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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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隠れ村の移住 2

 説明会が終わり、一旦村長宅に戻ったユウヤ。村長やアルノーに加えて、エイデン達村の主だった面々も同席しているのだが、元々王家に仕えていたアルノーが落ち着いている以外は、皆がガチガチになっている。

 「そういう態度はするなって、さっき言われただろう」

 見かねたアルノーが苦笑しながら皆を咎める。

 「そ、そう言われても……」

 「ぎゃ、逆にアルノーは落ち着いてられるんだ!?」

 「あぁ、アルノーのことも説明しといたほうがいいんじゃないか?」

 ユウヤに指摘されたアルノーは、ぼそぼそと話始める。

 「皆今まで聞かないでいてくれたが……実は、俺は元々アクィタニア王室直属の諜報組織の一員だった」

 「あ、あんたも王室関係者かよ!!」

 「だった、と言ったろう。詳しく言うつもりはないが、逆に組織から命を狙われるようになって、この村に逃げてきたんだ」

 「以前から、俺たちとは毛並みが違うと思ってたが……そういうことだったのか」

 「ユウヤ様が王室と話をつけてくれてな、俺は今後、帝室の諜報組織に所属することになっている」

 「……じゃあ、俺たちとは……」

 「いや、表向きの身分として役所の吏員になるから、縁が切れるわけじゃない。ただ、村民全部に話すことじゃないから、ここにいる者限りの話にしてくれ」

 「わ、わかった」




 「インぺリアへようこそ」

 ユウヤが振り返ると、数百名の村民たちがぽかんと口を開け、巨大な城門を見上げている。

 ユウヤが隠れ村の村民達に正体を明かしてから二週間たっていた。

 この日、村民達は村ぐるみインぺリアまでやってきたのだ。記念すべき移民第一号である。

 城門をくぐると、はるか向こうに城と建物群が見えるものの、後は城壁に囲まれた広大な空地があるのみである。

 「これは……! 何と……広い」

 「まだ開発中で、殆ど空き地しかないんだけどな。とりあえず、皆の家は準備してあるから、安心してくれ」

 ユウヤは見慣れない風景に顔をひきつらせた村民達を引率し、城の方へ歩いていく。

 歩いていくといっても、一つの都市、しかもユウヤが調子に乗って一気に開発した広大な敷地であり、村から城門よりもはるかに長い距離である。

 ユウヤとしては『転移』を使うなり、隠し村と引っ越し先に転移魔法陣を設置するなりして、さっさと引っ越しを終わらせたかったのだが、婚約者達にあっさり却下されてしまったのだ。

 アンジェラ曰く、皇帝に即位する予定のユウヤが特定の民だけ厚遇しすぎるのは良くない、只でさえ恩赦や移住先の提供、職業の紹介と様々な恩恵を与えているのだから、ということだった。

 今日の移住についてもユウヤではなく、案内の役人を差し向けるべきと言われたのだが、知らぬ者に案内されても不安だろうと言い張ることで、これだけはユウヤが行うことになったのだ。

 歩くにつれ、はるか遠くに小さく映っていただけの建物群の一つ一つが、実は10mをはるかに超える巨大なものであることがわかってきたようで、住民たちの騒めきが段々大きくなってきた。


 「ここが皆の家だ」

 林立する建物のうち、ユウヤが指さした一棟を仰ぎ見て、村民たちは一様にぽかんと口を開ける。

 「これは……!」

 その建物は6階建ての集合住宅であり、特に凝った造りではないものの、木造……というのも烏滸がましい、あばら家に住んでいた村民たちとっては、あり得ないような堅固で立派な代物だった。

 現在、ユウヤが建物を建てるペースが早すぎて、職人が窓や扉などを設置するスピードがついていっていないのだが、この建物だけは先に設置を済ませてある。

 「ここが、本当に、我らの家だと……?」

 「ん? 前住んでたような家の方が良かったか? まぁ、二階以上に住む者は階段を上らないといけないのは面倒だろうが……」

 「いえいえ、滅相もございません! このような立派な家に住まわせていただけるなど、思いもつかなかったもので……」

 「じゃあ中を案内するからついてきてくれ」

 と言うと、ユウヤはさっさと建物の中に入っていく。

 村民たちが入り口に入ると、そこは広い空間になっている。

 「ここは玄関ホール……共用スペースだな。村長の家は広くて、会議用の部屋があったろ? その代わりだ。今はテーブルも椅子もないから、各自調達してくれ。村にあったのを持ち込んでもいい」

 ユウヤは玄関ホールの奥から伸びる長い廊下に移動する。

 「ここと、一番奥には階段がある。で、両側に部屋が5室ずつだから、一階当たり10室、六階建てだから60室ある。中身は全て同じだ」

 ユウヤは一番近い部屋のドアを開ける。

 「部屋に全員は入れないから……主だった者だけついてきてもらおうか。案内するから、後で皆にも教えてやってくれ」

 ユウヤにつづいて部屋に入る村長たち。

 「こっちの部屋は倉庫だ。で、ここが台所、こことここが普通の部屋で……ん?」

 村長たちが目を見開いたまま固まっている。

 「どうした?」

 「イ……イサムさん、これではまるで……富豪か、貴族の家なのでは?」

 「……どこが?」

 「そもそもが石造りですし、とんでもなく広いし、部屋数も……」

 「いいんだよ。石造りなのは火事対策だし、土地も馬鹿程余ってるんだしな」

 「はぁ……」

 「イサムさん、壁についてるこの……金属は、何なんですか?」

 「ん? ああ、水道か。根元のここを、こう捻るとだな……」

 「うぉっ!? 水?」

 設置したばかりの蛇口から勢いよく水が流れ出し、エイデンが思わず叫ぶ。

 魔人とドワーフ族の尽力によって、先日上下水道が稼働を始めた所だ。ユウヤの予定よりはるかに早かった。とは言っても、各建物への配水・排水工事は始まったばかりで、城の工事すら終わってないのだが……

 「逆に、こう捻ると水が止まる。井戸より便利だろ?」

 「た、確かに便利とは思いますが……我々の中に『水流』の魔法を使える者など、あまりおりませんので……」

 「ん? これは魔法じゃないぞ? 簡単に言えば、川の水を引いてきてるだけだ。自分でもやってみ?」

 他の村民が見守る中、エイデンがおずおずと蛇口に手をかけ、水を出したり止めたりを何回か繰り返す。

 「嘘だろ……こ、これ、本当に使っていいんですかい?」

 「使ってくれなきゃ、作った意味がないだろう」

 「……ところで、出てきた水はそこの穴に流れるみたいですが……何処に溜まるんですかね? 汚れた水は捨てないといかんでしょうし……」

 「何処にも溜まらないし、捨てる必要もないぞ。穴に流れた水は下水道を通って、そのままインぺリアの外に流すからな」

 「は、はぁ……」

 わかったようなわからないような顔をするエイデン。

 「ちなみに、水道は洗い場とトイレと風呂にもあるから、使ってくれ」

 「風呂? 風呂まであるんですかい!?」

 「こっちの部屋だ」

 ユウヤは村民を風呂に案内する。

 「!!……」

 風呂を見るなり、全員が絶句した。

 「隣の部屋に風呂釜と薪の置き場がある。役所で働いてもらうことでもあるし、清潔を心がけてくれ」

 「は、はぁ」

 「案内はこれくらいで終わりだ。何か質問はあるか?」

 村長がおずおずと手を上げる。

 「あ、あの……このような立派なお住まい、考えもしなかったのですが……これほどのものとなると、家賃が……」

 「ああ、実は決まってなくて、今協議中だ。逆に言えば、決まるまでは家賃は取らないし、今から働いてもらう役所の給料で十分賄える額にはするから、心配はいらない。それより、他に質問がないなら、玄関ホールで待ってる連中への説明を手分けしてやってくれるか? それと、部屋の割り当てもな。皆が落ち着き次第、係員、皆の上司になる者をよこして、仕事の説明をさせなきゃならないから、なるべく早く頼むぞ」

 「わ、わかりました。これほど立派な住まいをあてがっていただき、我ら一同、大変感謝いたしますじゃ」

 中央ホールに戻り、些か顔を引き攣らせた村民たちの挨拶を受け、建物を後にするユウヤであった。

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