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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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計画変更

 七人は『転移』でユウヤの部屋に戻ってきた。

 それほど時間が立ったわけではないが、よほど衝撃を受けたのだろう。皆少しぐったりしている。

 ユウヤだけはアンジェラに相当叱られたことで疲れていたのだが。

 オリヴィアが淹れてくれたお茶を飲みながら、クァンメィがユウヤに聞いた。

 「ところで、肝心なことを忘れていませんか? 現地の状況が衝撃的過ぎて、私も今まで忘れておりましたが」

 「ん? ……なんだったっけ? 」

 「確か現地に行ったのは、手伝いが必要というお話から始まったと思うのですが」

 「あ……そういやそうだったな。まずは城の調度だな。見たとおり、今あるのは城の形だけで、城門一つないがらんどうの状態だからな。扉から装飾から家具の類から……とても一人じゃ手が回らないからな。城門もまだ設置してないし、あと上下水道の配管なんかも……」

 「ちょっと待って。『上下水道の配管』って何かしら? 下水道ならわかるけど」

 「あー……この世界には上下水道なんてないんだったっけ? まず上水道ってのは、簡単に言うと川から水を都市に引っ張ってから、管を使って各建物に配分する仕組みだな。逆に下水道はこのデルフォードにもあるけど、流石に各建物に通ってるわけじゃないよな? 各建物からの汚水を排水管でまとめて、都市の外に流すようにしたいんだよ」

 「下水道は分からない事もないけど…… その、上水道? の方は、何のためにそんなことをするの? 井戸から汲めばいいだけの話じゃないかしら? 」

 「アンジェラはお姫様だからわからないだろうなぁ……いいか、城でも下働きが何人も毎日井戸から水を大量に汲み上げてるわけだけど、これってかなりの重労働だろ? それに、平民なんかは一つの井戸を何十人かで共用してるから、ふんだんに水を使えるわけじゃない。それが、上水道を整備すれば、各建物の中で必要な時に必要なだけ水を使えるようになるんだよ。となると、当然煮炊きや洗濯、掃除も便利になるし、平民でも風呂に入れるようになるよな。で、下水の方も併せて整備すれば、都市を清潔に保つこともできるから、疫病対策にもなる、と。これから大勢の民をインぺリアに集めないといけないんだから、人が集まるような工夫は必要だと思うんだよ。上下水道はその一環だな」

 「なるほどね。確かに一つのアイデアではあるけど、それで人が集まかと言われると……」

 「『一環』って言ったろ? 俺もこれだけで人が集まるとは思ってない。色々策は必要だし、幾つかは考えてるんだけど、上下水道は地面に埋設したりしなきゃいけないから、今のうちに整備しとかないと」

 「その色々考えてるっていう策は、実施の前に教えてちょうだいね。ユウヤが暴走するととんでもないことになりそうだし……まぁそれはいいとして、城門の建設から城の調度から……やらなきゃいけないことが突然これだけ発生すると、正直手が回らないわね。人は各種族から何とかかき集めるとして……その取りまとめをする方の人員は……」

頭を抱え込んでしまったアンジェラに、ジュスティーヌが助け舟を出す。

 「手伝うよ。家具とか装飾の類の、木工関係は僕に任せてほしい」

 「いいのかしら? 」

 「ああ。あと織物の関係は……貴国からも人を出してもらってもいいかな? 我が国からも人を出すし、統括は僕がするよ」

 「では金属工の類は、私からシェンノンの方に手配しましょう。ラエティアにもご協力いただきたいのですが、ファニー、いかがですか? 」

 「……問題ない。あと石工の方もこっちで」

 「私は魔道具の方を担当するってことでいいかしら? 」

 「え……アタシは? アタシは? 」

 皆が担当業務を決める中、一人だけオロオロするヴィキ。

 「じゃあ、私を手伝ってちょうだい。魔力量なら私を超えるほどあるんだし」

 「魔力量には自信があるけど……魔道具の知識は……」

 「教えてあげるわよ。魔法陣の知識もね」

 アンジェラがほっと一息入れる。

 「みんなありがとう、本当に助かるわ。これなら何とかなる……いや、何とかして見せるわ。それはそれとして、ユウヤ」

 「ん? 」

 「宰相のスペンサー以下の開発担当係員、後ここに集まってる各国の首脳陣に、順次インぺリアを視察してもらってちょうだい。『転移』を使ってね」

 「会議とかで説明するんじゃダメか? 」

 「ダメに決まってるじゃない! 口であんなの説明したって、誰も信じてくれるわけないでしょ! 手配は私がしておくから、必ず、現地で、丁寧に、説明してちょうだい。いいわね? 」

 表情筋だけで笑いながら迫ってくるアンジェラ。

 「う……はい」




 それから一週間の間、アンジェラに言われた通り、多くの係員や各国首脳陣のインぺリアへの案内に追われたユウヤ。

 ユウヤの魔法をもってしても『転移』で移動できるのは10人程度が限度であり、対して案内すべき人数は三桁にも上るため、何度も何度も『転移』をした上で、同じ説明を繰り返さなければならなかった。

 それだけならまだしも、コンプトン卿を始めとして卒倒する者や、そこまでは至らないまでも現状に愕然として一時的に反応がなくなる者も続出し、それらをどうにかこうにか介抱したり宥めすかしつつの説明になったため、さしものユウヤも最後の方は疲れ切ってしまっていた。

 しかし、アンジェラを始めとした各王女やコンプトン卿の根回しが功を奏したのか、開発計画の修正は存外に早く進み、次の週末には修正計画承認のための会議が執り行われる運びとなった。

 会議で決定されたのは、新都市開発に係る係員の拠点を早急にインぺリア城に移転し、城が最低限度の機能を果たせるよう早急に整備を行い、整備が終わり次第即位式と結婚式を挙行すること、そのために各国が追加で人員を出し、その人員を各王女がそれぞれ分担して統括すること、などである。

 ある程度会議が落ち着いたところで、各国首脳陣から簡単とも愚痴ともつかないつぶやきが漏れる。

 「それにしても、僅か数か月で現地があんなことになっているとは……」

 「ユウヤ様が規格外ということは分かっておりましたが……それにしても……」

 「最初は整地だけのつもりだったんだけど……やってる内に、なんだその、興が乗ってきたと言うか……いずれにせよ、計画が大幅に狂わせたのは不味かった。大変申し訳ない」

 頭を下げるユウヤを、微笑んだアデライード3世が慰める。

 「よいのですよ。確かに色々混乱はありましたが……少なくとも、予算的なものは大幅に削減できるわけですし、長期的に見れば、とても良い事かと」

 「そうですな。とはいえ、かなりの手間が無駄になったのは事実。アンジェラ、コンプトン卿、今後ユウヤ様の手綱はよりしっかり握っておかねばならぬぞ」

 と、フォローと思いきや釘をさすウィリアム12世。

 とはいえ和やかな雰囲気になっていたところで、一人だけ深刻そうな表情をしているエカラデルハン7世。

 「一つ、懸念があるのですが……あれだけの都市を一人で作り上げたユウヤ様のお力はまさに規格外のもの、感嘆の極みでございますが……其方は気が付かなかったのか? 」

 エカラデルハン7世はかたわらに座っていたアディオラに水を向ける。

 「何のことかしら? 父上」

 「結界はどうするのだ? 正確には、結界に使う魔石をどうするつもりなのだ」

 「あ……」

 目を見開いて固まるアディオラ。

 エカラデルハン7世の真意がわからないユウヤはとりあえず尋ねてみた。

 「魔石? 何のことだ? 」

 「ユウヤ様があの城を建築された際、城の地下に広大な部屋を作られたはずですが、覚えておられますかな? 」

 「そういや、そんな部屋を作ったな。何の部屋かまでは把握してなかったけど」

 「あれは『結界の間』という部屋でして、都市そのものを魔物などから守る結界を張るための魔法陣を設置するためのものです」

 「そうだったのか。それで、懸念というのは? 」

 「その魔法陣の中心に魔石をはめ込み、魔力を注ぐ必要があるのですが、結界を張る範囲に見合う魔石が必要なのです。しかし、あれだけの広さを守るのに足るだけの品質や大きさの魔石など、私の知る限りでは……」

 「存在しない、と? 」

 「……残念ではございますが。我が国で最高の魔石も、城の結界に使っている魔石ですが……あの魔石であっても、とても足りませぬ」

 首を振るエカラデルハン7世。

 「そうなのか、それは参ったな……ん? 確か、区域は模型を基に作ったんだったよな……アンジェラ、魔石の見込みはあったのか? 」

 聞かれたアンジェラは気まずそうな表情で答える。

 「ある、とは答えられないわね。あれは、最高品質の魔石が確保できた場合の模型なのよ。都市の大きさは魔石の大きさ次第で修正するつもりだったから……」

 「……これも俺が暴走したせいってことか……」

 「そこまで言ってないけど……」

 「で、相応の魔石を確保する当てってのはなかったのか? 」

 「勿論当てはあるわよ? 今のところ程度は不明だけど、品質はかなりのもののはずだわ」

 「じゃあ、その魔石の品質なり大きさなりを確認してもらうのが先だな。その魔石は何処にあるんだ? 」

 「ユウヤが持ってるはずよ」

 「え? 俺? 」

 「シェンノンの『試練の迷宮』で、巨大な黄金の竜を倒したって聞いてるわよ? 」

 その瞬間、シェンノンとラエティアの陣営からどよめきが上がったが、それを手で制したカイシャン=ハーンが渋面を作る。

 「アンジェラ殿、確かにあれほどの魔物であれば、とてつもなく高品質の魔石が採れるであろうが……あれは帝国のものではなく、ユウヤ様の個人資産じゃぞ」

 「分かっております。ですので、ユウヤから帝都整備予算で買い取る予定だったのです。帝都建設は当分先の予定でしたので、予算計上はまだでしたが……」

 ユウヤは頭を抱える。

 「あー……それも俺の問題か」

 「拗ねないでよ……急な話になっちゃったけど、魔石の買い取りには応じてもらえるのかしら?」

 「別に拗ねてるわけじゃないんだけどな……まぁいいや。それより黄金竜の魔石なんだけど……この際、無料で進呈するよ」

 ユウヤがそういった瞬間、会議室全体がどよめいた。

 「ユウヤ様……それはちょっと……」

 「あの竜の魔石ですぞ!? どれだけの値が付くことか……それを無料というのは、いくらなんでも……」

 出席者は口々に止めようとしたが、ユウヤが意見を翻す様子はない。

 「俺の暴走で色々と迷惑をかけたことでもあるし、そもそもインぺリアは俺の都市なんだろ? 自分の都市に自分の物を使っても、おかしくはないだろう? 」

 そう聞いても、アンジェラはまだ不服そうだ。

 「そうは言っても、皇帝にはそれなりに資産が必要よ? 無資産の皇帝なんて、様にならないわよ」

 「魔石なしでも、黄金竜にはそれなりの価値があるんじゃないか? 売り払うのに複数の国が共同しないといけないレベルって聞いたけどな」

 「それはまぁ、そうだけど…… 」

 「じゃぁ、それで決まりな。あとは魔石の品質の確認だな」

 それから少しのやり取りの後、一旦会議を中断して、休憩がてら皆で魔石を確認することになったのだった。

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