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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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チャド=ヨルバ会戦 2

 『飛翔』を使い、噴煙の中まで飛び込んだユウヤ。

 (人間がいられるような環境じゃない……けど、熱くもなんともないな……視界も問題なし、と。轟音だけは防げてないけど、まぁ耐えられないほどじゃない。これならなんとか行けるな。逆に、こんな状況で何も問題がないってのが凄く違和感あるけどな。さて、一番手近な反応は……と)

 ユウヤは『探索』に引っかかった一番近くの反応に『飛翔』で飛んでいく。

 (……いた。将軍級……なんだろうけど……これは……)

 木々が吹き飛び、地肌が露になった山の中腹に、一体の悪魔がいた。

 いや正確には、半死半生でわずかに痙攣していた。

 その巨大な体躯は、明らかにそれが将軍級であることを示していた。

 しかし、着ていたであろう衣装は跡形もなく吹き飛び、腹からは内臓が飛び出し、左手は肘でちぎれ、他の手足も変な方向に曲がっている。

 全身がどす黒い血に塗れており、人間なら間違いなく生きていられるような状態ではない。

 それでも流石は将軍級と言うべきか、その目の光は消えておらず、轟音の中で何を言っているのかわからないが、口をぱくぱくと動かしている。

 体の至る所にある傷からは煙が噴き出し、少しずつではあっても体の再生が始まっていることを示していた。

 ユウヤはアグラヴェインを抜くと、抵抗されることもなくあっさりと首を刎ねる。

 刎ねられた首は転がり落ちながら、残された体と共に霧のように分解していった。

 (さすがに、将軍級がここまでボロボロになってるとは思わなかったな……『探索』じゃどういう状態かまではわからなかったし。これなら止めを刺していくだけですみそうだ。再生されても不味いし、ちゃっちゃとやってくか……ん? )

 ユウヤの『探索』が、はるか遠い盆地の外側、それも両軍が対峙しているのと逆側を、ヨルバ平原の方へ北上する敵の集団を捉えていた。

 (何だこいつら? ……ダメージを受けてるようでもないし……最初から盆地の外にいたのか? )

 すぐさまフェイに念話を入れる。

 『フェイ、聞こえるか? 』

 『聞こえるわよ。大丈夫なの? 』

 『ああ、大丈夫だ。今盆地内の残敵掃討を始めたところなんだけど……無傷っぽい敵の集団を発見した』

 『何ですって!? どこに? 』

 『アビジャン回廊とはチャド盆地を挟んで逆側の方なんだが……盆地の外を進軍してるな。進軍速度からすると、騎馬隊じゃないかな。ヨルバ平原まではもうしばらくかかりそうだ。盆地内の敵は半死半生みたいだし、なんなら掃討を中止してこっちの敵に対応しようか? 俺がいるところとは大分距離があるから、少し時間がかかるけど……』

 『そうね……。ユウヤはやっぱり掃討を続けた方がいいと思うわ。盆地に残ってるの悪魔は、あの『隕石』を生き延びたんだから、相当に強力な個体でしょうし、半死半生と言っても、再生能力があるんだから、なるべく早く倒した方がいいわ。その新しい敵には、竜人族軍と魔導士軍に対応してもらう事にしましょう。大分混乱も収まってきたし』

 『わかった。そっちは頼む』

 ユウヤは『探索』で状況を確認しながらも、盆地内の悪魔を掃討していく。

 体勢を立て直した三か国軍は既に、予定通り反乱軍と激突している。

 竜人族軍も竜型となったのであろう、かなりの速度で移動しており、件の新しい敵に近づきつつあった。




 (意外と手間がかかるな)

 ユウヤは盆地内の残敵の首を次々と刎ねていく。

 生き残ったとは言え、殆どの悪魔はまともに身動きもとれない半死半生の状態であり、止めを刺すこと自体は難しくなかっが、生き残った悪魔は広い盆地の周辺部全体にまんべんなく散らばっている上、その多くが降りかかる大量の粉塵に半ば埋もれており、探すのに意外な手間がかかったこともあり、掃討が終わるころには結構な時間が経過していた。

 『フェイ、こっちはもうすぐ終わりそうなんだが、他の状況は? 竜人族軍が例の新しい敵と戦闘中みたいだが』

『それなりの被害は出ているけど、概ね順調ね。悪魔はほとんど兵士級みたいだから、時間の問題と思うわ』

 『三か国軍はあまり動いてないみたいだけど』

 『ずっと膠着状態ね。反乱軍がアビジャン街道の入口まで後退したから、狭すぎてこっちも大軍を展開できないみたいよ』

 『わかった。こっちが片付いたら、また連絡する』




 『隕石』の発動からかなりの時間が経過し、ようやく噴煙や轟音も落ち着きつつあった。

 日も少し傾いてきている。

 チャド盆地の残敵も、いよいよ後一体を残すのみになっていた。

 ユウヤが『探索』で確認すると、竜人族は例の敵の包囲網を完成しつつあった。

 (これなら心配はいらなそうだ、時間の問題だろう。三か国軍はまだ膠着状態だけど……こっちも後は一体だけ……あれか)

 ユウヤの行く手に、最後の一体となった悪魔がいた。

 特別強力な個体なのか、それとも再生する時間を与え過ぎたのか、その個体は負傷も既に癒えており、両の足でしっかりと立っていた。

 姿を隠しているはずのユウヤの方を見やると、ゆっくりと口を開く。

 「そこ……何かいるな」

 ユウヤはガラハッドの魔力を切り、姿を現す。

 「見えないはずなんだけどな……何でわかった? 」

 「簡単なこと。これだけ粉塵が舞っている中で、人の形をした何もない空間があった……まぁそんなことはどうでもよい。貴様ら人間ども、何をした? この状態は……一体……」

 「『隕石』だな」

 悪魔が口角を上げ、嘲笑する。

 「『隕石』? 炎の、最上級か? ……笑わせるな。貴様ら人間ごときが、第七階梯の魔法など操れるわけがあるまい。我が軍団に蹂躙されるためだけの存在に過ぎぬ、矮小なる人間ごときが」

 「まぁ、信じなくてもいいけどな。それと、今言ったお前の軍団とやらなんだが……もうどこにもいねえぞ。残ってるのはお前だけだ」

 「……戯言を……さては、次元の狭間ではぐれたか? ……まぁよい、そのうち合流できるであろう。とりあえずは、目に入る人間どもの殺戮に興ずるとしようか……とりあえず貴様からだ。『魔弾』」

 人の放つそれとはあからさまに規模も威力も違う『魔弾』がユウヤを襲ったが、収斂した『結界』にあっさり受け止められ、悪魔は首を捻る。

 「ぬ……? わが『魔弾』が、人間ごときのちゃちな『結界』に受け止められた……だと? 何故だ? 」

 「あー、考え中にすまないんだが……こっちも暇じゃなくてな。何処にもいないとは言ったが……すぐお前の軍団の所に案内してやるよ」

 ユウヤは『加速』『剛力』を使うと、悪魔の側を凄まじい速さで通り抜けざま、魔力を収斂させたアグラヴェインを一振りする。

 「な……」

 悪魔の首がその体から転がり落ちる。

 何が起こったか理解できないといった表情を浮かべたままの首は、つい先ほどまでそれが乗っていた体と共に、霧のように分解し、消滅したのであった。

 (何か時間を無駄にしたな。相手をするんじゃなかった)

 『ユウヤ』

 『フェイ、どうした? 』

 『やっと観測装置を再起動できたんだけど、チャド盆地に敵の反応が全く検知できないの。壊れてるのかも……状況を教えてもらえる? 』

 『ああ、壊れたわけじゃないんじゃないか? ちょうど今全滅させたところだからな』

 『えぇ? そう……なんだ……」

 『他の状況は? 』

 『三か国軍と反乱軍の戦いは相変わらず膠着状態よ。あの隘路じゃ大規模な戦いは難しいし……そうそう、例の別動隊はさっき降伏したわ。竜人族は捕虜の監視を残して移動中。反乱軍の背後を突く予定よ』

 『で、俺はどうすりゃいいんだ? 』

 『……特に指示は出てないけど……大丈夫なの? 魔力も体力も、枯れ果てるなんてレベルじゃないはずじゃ……』

 『全く問題ないな。じゃあ、とりあえずこっちの判断で動くから、何か指示があったら教えてくれ』

 ユウヤは再びガラハッドに魔力を込めて姿を消すと、反乱軍の方へ飛び去った。

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