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安直勇者 ~俺はなんでも安直に解決できる勇者様~  作者: 差肥塚 祝


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謎の儀式

 衛兵が帰った後、部屋で話し込む二人。

 「それなりには成果はあったかな」

 「ええ、重要な点から整理すると、まず既に悪魔が召喚されている可能性が高いわね」

 「そうだな。信憑性は今ひとつとしても、噂をしてた奴が消えたってのは怪しい」

 「次に、チャド盆地の住民は行方不明。あの話じゃ、城外に出たってのは考えにくいわね」

 「城内に幽閉されてるって線は? 」

 「……考えにくいわね。城の中には牢もあるけど、チャド盆地の住民全部が入れる程じゃないし。最後に、アリーユ・ダッバレミが何処に行ったのか。以上三点かしら」

 「そんなところだな。で、ここからどうする? 」

 「そうね……どれも確証の取りようがない情報だけど……それでも追える可能性があるとすれば…は、悪魔がいるかどうか、ね。夜間外出禁止令が気になるわ。ひょっとしたら……」

 「夜間に悪魔が出現する可能性がある、と」

 「ええ。今から夜陰に乗じて偵察してみましょう。召喚されてても城に籠ってたら意味はないけど、今できることはこれくらいしかないでしょうから。見つかるリスクはそれなりにあるけど、最も重要な情報だし……」

 「それなら、俺一人で行った方がよくないか? 『試練の迷宮』で真っ黒なローブを手に入れたから、目立たず行動できそうだし、万が一の時には『転移』でここに戻ればいいしな」

 「そうね……手伝ってもらってる身で気が引けるんだけど……お願いしてもいいかしら」

 「任せてくれ、今から行ってくるよ」

 ユウヤは『飛翔』を使い、窓からそっと外に出ると、目立たぬように城の方に向かった。




 宿から城まではそれなりに距離があったが、衛兵の目をかいくぐりながら、ほどなく城にたどり着いたユウヤは『飛翔』を唱えると、人目を気にしながら慎重に城の上に辿り着く。

 城は他国に劣らず壮大な規模のものであった。ただし、その色は暗闇に溶け込むような黒一色である。

 (城壁も黒かったけど、城まで真っ黒とはね。そういえば砦と同じ封魔石でできてるっていう話だったよな。さて、このあたりで)

 ユウヤは『探索』を使う。

 (……思ったより人は少ないようだな。殆どの人が動いてないのは……寝てるからだろうな。動いてる連中は……見回りってところだろうな。城の真ん中は中庭になってて……ん? 人が集まってるな。とりあえず行ってみるか)

 ユウヤは中庭が見降ろせる所まで移動する。広い中庭の大部分には一つの巨大な円形の魔法陣が施されており、その周りに大勢が蠢いていた。

 (……やっぱりいたか)

 それらは、あからさまに人ではなかった。一見人のように見えなくもないが、背中に大きな蝙蝠のような一対の羽、頭にはやはり一対の角が生えていた。

 殆どの者は人間と同じ程度の身長で、衣服を全く身に着けておらず、赤黒い裸体をさらしている。

 数体のみ、他の者より二回りほど大きく、服を身にまとっている者もいた。

 最もその服は『試練の迷宮』で戦った悪魔に比べると、かなり簡素なものではあったが。

 (『試練の迷宮』にいた奴と比べると……かなり弱そうだから、中位とか下位の悪魔なんだろうな。数は……服を着てない奴が百体、着てる奴が五体ってとこだな。しかしこいつら、こんな時間に何を……ん? )

 中庭に面した建物の扉が開き、ぞろぞろと人が出てきた。先頭に魔術師らしき者が一人、その後には数名の騎士らしき者。

 その後には、平民らしき恰好をした老若男女、十名ほどが猿轡を嵌められ、縄で数珠つなぎにされて、引きずられるようにしてついてきていた。

 魔術師が魔法陣の側に立つと、悪魔たちも魔法陣の周りに整列を始める。騎士たちは縄で数珠つなぎにされた者たちを魔法陣の中心まで連れていくと、自分達だけ魔法陣から出て、魔術師の後ろに控える。

 魔術師が何やら呪文を詠唱しながら身振り手振りを始めると、悪魔たちもそれに倣う。

 すると、魔法陣が微かに何か禍々しさを帯びた紫色の光を帯び始めた。延々と続く呪文と身振り手振りは段々激しくなっていき、それに合わせるように魔法陣の光も強くなっていく。

 そうして十分を過ぎたころ、変化が起こった。魔法陣の中の十人が突然苦しみ出したのだ。

 縛られて碌に身動きもとれないまま、呻き声をあげながらその場でのたうち回る。

 悪魔たちの呪文と身振り手振りはさらに激しさを増していく。そしてそれが最高潮まで達したと思った瞬間、突如魔法陣全体が眩い閃光を放ち……閃光が消えた時には、魔法陣の中には誰も残っていなかった。

 (!? ……消え……た……)

 兜「ベディヴィア」の特殊能力のおかげで、ユウヤの目は眩むことなく閃光の瞬間を捉えていた。十人は爆発したり、転移したわけではない。間違いなく魔法陣が光ったあの一瞬に、跡形もなく消滅したのだ。

 (何が起こった? 何の儀式だったんだ? ……くそっ、フェイさんを連れてくるべきだったか)

 ユウヤが考えている間に、消えた十人以外の人間と悪魔たちが、建物の中に入っていく。

 それからもしばらく『探索』で観察を続けたが、建物の中で魔導士、騎士、悪魔に分かれた上で、それぞれ特定の場所に移動した後は、ほとんど動かなくなった。

 (……偵察はこれまで、だな。あの魔導士、城の一番奥まで移動したってことは……あれが魔王だったのかもしれないな。……まぁいい、そろそろ戻るか)




 「きゃぁ!? 」

 宿の部屋で、フェイが小さく悲鳴を上げる。

 「俺だ、俺」

 「ユ……イサム!? あぁ、『転移』で戻ってきたのね……心臓に悪いわよ」

 「すまんすまん。先に寝てればよかったのに」

 「そういうわけにはいかないわよ。で、どうだったの? 」

 「結論から言うと、悪魔がいた。服を着てない小さめの奴が百体ほどと、服を着てる大き目の奴が五体」

 フェイの顔が強張る。

 「……服を着てない方は、兵士級ね。服を着てる方は……まさか……将軍級……」

 「将軍級じゃないな。あいつよりは少なくとも数段弱そうだったし」

 「あいつ? 」

 「将軍級とは戦ったことがあってな」

 「あぁ、そうだったわね。じゃあ隊長級か……思ったより悪い状況だけど、最悪じゃない、と」

 「まぁ、俺が見たのが全部とは限らないけどな」

 「そうね……。それはそれとして、偵察の結果を具体的に教えてもらえるかしら? 」

 ユウヤは見てきたことをフェイに報告する。

 「……そういうことなら、悪魔は他にいないと思うわ。儀式をするなら、悪魔、特に高位の悪魔を参加させた方が効果が高いでしょうし……それで、人が消えた以外、儀式では本当に何も起こらなかったのね? 」

 「ああ、ああ、閃光と共に魔法陣の中の人が消えて、そのまま儀式は終わりだったな。フェイなら何かわかるかと思ったんだけど」

 「その人たちは……生贄にされたんでしょうね。残念だけど、それ以上はわからないわ。生贄を使うくらいだから、重要な儀式なんでしょうけど……人を生贄にするのは禁忌の中でも最も重大なものだから、殆ど研究されていないのよ。確かにあの魔王なら、禁忌を犯すことなんて平気でやるでしょうけど……それで」

 その時、ユウヤの鋭い耳が、かすかな物音を捉えた。

 「しっ! ……下から何か聞こえる」

 「こんな明け方近くに? 」

 「……まずいな、御用改めとか言ってるぞ。怪しげな男女二人組がどうとか」

 「潜入がバレたみたいね」

 「多分な。酒場で話した相手は衛兵って言ってたから、そこから情報が行ったのかもな。それより、偵察任務はこれくらいでいいのか? 」

 「充分よ……って、そんなこと言ってる場合じゃないでしょ!? 」

 ドスドスと、階段をかけ上る複数の足音が響いてくる。

 「慌てなくてもいいだろ。任務が済んだのなら、帰るとしようか」

 ユウヤはフェイの手を取り、『転移』を使う。次の瞬間、二人は巨大な黒い門の目の前に立っていた。門の前に立っていた衛兵達が腰を抜かす。

 「……なっ!? 誰か! 何処から現れた!? 」

 腰を抜かしながらも、二人に槍を突きつける衛兵達。

 「私よ、宮廷魔導士のフェイよ」

 「は? ふざけるな! どう見ても別人ではないか!! 」

 「え? あぁ、これは変装よ。偵察業務から帰ってきたの」

 変装していたことを思い出した二人が魔道具の魔力を解くと、衛兵たちは驚きながらも、

 「あ……確かに、フェイ様……と、こちらは……ユウヤ様、でしたか……大変失礼しました。今門を開けます」

 「ユウヤ、朝になるまで少し休んでから、報告しましょう。あまり時間はないけど」

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