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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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現地視察

あけましておめでとうございます。

読んでいただいている方、ありがとうございます。

今年もよろしくお願いいたします。

 4日後のカネム・ボルム王国を皮切りに、王族を始めとした各国のトップクラスが相次いでデルフォードに入国してきた。輿入れのためである。

 各国の王族等の顔合わせや会議等で目が回るほど忙しかったユウヤであるが、、ようやくそれもいささか落ち着いてきており、今は自室で勢ぞろいした婚約者達と寛いでいた。

 「……じゃあユウヤは、毎日のように城を空けて、ふらふらしてたってこと? 」

 「そうなのよ。まぁ時々は帝国立ち上げの業務の視察はしてくれてたけど……」

 「……ユウヤ、自由すぎ」

 「……これでもいろいろ、帝国のために働いたたんだけどな。ほら、人材だって確保しただろ」

 「あぁ、『隠れ村』の件ですね。アンジェラから間接的に知らされましたが、役に立ちそうですか? 」

 恩赦の件もあって、隠れ村のことは皆一応知らされてはいるようだ。

 「仕事をさせてみないとわからないけど、村長以下良くまとまってるし、皆気立ても悪くなさそうだから、期待はできると思ってる。人数もそれなりにいるしな」

 「人材と言えば、アルテュール……いや、アルノーに改名したのか。僕は小さいころから知ってるんだけど、凄く有能だし、誠実な男だから、僕からもよろしく頼むよ」

 「アルノーって誰?」

 ヴィキが首を傾げる。

 「ああ、元はアクィタニアの諜報機関の幹部だったんだが、追放されたのを拾ったんだよ。帝国の諜報組織を立ち上げてもらうことにした。諜報組織は各国の人材をそのまま……というわけにはいかないだろうから、ちょうどよかったんだ」

 「へぇー」

 あまり興味がなさそうなヴィキをよそにして、ユウヤは皆の顔を見回す。

 「ところで、相談なんだけど……新しい都市の件で、手伝ってほしいことがいくつかあるんだけど」

 アンジェラが怪訝な顔をする。

 「新しい年の件で……手伝い? 何かしら? 手配は進めてるけど……知ってるでしょ? 」

 「皆の負担を減らせないかって現地で色々やってたんだけど、自分だけでできる部分は大体終わっちゃったんでな……」

 「難しい部分? 」

 「色々あるな。城門の設置とか、城の調度を整えるとか、あと配管とか、魔法陣の設置も必要だし…… 」

 アンジェラが慌てて止めた。他の五人も怪訝そうな顔をしている。

 「ちょ、ちょっと待って。まだ現地に何もないのに、何を言ってるの? 」

 「いや、城とか城壁は建設したぞ。といっても、城の中身はすっからかんだし、城壁もまだ城門がないから、素通しの状態なんだけどな」

 「……は? 建設した? え? どういう事? 」

 「どういう事って……言葉通りの意味なんだけど」

 何と返していいか分からないという態で、口を開けたまま黙っりこんでしまったアンジェラに、アディオラが話しかける。

 「よくわからないけど、ユウヤのことだから、何かとんでもないことをやらかしてる可能性があるわね……一回現地を確認した方がいいんじゃない? ユウヤ、『転移』で私達六人を転移させる事はできるかしら? 新都建設地まで」

 「多分大丈夫と思うけど」

 「今日はもう遅いから、明日にしましょう。皆、明日一日空けられるよう手配しといてちょうだい」




 次の朝、朝食が終わるとすぐ姫たちはユウヤの部屋に集合した。

 昨日と違って、動きやすい服装をしているのは皆同じだったが、表情の方はそれぞれ違っている。

 表情がいささか強張り気味のアンジェラとジュスティーヌ。

 対照的に、何かに期待しているかのような笑みを浮かべるアディオラに、天真爛漫そうにニコニコとしているヴィキ。

 いつも通り落ち着いた表情のクァンメィに、こちらもいつも通り何を考えているかわからない無表情のファニー。

 「皆、用意はいいか? じゃあ『転移』」

 視界がぐにゃりと歪み……次の瞬間、七人は巨大な建物に囲まれた広場に転移していた。

 アンジェラが少し顔を引きつらせる。

 「ここは……何処かしら? 」

 「新都市の中心地、城の中庭だな」

 「……何を言ってるの? 新都市の中心って、まだ何もない所じゃ……」

 「アンジェラ……あ、あれ……」

 ジュスティーヌが若干震える指で指し示す方向には、小さな祠が六つ鎮座していた。

 「これは……確かに、『定礎の儀式』の時の……」

 愕然とするアンジェラ。

 「つまり、この周りの建物はユウヤが建てたってことね。で、どうやったらこんなことができるのかしら? 」

 興味津々といった様子のアディオラ。

 「『整地』で大雑把に形を作って、『造型』で整えるって感じだな。石材は南の山から取ってきた」

 「『整地』と『造型』って……こんなことができるものじゃないはずなんだけど……相変わらず滅茶苦茶ねぇ、ユウヤ……ところで、城壁も作ったって言ってたわよね? 」

 「ああ、案内しよう」

 六人はユウヤが案内するままに建物を抜け、城の外に出る。

 「……!! 」

 六人の目に見えたのは、広大な切り拓かれた土地と城から真っすぐに伸びる道路であった。はるか遠くには、城壁が緩い弧を書いて広がっている。

 「あの遠くに見えるのが城壁だな。ここからじゃ分からないだろうけど、実際はかなり高く作ってある……ん? どうした? 」

 六人とも目を見開いて立ち尽くしている。アンジェラに至っては、力が抜けたかのようにペタンとその場に座り込んでしまっていた。

 皆暫くそのまま固まっていたが、やっとのことでジュスティーヌが口を開く。

 「これは……まさか……」

 「そうねぇ……いくらユウヤと言っても、これはちょっと……想像できなかったわね」

 「……出鱈目すぎ」

 皆がぽつぽつと感想を漏らす中で、やっと気力を取り戻したのか、アンジェラはふらっと立ち上がったかと思うと、無言でユウヤの前に立つ。

 「……ユウヤ」

 その表情には無理やり貼り付けたような笑顔が浮かんでいた。ついでにこめかみには青筋も浮かんでいる。

 (あ……これちょっと、やばいかも)

 「これは、どういう、ことなのかしら? 」

 「え、いや、その……ほら、新都市建設に人手も金もかかるって言ってたから、俺の方でできることはやろうかなって……言わなかったっけ? 」

 「ええ、ええ、聞いたわよ、確かに。だからって」

 「だからって? 」

 「だからって……こんなの! 想像できるわけ! ないでしょっ!! なんでこんなことになってるのよ!? 」

 「……いやこんなことって……なんか拙かったか? 」

 アディオラが苦笑しながら口を挟む。

 「拙いも何も、ねぇ……数十年がかりの建設計画が、一部にしたってここ数か月でできました、なんてのは、ちょっとあり得ないわよねぇ」

 「そうなのか? 」

 「『整地』と『造型』で城と城壁を建てたって言ってたわよね? 一流の魔術師でも、家一軒くらいならなんとか建てられるかもしれないっていうレベルなのよ? これだけのものを一人で作るなんて、想像できるわけないでしょう? 」

 「う……」

 「正直、話に聞いた『隕石』の方が、まだしも納得できるレベルねぇ」

 「そ、そうなのか……ところでアンジェラは、俺が何をしてるって思ってたんだ? 」

 「そ、それは……魔獣を間引いたり、ひょっとしたら少しくらい伐採してくれてるのかなぁって……私の考えが甘かったわ……ユウヤがまともじゃないのは分かってたのに」

 肩を落とすアンジェラを皆が口々に慰める。

 「そんなことはないと思うよ、アンジェラ。幾らユウヤだからって、こんなの予想できるわけがない」

 「これを想定しろというのは……確かに無理ですわね」

 「……全部ユウヤが悪い」

 「そーだそーだ! ユウヤが悪い」

 段々矛先が向けられるユウヤ。

 「あ……なんか、ごめん……なんなら、作ったものを元に戻しても……あ、森までは戻せないけど」

 「何でそうなるのよ!! ……確認だけど、この建物とか城壁とかは、城にあった模型を元に建設したのよね? 」

 「あ、ああ、細かい所まで精密に作ってくれてたから、そのまま建てたんだけど」

 「それならいいわ。一応検査はさせるけど」

 「拙い所があれば、いくらでも修正するぞ」

 「そうしてちょうだい。あの模型通りに建てられてるんなら、確かに人手も予算も大幅に節約できるから、とっても、とーっても助かるのよ? ……でもね? ユウヤ」

 「な、何だよ」

 「私だけじゃなく、宰相から係員まで全員が時間をかけて練りに練った建設計画が、ぜーんぶやり直しになっちゃったのよ? それこそ一からね」

 「す……すまん」

 「まぁ、ちゃんと確認しなかった私にも落ち度はあるけど……次から,何かする時には、先走らないで、事前に、話をしてちょうだい? 詳細にね。ユウヤの能力は私たちとはかけ離れてるんだから、折角の計画がぜーんぶ滅茶苦茶になるのよ? 」

 「わ、わかった」

 「もういいわ……確かに大助かりではあるし。でも、状況を皆に説明して……計画を練り直して……頭が痛いわ。もちろん、ユウヤも手伝ってくれるわよね? 」

 「お、おう。何でも言ってくれ」

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