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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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邂逅

 それから二週間後。

 「……少し、やりすぎたかな」

 『飛翔』で空中に浮かぶユウヤの眼下に、樹海の中のミステリーサークルのような真円形の平地が広がっていた。既にその面積は、以前見せてもらった都市の最終形態がすっぽりと入るまでに達している。

 デルフォード城で様々な部署の視察をしながら、その合間を縫って『整地』を使い続けた結果、いや成果であった。おかげで、『整地』のコントロールについてもかなり慣れてきていた。

 (アンジェラにあんな言いかたされて、少しむきになっちゃったかな……まぁいいか。土地の確保はこれくらいにして、これからどうするかな)

 ユウヤは顎に手を当て、しばし考える。

 (……建築資材を引っ張ってこなきゃいけないよな。木は大量に確保できてるわけだから……石材だな。確か、南の山にいい石材があるって話だったよな。……あれかな?)

 ユウヤが目星をつけた山に向かうと、山の中腹、木々の隙間に何かが見えた。

 近寄ってみると、何かの道具が散らばっており、明らかに人が掘ったと思われる結構大きな穴が開いている。

 (これは……ひょっとして、試掘の後じゃないか?だとしたら、この山で当たりかな?)

 穴のそばに降り立ったユウヤは地面に掌を当てる。

 「『解析』」

 土属性第5階梯の魔法で、物体の内部構造を調べることができる魔法だ。ユウヤは魔力を段々と強く込めていき、山全体に『解析』の範囲を広げていく。

 (土の下に石があって、その下は……巨大な岩塊になってるな。材質は……大部分はデルフォード城の建材と同じ石だな。やっぱりこの山で当たりか……となると、ここから石を切り出して、あの草原の中心当たりに持っていけばいいんだろうけど……具体的にどうやるか、だな。とりあえず、表面の土を剝がすとするか)

 ユウヤは『整地』を使い、生えている木々を回収しつつ、山を覆う表土を除去していくことにした。



 山の表層の土はせいぜい数mの厚さしかなかったので、三日もたつと山頂近くは丸裸、というか、岩塊を露出させることができた。

 (お次は……石の選別っていうか、分離だな)

 露出した岩塊は、何種類かの石が相当に入り組んで出来ていたため、例のデルフォード城と同じ石だけを切り出すとなると、非常に歩留まりが悪くなりそうだったのだ。

 「表層から……少しずつやっていくか」

 ユウヤは『解析』で石の入り組み方を把握しながら、『整地』でそれを変えていく。

 まるで二種類の粘土を、物質をすり抜けることができる手を突っ込んで、形を弄るようなものである。

 これまでとは全く違う作業となることに加え、魔力を込めすぎるとまた大地震になりかねないため、非常識な魔力を誇るユウヤにとっても非常に時間がかかる、面倒な作業であった。

 それでも一週間を過ぎるころにはなんとか作業が終わり、石材として使える石だけの巨大な塊がなんとか完成した。

 (……やっと終わった。体力とか魔力は問題ないけど、気疲れっていうか……あぁ、疲れたな。今日はここまでにしとくか)




 次の日、山頂で一人ごちるユウヤ。

 「……ここまではいいとして、問題はどうやってこの馬鹿でかい塊を移動させるか、だな」

 昨日までひたすら『解析』『整地』を使い続けたおかげで、山の上の方は建築資材となる石材のみからなる、途方もなく巨大な塊となっている。

 ただし、この塊をどうやって都市予定地まで持っていくかは考えていなかった。

 (『整地』で動かすか?……いやダメだな、動かす塊だけでも小さな山一つくらいあるし、時間がかかりすぎる。だからって一気に動かすとまた大地震になりそうだし。となると……

『収納』だな。……流石にこんなデカいもの、一気に収納できるのか?……これもダメだな。収納できたとしても、取り出したときに設置の衝撃で石材がバラバラになりそうだし、やっぱり大地震になる可能性がある)

 結局ユウヤは、石の塊を小分けにして『収納』し、『転移』で運ぶことにした。でウォータージェットのように細く、高圧にした『水流』を使って、巨大な塊から直方体の石材をいくつも切り出し、『収納』でしまっていく。石材と言っても、一つ一つの直方体は10階建てのビル一つ分もありそうな巨大なものだ。

 (ちょっと懐かしいかな)

 ユウヤはこの世界に来たばかりのころ、絶海の孤島で今使っている『水流』も含めて色々な魔法を試していたころを思い出しながら、作業を続ける。

 (とりあえず、そろそろいいか)

 ユウヤがそう考えたころには、はるか遠くから見ても、山の標高ががあからさまに低くなったのがわかるまでになっていた。

 ユウヤは『転移』で都市建設予定地に戻ると、『収納』で石材を並べていく。とは言っても、一つ一つがビル一つ分もあるような巨大な石材である。収納で取り出して地面に置く度に、巨大な地響き……というか、小規模な地震と共に土埃が濛々と舞い上がる。

 (もう少し静かに置けりゃいんだけどな……流石に無理か。ま、まぁ、周りに人もいないはずだし、大丈夫だろ)

 そうしてひたすら石材を並べていくユウヤ。日が暮れるころには、ようやく収納していた石材を全て設置し終わった。都市建設予定地の中心、そこから六つの方向へ放射状に伸びる直線、そして都市建設予定地の一番外周を中心に、膨大な数の石材が並んでいる。

 (これだけあれば、城と道路と城壁くらいは十分建設できるだろ。後の建物部分は……また山から持ってくりゃいいか)




 また次の日、『転移』で建設予定地に戻ったユウヤ。

 巨大な石材が並んでいる様を地面から地面から見上げると、なかなか壮観である。

 今日からはいよいよ、建築物を建てていくつもりだ。

 城で見た大小様々な模型は細部に至るまで精密に造り込まれた物であり、また受けた説明も微に入り細を穿つものであったため、ユウヤの規格外な記憶力をもってすれば、設計図などなくとも問題はないのであった。

 (さて、何処から手を付けるか……やっぱり城壁からがいいかな。城壁ができれば、ある程度は魔物を締め出せるだろうし)

 建設予定地の外周まで飛んだユウヤは、まずはおもむろに『整地』を使い、外周に沿って幅5m、深さ10mほどの深い溝を掘る。

 『念力』で石材を出来た溝の上に移動させると、その石材に『造型』を使う。直方体の巨大な石材全体が粘土のように蠢き始め、溝を埋めていくと同時に、次第に上の方に伸び始める。時間が経つにつれてそれは元の直方体から、高い壁の形に変形していった。

 (高さはこれくらいだったな。細かいとこは後でまとめてやるか)

 城壁がある程度形になったところでユウヤは一旦手を止め、建造した城壁の横で同じ作業を繰り返し、城壁が少しずつ出来上がっていくのであった。




 作業を繰り返すごとに少しずつコツを掴み、作業効率も上がっていく。

 冷静に考えれば、広大な区域全体ををまるっと囲うのは途方もなく膨大な作業量のはずであるが、それでも一週間を過ぎるころにはなんとか都市建設区域全体を囲う城壁が完成した。

 (……こんなもんだな。流石に時間がかかったけど……まぁそれだけのものはできたかな。……ん? )

 建設作業の間にもしばしば魔物が襲ってくることがあったため、ユウヤは常時かなりの範囲の『探索』を発動しながら作業をしていたのだが、城壁のはるか遠く、『探索』の範囲の一番遠く、カレドニアと都市建設予定地を結ぶ道に、いくつかの反応がある事に気づいたのだった。

 (反応は五つ……魔物じゃないな、人だ。人のことは言えないけど、何でこんなところにいるんだ? 旅人かな? ……ちょっと行ってみるか)

 ユウヤは『飛翔』で移動し、反応がある少し手前で地面に降りると、とりあえず歩いて近づいていく。

 しばらく歩いていくと、五人の姿が見えてきた。いずれも男であり、一人は竜人族に見えるが、後は人間族のようである。

 五人とも弓や剣、皮の鎧等を身に着けてはいるが、重武装ではなく、戦士というより狩人といったいでたちである。旅人なら食料などの荷物を抱えていそうなものだが、誰も武器以外の荷物は持っていないようであった。

 五人はユウヤに気づくと、話をしながら近づいてくる。小声で話しているつもりのようだが、聴覚が鋭いユウヤには丸聞こえだ。

 「おい、ほんとにやるのか」

 「仕方がないだろう? みんな腹をくくれ……なるべく怪我はさせるなよ」

 「よし、行くぞ。とりあえず囲め」

 男の一人がそういったのを合図に、全員が走り始め、ユウヤを取り囲む。

 「よぉ、兄弟。会ったばかりで悪いんだが、金目の物をよこせ。なに、身ぐるみ剥がすとまでは言わねぇよ、半分でいい」

 「おいおい、俺が金を持ってるように見えるのか? 見てのとおり手ぶらだぞ? 」

「荷物も持たずにこんな何もない山奥を歩いてるわけがねぇだろうが。大方旅人か何かで、食料とか金は『収納』で仕舞ってあるんだろう? 魔人族だしな。身なりから言っても、貧乏人には見えねぇな」

 確かに、ユウヤの『収納』はかなりの金額、どころか一財産が入っている。

 「まぁ、それは当たってるかな。で、いやだといったらどうするんだ? 」

 「出すっていうまで叩きのめす。手加減はしてやるつもりだが、こんなところで怪我をしたくはないだろう? 」

 ユウヤは思わず苦笑した。

 「怪我? 俺が? ……やってみ? 」

 「おいおい、五対一だぞ。こっちは腕に覚えもあるんだが……いいんだな? 」

 「腕に覚えねぇ……いいだろう。もし怪我の一つもさせられたら、全財産を進呈しよう」

 「この野郎……舐めやがって! 」

 一斉に五人が襲い掛かってきた。

 それぞれが拳を振り上げ、蹴りを放ち、あるいは掴みかかってくるが、ユウヤは当然のようにひょいひょい躱し続ける。

 腕に覚えがあると言っていたのは嘘……とまではいわないが、せいぜいが普通の兵士、その中でも中の上レベルでしかなかったようだ。

 ユウヤとしては、相手の攻撃を躱したり受けたりするより、寧ろうっかり本気で反撃してしまわないように気を遣う方が面倒なくらいであった。

 (俺の力じゃ、一撃入れるだけでも殺しかねないしな。いや盗賊か何かだろうし、殺しちゃってもいいか? でもこいつら、剣も抜かないしな……流石に殺しちまうのはなぁ……でも、何で武器を使わないんだ? )

 そう考えながらも、のらりくらりと十分もあしらい続けていると、賊たちは疲れてきたのか、段々動きが鈍くなってきた。皆ユウヤを睨みながら、肩で息をしている。

(とりあえず、一旦終わらせるか。殴るのは加減が難しいから……)

 殴りかかってきた男の腕をつかみ、一本背負いの要領で投げ飛ばす。男は「ぐえっ」と声を上げて、大の字になり、動かなくなった。

 次の瞬間、ユウヤは他の男の懐に潜り込みざま両手で担ぎ上げると、ボディスラムの要領で地面に叩きつける。無論さっきの男同様、なるべく手加減はしたが。

 残りの男たちもあっさりと投げ飛ばし、その場に立っているのはユウヤだけになった。

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