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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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都市計画

 「コンプトン卿、忙しいだろうに、すまないな」

 「構いませぬよ。ユウヤ様が顔を出されれば、皆の士気も上がるでしょうから。とりあえず本日は、帝都の建設計画からご覧いただきましょう」

 ユウヤはコンプトン卿に案内され、城の一室に入る。大広間と言っていいほどの広い部屋だが、人がいるのは部屋の入り口の一角のみである。

 20人ほどが幾つかに分かれてテーブルを囲み、活発な議論を行っている。それぞれのテーブルには、大小さまざまな模型が乗っていた。

 部屋の残りの大部分は、巨大な都市の模型で占められていた。全体が円形をしており、その中心近くには小さい同心円の区画、さらに一番中心にも更に小さな同心円があり、そこには城らしき建物が配置されている。

 一番外側にはぐるりと城壁が配置されており、また中心からまっすぐ伸びる道路で、都市全体がピザのように分けられていた。

 議論をしていた者たちの中にいたアンジェラ王女が顔を上げる。

 「ユウヤ、いらっしゃい」

 「お疲れさん。この後ろの……巨大な模型がインぺリアってことか? 」

 「まぁそうなんだけど、これは最終的な、完成形ってところよ。この模型の形を目指して開発を進めていくんだけど……この模型の形になるのは、何世代も後のお話でしょうね」

 「そんな未来のことまで計画する必要があるのか? 」

 「それは……新たに理想の都市を建設するっていうことで、担当者達が張り切りすぎたって言うか……暴走した結果なのよね」

 部屋にいた担当者達がそっと顔をそむける。

 「まぁ、新しく首都を建設しようっていう大きなお話だから、後々のことまで考えることは大切よ。当面の、現実的な計画としては、こっちね」

 アンジェラはそう言って議論していたテーブルの上に乗っている模型を指さす。

 「こりゃまた全然サイズが違うな。縮尺が違う……わけでもないな。真ん中あたりの区画は同じ大きさだし」

 「そうね。フリッツ、説明してもらっていいかしら」

 指名されたドワーフが一つうなづき、話し始めた。

 「はっ、では新たな首都インぺリアの概要について説明させていただきます。まずはこの模型の一番中央、こちらが王城になります。また、王城の周りを円形に囲む部分、これは貴族街になります。王城と貴族街は中心にあり、後で拡張することは難しいこと、貴族の数はそれほど増えるわけではないことから、最初からある程度区域を広めに確保しまして、以降は拡張しないという方針です。貴族街の外が商業・工業区域、一番外が平民の居住区になります。こちらは人口の増加に応じて拡張していく予定です。また、王城以外の都市全体を、王城から放射状に伸びる道路で6区画に分け、各区画を1種族に割り当てる予定になっております」

 「商業・工業区域を拡張する予定って言ったけど、外に居住区があるのに、どうやって拡張するんだ? 」

 「その時には、居住区を取り壊すことになりますね。もっとも、数十年後の話になるでしょうが」

 「だったら最初から広くとればいいんじゃ……城壁も作り直しになるんだろ? 」

 フリッツが顔をこわばらせるのを見て、アンジェラが口を挟む。

 「都市建設にかかる人手や時間を考えると、到底無理ね。まずはなんとかこの小さいほうの模型の形に持っていって、後は人口の増加にあわせて少しずつ拡張するしかしょうがないのよ。まぁ手戻りもあるでしょうけど」

 アンジェラは小さいほうの模型に目を向ける。

 「ユウヤも見たでしょ? 今現地には何もないのよ。あそこにまず仮の拠点を作って、森を切り拓いて、測量して、建設資材を持ってきて……こっちの模型の方を建設するのだって、10年くらいはかかるわよ」

 「建設資材なんてどこから持ってくるんだ? 」

 フリッツが答える。

 「石材は現地の南側の山から調達いたします。高品質の石材が採掘できますので。木材につきましては、現地で伐採した木を利用できますが、乾燥させませんと木材としては使えませんので、そのための施設と人員も必要です。勿論時間も」

 「なるほどねぇ、先は長いな。ところで、そっちの模型は城か? ずいぶん大きいけど」

 「そうです。ここデルフォード城を参考に作ってあります。こちらの模型は、このように」

 フリッツは、おもむろに城の屋根を取り外した。

 「内部まで作成済みです。こちらが陛下の居室、隣の、この六部屋が各皇后陛下の居室……」

 フリッツは模型を上の方から分解しながら、城の構造を事細かに説明する。

 「……最後に地下2階、こちらは結界の間となっております」

 「結界の間ってなんだ? 随分広いけど」

 「都市全体を覆う、魔物除けの結界を張るための魔法陣を設置する部屋です」

 「結界? そんなもん、どこの都市でも見たことないけど? 」

 「不可視の結界ですから、ユウヤ様はご存じないのでしょう。何処の都市でも町でも、それこそ名のない開拓村でもない限り、普通は設置しているものです」

 「……そうなんだ」

 その後もそれぞれの模型の解説を始めとして様々な説明があり、その日は過ぎていくのであった。



 次の日。

 「ここがあの模型の中心地になるわけだよな」

 ひとりごちるユウヤの姿は森の中、定礎の儀式を行った祠の側にあった。

 都市開発が途方もなく人手も時間もかかると説明を受けて、自分にできることがないか試しに来たのだ。ここには勿論『転移』で瞬間移動してきた。

 もちろん皇帝が直接やるべきことではないことではわかっているし、そもそも普通は一人で意味があることをやれるはずもないのだが、ユウヤには常軌を逸した魔法の力がある。

 (とりあえず……木を何とかするところからだな。『風刃』で伐採……しても、根が残るよな。『火球』で燃やすのは……延焼でとんでもないことになりそうだな。大体、木は木材にするって言ってたから、燃やすのは論外だろうな。となると……とりあえず、やってみるか)

 ユウヤはしゃがんで掌を地面に添えると、自分の目の前、半径10m程度の範囲に『整地』を使ってみた。

 鳴動と共に、木々が地面から徐々に押し出され、傾き始める。ブチブチという大きな音が地面から絶え間なく鳴り響き出したのは、細い根が切れる音なのだろう。

 そのうち木々が地響きを上げて倒れ始め、一分もたったころには範囲内の全ての木々倒れ、折り重なっていた。ユウヤは倒れた木々を『収納』で片づけていくと、生い茂った下生えの下の地面は、完全にフラットになっているようだ。

 (よさそうだな。下生えは……後でまとめて燃やせばいいか。じゃ本番行くか)

 気をよくしたユウヤは効果範囲を一気に広げて『整地』を使ったのだが……

 「うおっ!? 」

 鳴動……どころではない。大地が凄まじい音と共に立っていられないほど揺れ動き始め、転んだユウヤは慌てて魔法を中断した。

 (前世で地震にはそれなりに慣れてたけど……それどころの揺れじゃなかったな。この辺には町どころか人もいないはずだから良かったようなものの……町の近くだったら大惨事になるとこだったな。冒険者とか旅人とかもいるかもしれないし、今後は気を付けよう)

 ユウヤは気を取り直し、どれくらい魔力を込めればいいかを探りながら、ひたすら『整地』を使い続ける。

 日が傾くころには、祠を中心として、かなり広い範囲の木が無くなっていた。ちょくちょく魔物が襲いかかってきたが、その悉くがあっさり返り討ちになっていた。

 (大分いい感じで慣れてきたかな。これなら、数日あればあの小さい模型の範囲くらいは確保できそうだな。倒した木は『収納』で片づけたけど……この魔法、どれだけ収納できるんだろ。まぁ、なんか問題が出てきたら、その時考えればいいか)

 ユウヤは今日一日の成果、広がった平地を満足に見やると、『転移』でデルフォードに戻った。




 「きゃぁっ! 」

 突然部屋に現れたユウヤを見て、オリヴィアが腰を抜かす。

 「……え!? あ……ユウヤ様!? 一体どこから? 」

 「あぁ、『転移』を使ったんだ。驚かせちまったみたいですまんが、こればっかりは慣れてくれ。後、お茶を入れてくれるかな」

 「承知いたしました」

 気を取り直したオリヴィアが淹れてくれたお茶を呑みながら、ソファで寛ぐユウヤ。

 「あら、帰ってきてたのね」

 オリヴィアが部屋から退出するのと入れ違いに、アンジェラが入ってきた。

 「今日は一日外出してたみたいだけど、城下町にでも行ってたのかしら? 」

 「いや、新都市建設地に行ってた」

 「え? あんな遠い所にどうやって……って、『転移』ね? 」

 「そういうこと」

 「一回行ったところならいつでも行けるって、便利ねぇ。でも、あんな所に何をしに行ってたの? 祠くらいしかないのに……」

 「俺も少し手伝おうかなぁ、ってね」

 「手伝うって、何を? 」

 「整地したり、木を引っこ抜いたりだな。人手が足らないんだろ? 」

 「皇帝陛下直々にすることじゃないでしょ。そもそも、都市を一つ整備するって話なのに、一人で何ができるっていうの? 」

 アンジェラが苦笑する。

 「意外とやれることはあるぞ。魔法を使ってだな……」

 「はいはい。ユウヤがやりたいのなら、止めはしないわよ。少しでも整地とか伐採をしてくれれば、皇帝陛下が手づから開拓されたっていう宣伝にもなるし。でも、時々はこっちに顔を出してね。皆士気が上がるから」

 小さな子供を優しくあしらうかのように微笑むアンジェラであった。

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