村人の今後
……実は、今まで書き溜めたストックがなくなってしまいました。
今後は週一程度の更新の予定です。
申し訳ありませんが、ご承知おき願います。
「あれ? まだ起きてたのか」
ユウヤが『転移』で部屋に戻ると、未明にも拘らず、オリヴィアが待機していた。
「お帰りなさいませ」
「先に寝ててくれてよかったんだけど……すまなかったな」
「私はよろしいのですが……」
と言ってオリヴィアがちらっとソファの方を見る。
オリヴィアの視線の先を追ったユウヤの顔が引きつる。
視線の先にいたのは、腕組みをして仁王立ちをしたアンジェラであった。
「ア、アンジェラ……こんな時間になんで起きてるんだ? 」
「何で、じゃないでしょ。こんな遅くまで、何をやってたのよ」
「いや、だから、帝都建設の……」
「帝都建設の……何をしてたのかしら? お酒も入ってるみたいだけど? 」
ユウヤはとっさに自分の口を押える。
「え、いや、その……」
「いいこと? あなたの立場で伴もつけずにふらふらすること自体、本来ならあり得ないけれど、それはまぁ大目に見るわよ? ユウヤを害するなんて、誰もできないでしょうし? でもね? オリヴィアにさえ、何も言わずに、こんな時間まで、城を開けてるなんて、それはどうかと思うのよ」
両手を腰に当てて、一言話すたびにユウヤににじり寄ってくるアンジェラに、ユウヤはたじたじになる。
表情は微笑んでいるのだが、よく見ると笑っているのは顔の筋肉だけだ。第一、どう見ても目が笑っていない。
(怖っ! ……帝都建設は嘘じゃないんだけどな……ここで逆らうのは不味いよな)
「あー……、すまん」
心が折れた様子のユウヤを見て、アンジェラはため息をつく。
「今後、気を付けてちょうだい。せめて、いつ帰ってくるのかわからないと、オリヴィア達や料理人達だって困るんだから。幾らユウヤが強いって言っても、万万が一のことだってあり得ないわけじゃないんだし。何なら外出禁止ってことにしましょうか? 」
「そ、それは……勘弁してくれ」
「……まぁ、いいわ。今回に限っては許してあげる。でも、今後もし同じようなことがあったら……」
「わ、わかった、もうやんないから」
ユウヤから言質をとったことで、アンジェラはやっと本当の笑顔になる。
「まだ言いたりないくらいだけど、ここまでにしておいてあげるわ。今日はもう遅いし、そろそろ寝ましょ」
次の日の昼下がり。ユウヤは居室でアンジェラとお茶をしていた。
昨日の今日で城外に行くのははばかられたし、アンジェラの機嫌も取っておきたかったからであるが、昨日言いたいことをある程度言ってしまったためか、アンジェラ以外に上機嫌であった。
話題は新帝国の建国準備の進捗の報告などが主であったが、それも一通り終わり、段々ととりとめのない話になっていった。
「ところで、昨日は何処で呑んでたのかしら? 」
「え、昨日のお説教の続きかよ」
「違うわよ。料理が得意なユウヤが気に入ったお店があるんなら、今度お忍びで連れて行ってもらおうかなぁ……って」
「いや、店で飲んでたわけじゃないんだ」
「え? じゃあ何処で吞んでたのよ」
「実は…… 帝都建設地の近くに、村を見つけてな」
「……村? あんなところに? ……聞いたこともないけど」
「隠し村らしくてな。食料が燃えちまったらしいんで少し援助してやったら、宴を開いてくれてね。それで昨日は遅くなったんだよ」
「……ということは、本当に帝都建設地に行ってたってこと? 」
「ひどいな。信じてなかったのかよ」
「それは、一人で帝都建設を手伝うって言われても……ねぇ。それはそれとして、隠し村っていうのはどういうことかしら? 」
「あー……これは少々言いづらいんだけど……カレドニア王国から逃げた連中が作った村らしいんだよな」
「逃げた? うちの国から逃散したってことなら、重罪だけど……」
「まぁそうなんだが……何でも税が倍になったり女狩りをされたり、随分酷い目にあったって聞いてるぞ」
「……王国の何処から逃げたかは、聞いてるかしら? 」
「いや、聞いてないな。辺境伯領とは言ってたけど……」
アンジェラは頭を抱えてため息をつく。
「……十中八九、カマーゼン辺境伯の所でしょうね。地理的にも比較的近いし、確か十二年前に代替わりしてから、悪い噂がちょくちょく耳に入るのよね……」
「そういうことなら、王国として罰したりしないのか? 」
「噂が事実なら、そうするべきよ。ただ、話はそう簡単じゃないの。まず、貴族は自分の領地について強力な自治権があるから、王国にとっても処分は簡単じゃないわ。だからと言って、ユウヤがさっき言ったようなことまで許されてるわけじゃないけど」
「つまり、処分することはできるんだな? 」
「……それには内偵が必要ね。ただ、辺境伯領ともなればそれなりの力もあるし、王国の目も届きにくいから……表面上は上手く取り繕ってるし、時間はそれなりにかかるでしょうね」
「村に、何とかしてやるって言っちゃったんだよなぁ……何とかならないか? 」
「何とか……っていうのは、その隠し村の住民が、犯罪者じゃなくなるってことでいいのかしら? 」
「そういうことだな」
「それなら、恩赦してしまえばいいんじゃないかしら? 勿論それとは別に、カマーゼン辺境伯への内定は進めるけど」
「恩赦? いつでも使える手じゃないだろ? それとも、カレドニア王国に何か慶事でもあるのか? 」
アンジェラは些か呆れた顔になる。
「何を言ってるのかしら? 帝国の建国と、皇帝陛下の即位って慶事があるじゃないの」
「あ……」
「勿論犯罪者全員が対象になるわけじゃないけど……『皇帝陛下のご意向』ってことなら、よっぽど凶悪な犯罪者でもない限り、大丈夫なはずよ」
「それは助かる、是非頼むよ。じゃあそれはそれでいいとして、後は人間族以外の村民をどうするかだな」
「その村、人間族以外もいるの? 」
「人間族ほどじゃないけど、数はそこそこいるな。各王国に頼めばいいのかな? 」
「私の方で手配するわよ? 犯罪者の情報は各王国から帝国に提出してもらってるから。村民全員の情報をちょうだい」
「わかった、準備させるよ。それと、一つ聞きたいんだけど、読み書きとか計算ができる平民って需要があるのか? 」
「……あるわね。役所とか商会に勤めるのなら必要でしょ? でも、できる平民のは少ないから、貴重な人材よ」
「商会はわかるけど、城以外に役所ってのがあるのか? 」
「そこそこ大きい都市ならあるわね。貴族と平民の仲立ちとか、その地域のとりまとめとか仕事よ。小さい町や村なら、町長とか村長がやる仕事だけど……でも、何でそんなことを聞くの? 」
「その村、全員読み書きとか算数とかができるらしいんだよ」
ユウヤがそう言った途端、アンジェラが顔を輝かせて食いついてきた。
「え!? そうなの? それなら是非、新都に取り込みたいわ! 数はどれくらいいるの? 」
「確か、二百人程度って聞いたけどな。子供も含めてだけど。それにしても、えらく食いつくな」
「貴重な人材って言ったじゃない。ただでさえ引く手数多だから、わざわざ新都市まで来てくれるって人は、なかなか集まらなかったのよ」
「そう言うことなら、ちょうどいいかもな。今度村に行った時に話をしてみるよ」




