける。

 部屋には鎧武者が3体程立っていた。身長が3mもあり、淡い光を帯びている。

 ユウヤはアンジェラ王女に扉の前で待っているように言うと、入り口に『結界』をかけ、鎧武者に近づいてみる。

 鎧武者は動き始める。

 「『魔弾』」

 ユウヤは鎧武者に魔法を放つ……が、命中する寸前に鎧武者の目の前に光の壁が現れる。

 「あれは……! 」

 ユウヤは跳ね返された魔法を住んでのところで躱す。

 (『反射』か。こいつも魔法が効かないのかよ。それなら剣で)

 1体の攻撃を躱しざま、ユウヤは横薙ぎの一撃を放つが、鎧に防がれる。

 (ひしゃげるどころか、傷一つついてない、だと? そういえば、鎧の淡い光は……そうか、『硬化』か)

 硬化。土属性第3階梯の魔法で、その名の通り物質を硬化させる。

 (剣も駄目、と。またかよ。何か方法を考えないとな)

 考えている間も、鎧武者は次々と斬撃を放ってくる。

 ユウヤはそれを捌きつつ反撃をいれるが、鎧武者にダメージが入った様子はない。

 (このまま続けても状況は良くならないな……とりあえず……頭でも狙うか)

 頭は大抵の生物にとって弱点である。兜に守られているといっても、強力な一撃なら脳震盪や、うまくいけば首を損傷することもありうる。

 そんな狙いで放ったユウヤの一撃は見事に兜に命中すると……兜はあっさりと外れて吹っ飛んでいった。兜が乾いた金属音を立てて地面に当たり、そのまま転がっていく。が……

 「何っ!? 」

 とっさユウヤは後ろに飛んで攻撃を躱す。

 攻撃してきたのは、首のない鎧武者だった。

 首がないというのに、何事もなかったかのように、他の2体と一緒に攻撃を続けてくる。

 ユウヤは3人と斬り結び続ける。

 (こいつらもゴーレムか何かか? だとすると、核が胴体にあるのか? )

 首のない鎧武者に足をかけると、鎧武者が一瞬つんのめり、切り落とされた首の部分がユウヤの方を向く。

 ユウヤはその瞬間を逃さず突きを入れようとした……が、鎧の中はがらんどうであった。

 隙を見て転がっている兜を拾ってみたが、こちらも中身は空だった。

 (……こいつら、中身は空っぽか。ゴーレムじゃないとすると一体……)

 それから30分も戦い続けたが、鎧武者の動きが鈍るでもなく、状況は動かない。

 ユウヤは段々イライラしてきた。

 (何かムカついてきたな……じゃあ、これでどうよ! )

 「『剛力』! 」

 火属性第3階梯、その名のとおり、使用者の力を増す魔法である。

 そんな魔法を、通常では考えられない魔力量で使ったのだ。

 「おらぁっ! 」

 鎧武者に殺到し、横薙ぎに強烈な一撃を食らわせる。

 鎧武者は5mも吹っ飛んだ……が、何事もなかったように起き上がり、ユウヤに近づいてくる。

 それから、ユウヤは入れ替わり立ち代わり襲い掛かってくる鎧武者を吹っ飛ばし続け……

 「まーだ動くか!! 」

 と腹に向けて放った渾身の一撃は鎧武者の上半身と下半身の鎧の隙間に命中し、鎧武者の上半身が吹き飛ぶ。

 下半身がその場に崩れ落ちた。上半身は動き続けているが、足がないためその場で藻掻いているだけのようだ。

 「……なーんだ、そういうことか。最初からこうすればよかったんじゃねーか」

 それからは鎧の継ぎ目だけを狙い始め……残りの2体も向かってこれないようにバラバラにしたのだった。

 入り口に戻り、『結界』を解除する。

 アンジェラは微笑んで、ユウヤを労う。

 「お疲れさまでした」

 「遅くなりました。さあ、行きましょうか」

 二人はまだ藻掻いている鎧武者達を尻目に出口に向かったが……

 「扉が開きませんわ? 」

 「……え? 敵は倒したはずですが……」

 「……何故でしょう……そうね……まだ鎧武者は動いてますよね。倒した扱いになっていないのでは? 」

 ユウヤはまだ藻掻いている上半身だけになった鎧武者の右肩に一撃を入れると、剣を持った右腕が外れる。反撃ができなくなった鎧武者の鎧を分解すると、鎧の背中の部分の内側に丸い複雑な模様があった。

 「これは……魔法陣ですわね」

 ユウヤが魔法陣に刀を突きたてると、鎧武者は動きを止めた。

 「なるほど。首は簡単に外れるようになってたから……とっとと首を外して、中に剣をこじ入れて魔法陣を壊すのが正解だったということですかね」

 他の2体の魔法陣も破壊すると、出口の扉はようやく光を放ち始めたのであった。




 二人は地下5階最後の部屋に入ると、悪臭が漂ってきた。

 見ると、部屋の隅に黒いものが蠢いている。

 それはタールのように艶のある黒色で、不定形のゲル状の姿をしていた。沸騰しているかのように、所々がボコッと泡を吹いている。

 やにわにアンジェラ王女の顔が青くなり、叫び声をあげる。

 「あれは……ブラックスライムですわ! 」

 「ブラックスライム? 」

 「見るのは初めてですが、大勢の人間が恨みを飲んで死んだような所で、怨念や悪しき魔力が混ざって発生する魔物だそうで、どんな生物でもその体に取り込み、吸収してしまうそうです。物理攻撃も魔法も効果が薄いらしく、出会っても絶対に手を出すな、と教わっています」

 (この迷宮の敵、そんな奴ばっかりだな。スライム……前の人生じゃ、こんな禍々しいのじゃなくて、つるんとした愛されキャラだったような……スライムが主人公の漫画もあったっけな)

 ユウヤはブラックスライムに近づいてみる……と、ブラックスライムは触手のような物をこちらに伸ばし……その先から何かの液体を飛ばしてきた。

 『結界』を使って防ぐ。『結界』に当たった液体は地面に落ちると、シュウッとした音を立て、刺激臭が立ち込めた。落ちた地面が少し溶解している。

 「酸か。……まぁ、とりあえず試してみましょうか。『水流』」

 以前覚えたウォーターカッターの要領で『水流』を放つ。

 ウォーターカッターはブラックスライムを切り裂いた……が、切り裂いた所がゲル状に溶けて互いにくっつくと、あっさりと元通りになった。

 『火球』

 半径50cm程の炎がブラックスライムを襲い、爆発を起こす。

 ブラックスライムは四散し、壁一面に飛び散ったが……飛び散った無数の断片が蠢き、互いにくっついて元通りに復元した。

 ユウヤは肩をすくめ、

 「……こりゃ難儀だな」

 「吞気なことをおっしゃっている場合ではございませんわ」

 「そうおっしゃられても……さっきの六芒星みたいに、核とかそういった弱点とかはないんでしょうか? 」

 「そのようなお話は……聞いたことがありませんわね」

 そんなことを話している間にも、復元したブラックスライムは非常にゆっくりとであるが、こちらににじり寄って来ているようだ。

 さっき使った『結界』まで浸食してきたが、さすがに『結界』は取り込む事ができないようだ。

 それを見たユウヤは、

 「倒す方法はともかく、止めることはできそうですよ。『結界』」

 ユウヤは魔力を多めに込めて『結界』を使う。

 普段のような平面状や半球状のものではなく、ブラックスライムを取り囲む円筒状の『結界』が発生する。更にユウヤが念ずると、円筒は細くなっていき、ブラックスライムの「水槽」というようなものができた。

 「とりあえずこれで良し、と」

 「『結界』……ですよね、これ。こんな形の『結界』……」

 「さっき2階でトンネル状の『結界』が発生したので、できるかと思って」

 「……まあ、いいです。でも、閉じ込めたのは良いのですが、扉も光っていないようですし、後はどうやって倒すか、ですね」

 「色々やってみましょう」

 ユウヤは円筒状の結界の上から、色々な低位の攻撃魔法を放ってみる。が、ブラックスライムがダメージを受けたようには見えない。

 (……高位の魔法を使うか……いや駄目だな。範囲が広すぎて、こっちまでダメージを受けるしな……)

 そのまま二人は考え込む。

 「……ん? そういえばアンジェラ様、さっきブラックスライムがどうやって発生するとおっしゃいましたか? 」

 「え、大勢の人間が恨みを飲んで死んだような所で、怨念や悪しき魔力が混ざって発生する魔物だと……」

 「『怨念』……『悪しき』魔力……ひょっとして……ちょっと思い付きを試してみます」

 ユウヤは立ち上がると、ブラックスライムの水槽に向かい、

 「『浄化』」

 ユウヤから白い光の束のようなものが現れ、『結界』避けるように縦に弧を書いてブラックスライムに命中する。シュウシュウとした音とともに、ブラックスライムは「水槽」の中で激しく動き始めた。

 「当たり、かな? 」

 ユウヤは『浄化』を撃ち続けると、ブラックスライムは結界の中で沸き立つ液体のように激しく動き続け、少しずつ体積を減らしていき……5分後には跡形もなく消滅したのであった。

 「……何とかなりましたね。でも、『浄化』は体内の毒素や、アンデッドを消し去る魔法です。ブラックスライムに効くなんて……」

 「アンジェラ様が『怨念』とか、『悪しき』魔力とかおっしゃってましたので」

 「……『結界』もそうですが、ユウヤ様はずいぶん変……いや、独創的な魔法の使い方をなさいますのね。もう驚きません、けど。それはともかく、問題が一つあります」

 「何でしょうか? 」

 「扉が光っていません」

 ブラックスライムは倒したというのに、確かに扉は光っていない。

 「他に何かいるっていうことは……ありませんね」

 ブラックスライムを倒した今、部屋は全くのがらんどうであった。

 「どこかに仕掛けか何かあるのでしょうか」

 二人は時間をかけ、壁や床を丹念に調べた続けたが、30分経ってもスイッチやメッセージの一つも見つからなかった。

 「やっぱり、何もありませんわね」

 「何のヒントもなしか……困りましたね」

 何の気なしにユウヤは出口の扉にもたれかかる……と、扉が開いてユウヤはひっくり返り、頭を床にしたたか打ち付けた。

 「あいたたた……」

 ユウヤの顔を上から覗き込むアンジェラ王女。

 「大丈夫ですか? 」

 と、手を差し伸べる。ユウヤはその手をつかみ、

 「押しただけで扉が開くとは……」

 「…ひょっとして、ブラックスライムを倒す必要はなかったってことじゃ……」

 「今までの扉が、敵を倒すと光って開くようになっていたこと自体が罠だったってことなんでしょうね。……『知の試練』ねぇ……この迷宮を造った奴の性格はどうなってるんだか」

 「『試練の迷宮』は神が作ったものと言われておりますので、あまり言わない方がいいでしょう……私も思うところはありますけど……」

 二人は呆れたような顔を見合わせるのであった。

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