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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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建国会議

 次の日。

 「お早うございます」

 ユウヤはやたら元気のいい声で起こされる。

 (……誰? )

 ベッドから半身を起こし、寝ぼけ眼を擦るユウヤ。

 目の前には侍女のお仕着せを着た女性が立っていた。目鼻立ちがよく整いつつも多少童顔気味な顔だちに、笑顔がよく似合っている。

 傍らにいるコンプトン卿が口を開いた。

「お早うございます。この者はユウヤ様の専属侍女となりました、オリヴィアと申します。今後、重要な案件以外はオリヴィアを通じて連絡いたしますので、ご承知おきください」

 「オリヴィアでございます。よろしくお願いいたします」

 侍女は両手でスカートを摘まみ、優雅に一礼する。

 (何でこんなニコニコしてるんだろ、この人)

 「……よろしく」

 「他の専属侍女については改めて紹介いたします。それよりも、本日は帝国建国についての会議がございますので、朝食が終わりましたら、会議室にお越しください。オリヴィアが案内いたしますので。私はこれで失礼いたします」

 うっそりと頭を下げ、コンプトン卿は退室した。




 紅茶をすすっている間に、朝食を準備するオリヴィア。

 朝食はシリアルにベーコンエッグ、ソーセージに肴の燻製、マッシュルームのソテーと至ってシンプルなものであるが、さすがに素材と調理には気を使っているのであろう、なかなか旨いものである。

 (考えてみりゃ、こんなにのんびりと、ちゃんとした料理を食べるのも久しぶりなんだよなぁ。ここんとこ軍糧ばっかだったし。それにしても……)

 「オリヴィア、だったよな。初対面でこんなことを言うのも何だけど、さっきから、何でそんなにご機嫌なんだ? 」

 オリヴィアはにっこりと微笑む。

 「もちろんですわ、ユウヤ様の専属侍女としての初仕事ですもの」

 「……それって、そんなに喜ぶような事なのか? 」

 意外そうな表情をするオリヴィア。

 「……ご自覚しておられないのですか? ユウヤ様は先の戦争の英雄中の英雄にして、帝国初代皇帝となられる方ですのよ? 」

 「まぁ……確かに、そう……だな? 」

 「そのユウヤ様の専属侍女の座ですもの、選考は熾烈を極めたのですよ。その中で、私は専属の座を掴んだのです」

 オリヴィアは胸を張って見せる。

 「そ、そう……なんだ。まぁ何だ、よろしく……頼む。ところで、他にも専属がいるって聞いたけど、何人くらいいるんだ? 」

 「私も含めて5名おります。ただ、他の者は期間限定になりますけれども」

 「期間限定? 」

 「ええ。ユウヤ様には六王国から一名ずつ、六名の侍女がつくことになっております。ただ、他国の侍女は今から選定中なので、それが決まるまでの期間のみの専属となります」

 「オリヴィアはずっと俺の専属ってことか? 」

 「はい! 」

 満面の笑みを浮かべるオリヴィア。

 「じゃあ、今後よろしく頼むよ」

 「こちらこそ、末永くよろしくお願いします」

 (末永くって……結婚するわけじゃあるまいし)




 会議の出席者はかなり多かった。

 最前列に各国の王や女王、隣に姫、というかユウヤの婚約者? が並び、後ろに宰相と大将軍、ただしコンプトン卿が議長となっているせいか、カレドニア王国のみ副宰相が座っている。宰相その後ろにもずらりと官僚らしき人々が並んでいた。

 先日の戦争の顛末について報告があった後は、これから建国される帝国についての議題となった。

 法などについては元々協議が重ねられており、概ねの所はまとまっていることが報告され、今後各国の貴族の世継以外から帝国貴族を選出することなどが決議される。

 そのあたりはいいとして、帝国首都を設置する場所は各国の中心近くにあるとある地点と決まっているが、そこは現在見渡す限り、無人の広大な樹海が広がっているだけの土地であり、今から開発を始めるらしい。

 げんなりしたユウヤが口を挟む。

 「一から樹海を切り開いて都市を作るって……十年単位でかかるんじゃないか? 」

 「六王国共同の大事業ですから、予算は潤沢にあります。大陸中の主要ギルドにも全面的に協力させますので、各種職人も数多く振り分けることも可能です。まずは城やギルドなどの基幹的な建築物を集中的に建設すれば十年はかからぬと思われます。然るのち、居住地区などを段階的に広げていくという形を取る予定です」

 「どっちにしろ、建国は当分先ってことか」

 「いえ、各王女殿下の輿入れをそこまで伸ばすわけにもまいりませんので、年内には仮即位式を挙げ、同時に祝言という運びになります。そこから暫くはこの城に臨時政府を置くことになるかと」

 「なるほど。了解した」

 それからも延々と続いた会議であったが、ようやく議題が尽いたところでユウヤが質問を投げかけた。

 「ところで……皇帝の役割というか権限って言うか……仕事ってのはどういうものになるんだ? 今までそんな話はなかったと思うけど……」

 「あぁ、法の進捗に含まれておりましたので、皇帝陛下の権限そのものについては議題になっておりませんでしたな。詳細は後日説明させていただきますが、簡単に説明しますと、重要事項の決議、重要な催事の主催、及び国王……失礼、皇帝大権になります」

 「前の二つはわかるけど……皇帝大権って? 」

 「皇帝陛下の決定が帝国の全ての法律に優先するという権利でございます」

 「は? 」

 「六王国いずれにも国王大権というものがあり、国王陛下の決定は国内のいかなる規定も覆すことができるのです。その帝国版とお思いいただければ」

 「……それって無茶苦茶なんじゃ……」

 「そうお思いいただけて幸甚です。皇帝大権は伝家の宝刀とも言うべきもので、下手に振りかざすと国が崩壊しますゆえ、くれぐれも乱用はなさらぬようにお願いいたします。乱用された場合、周囲の者がお止めすると思いますが……」

 「……わかった」

 「では最後になりますが、ユウヤ様に決めていただくべきことがございます」

 「決めるべきこと? 」

 「第一に国名と首都名、第二にユウヤ様の姓、最後に皇后陛下の選定です。今ここで決めるのは難しいでしょうから、なるべく早くということで結構です。決め難ければ我らに一任ということでもよろしいですが」

 (姓は安原なんだけど……そう言えば、この世界では名乗ってなかったっけ。うーん……)

 ユウヤはしばし考え込む。

 「……国名はヘキサゴニア、首都名はインぺリア、姓は……ユリウスでどうかな」

 「六王国から成る国でヘキサゴニア、皇帝陛下の都市ということでインぺリアというわけですな。ユリウスというのは? 」

 (ローマ帝国の皇帝っていうのは……通じるわけないよな)

 「前世の古の皇帝の家門ってとこだな」

 「承知しました。後は最も重要な、皇后陛下ですが」

 「六人とも一緒に迷宮に潜ったから、多少人となりは知ってるつもりだけど……皇后を選ぶとなるとなぁ……」

 「我らに一任していただくということでもよろしいですが」

 「……ところで、皇后と皇后以外の、えーっと……皇后以外の妻は何て言うんだ? 」

 「副后閣下でございますかな? 第一副后、第二副后……といった形になりますが」

 「皇后とその、副后の職務は? 」

 「皇后陛下の職務は皇帝陛下とともに重要事項の決議、重要な催事の主催です。副后閣下については、各王国では重要度が多少劣る案件を扱うのですが、帝国ではそれに加えて六王国それぞれ長ずる分野に関する事項を担当する予定ですな」

 「長ずる分野? 」

 「例えば、カレドニアが最も盛んである商業についてはアンジェラ殿下が扱い、カネム・ボルヌが最も長ずる魔法についてはアディオラ殿下が担当する、といった具合です。連合帝国であるが故の措置ですな」

 「うーん……それならいっその事、六人とも皇后ってのはダメなのか? 」

 俄かに議場がざわりとする。

 「は? ……それは、ちょっと……皇后が複数人など、聞いたこともございませんが」

 「思いつきで悪いんだけど、一応理由はあるんだよ……今から六王国は対等の立場で合併するんだよな? 誰か一人だけ皇后を立てると、対等と言えないんじゃないかな? 」

 「それは……まぁ、確かに」

 「それに、各国の得意分野についてはそれぞれが担当するって話なら、副后って身分にあんまり意味はないんじゃないか? 」

 「……確かに……」

 「確かどの国も一週間は七日だったよな? だったら、例えば曜日ごとに担当する皇后を決めて、残る一日は全員が出席して、最重要儀式のみ行うとか言うのはありじゃないかな」

 「……なるほど。検討の余地はあるかもしれませんな……ただその場合、各王国にどうやって序列を付けるかが問題ですが……」

 「序列? 」

 「先程のお話にあった、各皇后陛下が担当する順序や、六王国が参加する催事や儀式の際に、呼び出しや入場等をどの種族から行うとか、そういったことです。本来は、下らないことのようですが、貴族社会ではこういうことをきっちりと決めておかないと要らぬ騒動の種になります。特に今回は、六王国にかかる話ですので」

 「なるほどねぇ……どうするかな……」

 「いいかしら」

 発言を求めたのはアンジェラ王女である。

 「人間族、エルフ族、竜人国、ドワーフ族、天使族、魔族の順序でどうかしら? 人間族 が一番最初になるのは、ちょっと申し訳ないけれど」

 出席者の注目を一身に集めたアンジェラ王女にコンプトン卿が尋ねる。

 「それは、どういった序列ですか? 」

 「序列じゃなくて、順序ね。各国に序列を付けるのは望ましくない。でも、何らかの順番を付ける必要はある。それなら、序列じゃなく順番とわかる方法で、何ならそれが建国に纏わる順番であれば一番いいんじゃないかしら? ……これはね、初代皇帝陛下になるユウヤ……様が国を訪れた順番よ」

 議場が暫くざわついたが、落ち着いたところでカネム・ボルヌ王国のエカラデルハン7世が発言を求めた。

 「我が国は構わぬ。先の戦争は元々我が国のことであり、序列が最下位となることは想定しておった。寧ろ、序列ではなく順序とした配慮に感謝する」

 「序列ではなく順序ということなら、我が国もかまわなくてよ」

 エピルス王国のアルテミシア5世も同調する。

 「他、ご意見はございませんかな……無いようですな。では、国名、首都名、皇族の姓、皇后陛下についてはそのように。皇后陛下の件については法案の修正も必要ですので詳細を詰めねばなりませんが、これについては決まり次第お知らせいたします」

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